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力を貸してもらう力(4/4)『仕事をすることは協働すること』

 仕事を円滑に進めていくうえで、職場内の方々から「力を貸してもらう」ことが大切であることは、既にお伝えした通りです。お互いがお互いの強みをリスペクトし、必要に応じて協力し合う関係性が構築されている組織は、ストレスも少なく、無駄のない、理想的な体制といえるでしょう。働きやすい環境であることを実感し易く、仕事の成果も満足できるものになるはずです。

 私は市役所の職員として、学卒後のファーストキャリアをスタートしました。公務員を目指していた当時は、「困っている人を支えてあげたい」「こども達が安心して暮らせるまちをつくってあげたい」などと純粋に考えていたものです。採用選考の面接でもそのように語った記憶があります。

 しかし、実際に働くなかで日に日に大きくなっていった「なにかが違う」という想い。

 若かった当時の私が抱いていた「~してあげたい」という気持ちは、まあっ直ぐに地域のことを想ってのものでした。だから、誰から否定されることもありませんでした。先輩からも上司からも。

 でも、実際には微妙に違っていたのです。
 入職してすぐに、「結局、何もしてあげられない」ということを思い知ることになります。

 例えば、食育の一環で、「こども達に地元で採れた新鮮な野菜を食べてさせてあげたい」と考え、実施に向けたスキームを考えたとします。
 
 ・・・・・・実は、ここまでなんですよね。
 職員としてできるのは。

 実際に、野菜を育てて納品するのは農家さん。
 地元野菜を盛込んだ献立を考えるのは栄養士さん。
 八百屋からの一括仕入れの野菜に比べると不揃いが多く加工しにくい地場産野菜の調理に四苦八苦するのは調理員さん。

 結局、「~してあげたい」と描くことまではできても、実際に汗を流すのは自分たち以外の方々。

 いろいろな分野を異動しながら幅広く仕事をできる公務員は、「なんでもできる反面、実はなにもできない」仕事なのだと痛感しました。

 でも、だからこそ、「力を貸してもらう」ことの大切さを学びましたし、「力を貸してもらう」ことができる関係性を、日頃から丁寧に築いておきたいと考えるようになったのです。

 仕事をするというのは、誰かと協働することなのだと思います。
 自分にできることを自覚し、できないことを認める。相手ができることと出来ないことを理解する。そのうえで、お互いが手を取り合うこと。
 理想的な組織は、これが自然に出来る組織なのではないでしょうか。そして、その理想をつくっていくのは、そこで働く「人」に他なりません。

 そんな「人」である私たちができることは、「信頼」関係の構築です。

 一人でできることには限りがあります。だからこそ「力を貸してもらう」力を高めておくことが大切なのです。

 現在、キャリア教育の現場に身を置きながら、社会に巣立っていく学生たちに、様々な機会を通してこのことを伝えています。


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