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【日記】本と映画と私

目が覚めた時間に起床。
愛犬におはようと言う。
排泄の処理をして、束の間戯れたら、朝ごはんをささっと済ます。
朝風呂をして、髪を乾かし、身支度を整える。
カフェまで歩いていく。朝から体を動かさないと、心地が悪いと感じるようになったので、身体にもこのルーティーンが染み込んできている。

カフェでは、いつもは投資や看護の勉強をするのだが、今日はその荷物は持たなかった。広島に原爆が投下されてから今日で79年目。この日のためにひたためておいた、古本屋で買った井伏鱒二の「黒い雨」を持ってきた。

今日の午前は、これを読み進めることに時間を使うつもりだった。しかし、字面を追う最中で、本とは関係ない無数の考え事たちが湧き上がってきて、本をなかなか読み進められない。午前中は、考え事を手帳とnoteの下書きに吐き出して終わった。

午後は映画を観るために横浜の「Jack & Betty」というミニシアターにきた。

本を読むのに向かない時でも、映像作品は比較的インプットできる時が多い。映像は自分でページを繰らなくても前に進んでくれるし、読書ほど頭を使って考えたり想像したりしなくても、視覚的な情報で自然と情報を受け取ることができる。

2年前、初めて訪れたミニシアターがこの映画館だった。
でも、当時は2時間映画に拘束されることが苦手で、あんまり映画を好んで観なかった。いつも好きなはずのものにすら関心が抱けなくなった時期に、新しい趣味を広げようとサブスクを入れたことがきっかけで、おすすめしてもらった作品や話題のものを鑑賞しはじめた。色んな人の感想を聞いたりしてゆくうちに、映画の楽しさが徐々にわかるようになった。


ドキュメンタリー系の作品が好きなので、気になる映画はシネコンやサブスクではなく、ミニシアターでしか見れないということがしばしばあった。ミニシアターでは、社会性を帯びた作品やアート性の高いマイナーな作品が多く上映されている。

ミニシアターは、シアターごとのスクリーンや座席、音響の違いやそれぞれの心地よさを体感することが楽しい。それに加えて、観客の方の特徴やその周りにあるものから、その地域に住む人の生活の風景を垣間見ることができる。

だが、ミニシアターについて関心を寄せていくと、その現状は明るいものばかりではないことに気づく。

Jack &Bettyは、コロナの影響に加え、劇場建物の老朽化に修繕、空調や衛生設備のメンテナンス、デジタルプロジェクターの買い替えなど経営困難に追い討ちをかけるような状況にあり、今までこの地で馴染んできた劇場の歴史を守ろるために、クラウドファンディングを立ち上げられたという経緯がある。最終的には、目標の3000万円を上回る、総勢2690名の方による4000万円以上の寄付が集まったそうだ。

また、この前記事を読んでいた時に、印象的だった箇所がある。

コミュニティシネマセンターが刊行する『映画上映活動年鑑2022』によると、国内にある映画館のスクリーン数は、去年は3672。
このうちミニシアターは241スクリーンで、全体の6.5%にすぎない。

一方、去年1年間に劇場で公開された作品数・1173本のうち、52%にあたる617本はミニシアターでしか上映されていない映画だ。
つまり、わずか6%ほどのミニシアターが、公開作品全体の半数を紹介しているという実情がある。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2023/07/story/minitheater/

これを読んで、日本で上映されている映画のうちその過半数が数少ないミニシアターによる上映であること、一つのミニシアターが少なくなくなることで失われてしまう価値の重みを痛感した。
何十年もの間たくさんの文化作品を届けてくれているミニシアターの歴史や文化の多様性を守るためには、希少価値の高い存在の重要性を認知しそれを支える存在が必要だ。そして、特にミニシアターを支えている人の中には、その地域に暮らしている方の存在も欠かせない。ミニシアターの実情は、老朽化や後継者不足で数が減っている銭湯のそれと重なる部分があると思った。

地元の人の生活の一部となりながら、色んな人に愛されてきたもの、逆風に吹かれながらもその土地でずっと根を張れることを願う人に支えられているものが存続してほしい。

私は立場としては外の人間にすぎないかもしれないし、今回のクラウドファンディングには間に合わなかったけれど、社会人になったらより一層応援したいものに寄付という形で貢献したい。

話がそれてしまたけれど、Jack & Bettyでは、「リッチランド」という映画を観た。オッペンハイマーでも描かれていたマンハッタン計画の時に、核燃料生産拠点で働く人々とその家族が生活するために作られたベッドタウンの「今」を映し出したドキュメンタリーだ。

今年見てきた戦争に関する映画の中で、最も心を揺さぶられ、自分と相入れない価値観との折り合いがつけられなかった作品だった。劇場を出たとき、肌にふれる蒸し暑い空気や足取りがいつもよりも重く感じた。3年前に、原爆の展示を見た後にも同じような状態になって以来はじめてだった。明るい音楽を聴く気になれなかったので、「消えた八月」を空っぽになった心に流し入れる。

何も考えずに、その近くを歩いていると喫茶店や色んな国の料理やさんがあることが目に留まった。今は立ち止まらずに歩き続けていたほうがいい気がしたので、そのまま進んでいく。

すると、古本屋さんを見つけた。

真ん中のやつずっと前から気になってた本!
100円という安さから3冊衝動買い


その先、同じ通りの数百メートル圏内に3〜4件の古本屋さんがあった。蔵書は学術的な分厚い書籍を多く置いているお店もあれば、雑誌や小説を取り揃えているお店もある。店員さんも、若い女性の方からいかにも古本屋のオーナーという感じの中年の男性の方まで様々。ミニシアターやご当地のおそばと同じく、それぞれの個性が見えるところが面白い。

小説たくさん!

さらに、Jack and Betty の鑑賞券を持っている方はその日は10%安く買えるというお店があった。街の中のお店どうしつながり合っているんだな〜。

これは後から調べてわかったこと(※1)だが、このエリアは戦後米国に接収されていた過去があり、その後労働者の歓楽街として発展し、違法に運営している風俗店もかつては多いディープなエリアだ地域だったそうだ。そして、黄金町・日ノ出町・初音町のエリアでは、Jack and Bettyの支配人の方が代表を務める「黄金町プロジェクト」という街づくりの活性化の実現を目指す有志の集まりがあるという。

かつてのディープな文化の面影を残しながら、文化の豊かさや個性豊かないろんなお店の活気が漂っているまちの風景の裏には、まちづくりのために尽力されてきた方の存在があるのだな。

これからお祭りが始まろうとする時間帯、
まちの活気に元気をもらう
同じことを想う人が近くいることを知って、気持ちが少し和らぐ。こんなに暑苦しいけど、もう暦だと夏も後半なのか。
色んな駅に囲まれている…!
かすれて メ ピオカになってる。こういうのみつけるの間違い探しみたいで面白い。笑

歩くことで、外に関心が向いて、癒しや安心ともちょっと違う不思議な気持ちになった。


関内駅周辺は何度か人と通り過ぎたことがあったけれど、全然知らないことばかりだった。今まで目を向けていた観光地としての横浜だけではない、新たな側面を知るきっかけになった。リッチランドでは、立場や経験や教育や価値観の違いで同じ事実や過去の受け止め方が大きく違うこと、歴史は一つの物語として位置付けられないという複雑さを感じた。

私は全ての過去や他者出会うことも、一度関係を持った他者や歴史、すべてを背負いながら、生きることはできないだろう。できない自分を責める必要もないけど、その時にもてる時間やお金、自由、体力、気力、知性の範囲で、ひとつひとついろんなことを知りながら、生きていきたいと思う。

※1


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