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「決算書」の読み方と「経営分析」のポイント

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「5つの箱」で理解する! 貸借対照表、損益計算書の読み方とキャッシュフロー経営の実践、そして採算管理の基本までをマスター。生産性の高い企業であり続けるために大切なこと、経営分析の… もっと読む
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2023年7月の記事一覧

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

4.「固定比率」は資産の中身が大切! 低いほど良い「固定比率」  会社の固定資産投資に無理がないかどうかは、「固定資産」と「純資産」(自己資本)の金額を比較する「固定比率」をチェックします。  固定資産は1年を超えて長期に利用される資産であり、貸借対照表では「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに区分して表示されます。  これらの固定資産へ投資した資金は長期間回収できないため、固定資金の運用と調達のバランスが悪いと長期的な資金繰りに悪影響を与えます。

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

5.「固定長期適合率」は流動比率の裏返し 固定は固定どおし、長期は長期どおしで  長期的な投資は返済不要の自己資本の範囲内で行うのが経営の理想です。 先に見た固定比率は100%以下であるべきです。  固定比率が100%を超えている会社は、自己資本を超えた固定資産投資、身の丈を超える設備投資を行っている可能性があります。  しかしそれだけで、財政状態が不健全だと決めつけるのは早計です。  通常、自己資本を超える設備投資を行う場合は、長期借入金や社債などの長期返済による資金

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

6.やはり「自己資本比率」は大切 財務の健全性を見る指標  会社がお金を集める方法には、他人資本(負債)と自己資本(純資産)の2つがあります。  会社を永続的に発展させるためには、資金繰りの悩みがなく、できる限り本業へ集中できる体制が不可欠です。借金返済に気をとられることのない安定したお金の調達が大切だといえます。このようなお金の調達方法が健全であるかどうかを見る指標が「自己資本比率」です。  自己資本比率は、古典的ですが、チェックすべき大切な経営指標です。  自己資本

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

7.「運転資金」の管理で企業価値を向上! 会社を運転するために必要不可欠である資金  会社の資金繰りの管理と計画では、「資金」を次の3つに区分します。 1.日々の決済に充てる「現金資金」 2.本業を継続するうえで必要となる「運転資金」 3.設備投資を行うときに調達と運用のバランスを考えるべき「固定資金」  このうち、運転資金は信用取引(ツケ)と在庫(売れ残り)に関する回収と支払いの時間差から生じる資金であり、商売を維持(=会社を運転)していくうえで必要不可欠なお金をいい

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

1.損益計算書を3つの視点で読みこなす 損益計算書は一番上と一番下を見る  損益計算書(Profit & Loss Statement、略してP/L)は、最初に「一番上の数字(Top Line)」の売上高を、続いて「一番下の数字(Bottom Line)」の当期純利益を見ます。  1事業年度中に実現した売上高は経営規模を表わします。しかし同時に、当期純利益も計上していなければ収益力の高い会社といえません。  すべての原価、費用、損失、そして法人税等を負担した後の最終の当期

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

2.「売上総利益」は利益の大本! 商品力の高さは「売上総利益」に表れる  「売上総利益」は、売上高から売上原価を差し引くことで計算する「利益の大本」です。   売上総利益は、さまざまな諸経費を差し引く前の粗っぽい利益でもあり、通称として、「粗利(あらり)」とも呼ばれています。  売上総利益の金額の大きさと、売上総利益率(=売上総利益÷売上高)の高さから、製品やサービスの力を判断できます。売上総利益率は「粗利率」ともいいます。  取扱製品や商品、サービスの質が良く、人気が高

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

3.売れた分だけ「売上原価」に計上! 卸小売業での「売上原価」  売上総利益の計算では、「商品を仕入れて売る」という商取引の流れと、「売上原価」の理解がポイントとなります。  卸小売業では、当期中に売上計上した商品の仕入原価を当期の費用として計上します。これを、売上原価と呼びます。会計上の収益である売上高と、費用である売上原価は直接的に対応させる必要があるのです。  売上原価を確定させるための会計処理には、2つの方法があります。  まず1つめは、商品を仕入れたときには「

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

4.会社の「本業力」と「実力」を見る 本業力は「営業利益」でチェック  「営業利益」は1事業年度の企業経営における「本業力」を表わす利益であり、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引くことで計算します。  たとえ、付加価値が高く儲かる製品を取り扱っている会社でも、販売管理費の管理が甘く販売促進費などにムダ遣いが多かったり、本社を管理する費用の負担額が大きいと営業利益を残せません。  利益体質である会社は、付加価値が高く優れた製品を取り扱うとともに、できる限りコスト削減

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

5.「有利子負債」の大きさは時代を映す鏡 ほんとうの「支払利息負担率」を把握する  会社の実力ともいえる経常利益は「営業利益+営業外収益-営業外費用」にて計算します。本業が順調でも営業外費用の負担が大きいと、経常利益を確保するのが難しくなります。  ここでは、支払利息についてチェックすべき点を整理しておきましょう。  まず、支払利息負担率(=支払利息÷売上高)で、金利負担が経営に与える影響を見ます。支払利息負担率により、売上高に対する支払利息の負担率つまり、100円稼ぐた

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

6.「当期純利益」で経営の最終結果を見る 投資家も注目する最終利益  当期純利益には税引前当期純利益と税引後当期純利益の2つがあります。     税引前当期純利益は、経常利益に特別利益を加算し、特別損失を差し引くことで計算します。  特別利益は、固定資産売却益や投資有価証券売却益などの臨時で巨額な当期だけの儲けです。創立以来の社歴が古い会社の場合には、昔に取得した土地や有価証券が低い帳簿価額で貸借対照表に計上されているケースもあり、これらの資産を売却することで多額の売却