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オーロラの願いと蝉の鳴き声


皆さま、もう蝉の鳴き声を聞かれましたか?



 猛暑のなかで「元気なのは蝉だけ」という感じで、気温が上がるとともに蝉の鳴き声が大きくなります。

 なのに、あれれ? 
 今年は、セミの元気な鳴き声がまだ聞こえてきません。
 梅雨明けを待っているのかしら?


すべては、神さまのせい?



 ギリシャ神話のヘリウス(太陽)、セレネ(月)、そしてエオスは天空を駆ける3柱です。
 薔薇色の指先で天空の門戸を開けて、夜明けを告げるエオス(オーロラ)は曙の女神です。

 トロイア王子の美少年ティトノスに恋したエオスは、彼と永遠に一緒に、暮らしたいと望みます。
 でも、神は不死身で、人間には寿命がある。
 神と人との大きな違いです。

 最高神ゼウスに、ティトノスの「不死」をお願いします。
 願いを叶えてもらったエオスは、しばし幸せな日々を過ごします。
 ところが「不老」の願いを忘れてしまったせいで、ティトノスはどんどん老いていきます。

 老衰していくティトノスを見るに耐えられないエオスは、王宮の一室に、彼を閉じ込めます。
 ティトノスは日に日に小さくなっていき、手も足も動かせなくなります。  
 そして、最後は声だけになった彼を、エオスはに変えてしまうのです。

 「不死」を願うときには「不老」も忘れずにお願いしなければ、エオスのような悲恋で終わってしまう。


 もとより短い命しかない蝉があちこちで力の限りに鳴く声を聞くことで、夏を実感するのに・・・。
 ティトノスを蝉に変身させることさえ、エオスが忘れたのではないか? と心配になっている今日この頃です。


 見出しの絵画は「ポンパドゥール夫人の肖像画」で有名なフランスロココ様式を代表するフランソワ・ブーシェの作品。

 恋多き女神エオスが、ティトノスではなくて、美青年の狩人ケファロスに夢中になっているときの姿です。 
 曙の女神らしく、バラ色に輝く肌が綺麗ですね。



オーロラとケファロス
フランソワ・ブーシェ(1769年)


 
 次も、同じ主題「オーロラとケファロス」の作品です。
 この名画は名古屋市新栄のヤマザキマザック美術館で鑑賞できます。


オーロラとケファロス
フランソワ・ブーシェ(1745年頃)


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