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第3章 「収益力」の高さはここに表れる


4.会社の「本業力」と「実力」を見る



本業力は「営業利益」でチェック

 「営業利益」は1事業年度の企業経営における「本業力」を表わす利益であり、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引くことで計算します。
 たとえ、付加価値が高く儲かる製品を取り扱っている会社でも、販売管理費の管理が甘く販売促進費などにムダ遣いが多かったり、本社を管理する費用の負担額が大きいと営業利益を残せません。
 利益体質である会社は、付加価値が高く優れた製品を取り扱うとともに、できる限りコスト削減に努めている会社です。
 営業利益率(=営業利益÷売上高)の高さを見ることで本業で儲ける力、効率経営の度合いをチェックすることができます。

本業でも儲ける力があるかチェック


 営業利益をアップさせるためには、売上総利益を確保するとともに、販売管理費を科目ごとに管理するという地味な作業が必要となります。
 売上高に対する販売管理費の率(=販売管理費÷売上高)をチェックし、100円の売上を稼ぎ出すのに何円の費用を費やしているかを見ます。 
 「節約は第三の利益」なのです。
 売上高に対する負担率の高い販売管理費については、売上獲得に貢献しているかどうか、縮小の余地はないか費用の中身を再確認します。

 
 勘定科目ごとに、当期の販売管理費が前期と比較して増えたか減ったかを「対前期比」での増減率を見ることも大切です。支店や営業現場において、当初の予算を消化しないと損だという風潮があると、売上高は横ばいなのに販売管理費だけは膨らんでいくということが起こってしまいます。
 特別な理由がなく対前期比で10%以上も増加している科目は要注意です。対前期比での増加率が高い科目や変動額の大きい科目は、月次決算ベースで稟議書や精算書などの原始書類に戻り取引内容を精査する必要があります。

 会社経営では本業以外の活動において支払利息や為替差損などの財務的なコストが発生しますし、当期だけのイレギュラーな出来事により、臨時で巨額な特別損失を被ることもあり得ます。
 このような営業外費用や特別損失などを負担した後でも、なおかつ、利益を残すためには、まずは、本業での営業利益を確保することが大切です。


「経常利益」で会社の実力を見る

 「経常利益」は、営業利益に営業外収益をプラスし、営業外費用を差し引くことで計算されます。
 営業外収益は受取利息、受取配当金、為替差益など財務的な収益であり、営業外費用とは支払利息、手形売却損、為替差損などの財務的な費用です。 
 営業利益を本業での収益力だとすると、経常利益は過去から蓄積した財務力も考慮した、会社の「実力」を表わします。
 経常利益率(=経常利益÷売上高)を見ることで、経常的な活動での企業経営の成果を計ることができます。

 基本的に、貸借対照表の財政状態が良好で他人資本が少ない会社は、資金調達コストである支払利息を削減できるため経常利益を残せます。
 借入金よりも現預金や金融資産が多い会社では、支払利息よりも受取利息配当金が多く、営業利益を上回る経常利益が計上される場合もあります。
 このように、財務力の高さが本業での利益(営業利益)を助けてくれるのも実力のうちといえます。

 貸借対照表と損益計算書は当期純利益でつながっており、利益体質の会社は利益剰余金が潤沢になることで貸借対照表の財政状態も良くなります。
 強い会社は、経営活動の成果が決算書の好循環として表われます。
 反対に、貸借対照表での財政状態が脆弱で、借入金など利息の必要な負債(有利子負債)の額が多い会社は、支払利息の負担で営業利益が食われてしまいます。本業で生み出す余剰資金の範囲で、有利子負債の圧縮を進めておくことも大切です。

 経常利益を高めるためには、まず本業で儲ける体質であることに加えて、①受取利息配当金などの営業外収益を増大させるとともに、
②支払利息、為替差損などの営業外費用を削減する努力が要求されます。

 余剰資金の有利な運用、高配当利回りの株式投資により受取利息配当金を増やすことで営業外収益の増大を心掛けます。
 一方で金利負担を削減するために低利融資への借り換えを検討するほか、為替差損を避けるため外貨取引には為替のリスクヘッジをしておきます。


会社の実力を表す経常利益をチェック!

 

「経常利益」の表示がない!損益計算書

 経常利益は、通称「けいつね」と呼ばれて、基本的に、日本基準の損益計算書では最も重視されています。
 しかし「米国会計基準」および「国際会計基準(IFRS)」により開示される損益計算書では、経常利益の概念および表示がありません。

 この他、「持分法投資損益」の表示場所も異なります。
 日本基準では営業外損益として表示しますが、米国会計基準は法人税等控除後に、国際会計基準は税引前損益の前に計上します。

(注)持分法投資損益 ・・・ 持分法適用会社(原則として、議決権の保有割合が20%以上50%未満である関連会社)の最終損益のうち、投資持分に見合う金額を「持分法による投資損益」として計上する


海外では経営活動に経常・非経常の区分なし!


 たとえば、トヨタ自動車は国際会計基準で開示しているため損益計算書に経常利益の表示がありませんが、日産自動車は日本基準で開示しています。
 そのため同じ自動車産業であっても、両社の損益状況を比較するときは、少し、組み替え作業が必要となります。

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