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人生で初めて絵を買った日のこと

人生で初めて絵を買った。
こんなにもどきどきして、幸福なことはあるのかと思いながら、部屋に飾ることを想像して、ふくふくした気持ちが止まらない。

ついに、数年前からすきで、いつか行きたいと思っていた日下明さんの個展へ行ってきたのだ。
行ってくるよ!みほさ〜ん!と心の中で叫びつつ、うきうきうきうき尼崎の立花駅で降りる。

すこしさびれて、でもあたたかい雰囲気の駅前の広場。木の隙間から光がこぼれていて、まだほんのすこし夏の面影があるなと思う。

線路沿いを3分ほど歩いたところにあるTe To Teというカフェで、日下さんの個展「SLOWLY」は開かれていた。

小さくて明るい店内は、清潔な空気が漂い、白いタイルがかわいく、白木のしつらえが心地よい。
店長さんの優しい雰囲気に、ついつい頼むはずもなかった桃のタルトを頼むも、ほろほろ口の中でくずれるタルトとしっとりした桃の組み合わせが最高で、大変美味しく食べた。

店内をぐるりと囲む、日下さんの不思議でやさしくて、物語の中のような絵をじっくり見て、絶対に連れて帰るぞ…と決意する。

ふたりで一枚選んで買わない?と提案してみると、ついてきただけのはずのぴー太が、「いや、ひとり一枚買おうか……」と言い出し、思わずぷっとなった。そういうところがわりと好きだ。
ふたりしてうんうんと悩みながら、それぞれの部屋に飾りたいものを選んだ。

わたしは、映画のワンシーンのような、鳥の羽の少女の絵を。


ぴー太は、過去や未来とつながっていそうな公衆電話から、電話する紳士の絵を。

自分で選んで絵を買うということは、なんと幸福なことだろうと、実感を持って思う。部屋に飾って、眺めることを想像して、もう幸せだし、きっと本当に飾った日には、毎日うれしくなってうっとり眺めるのだろう。

日下さんの絵は、じっと見ていると物語の中に吸い込まれそうになる。
すこし、吉田篤弘さんを思い出したりして、なんとなく自分の中では、世界が繋がっていて、妄想もふくらむ。

いいなぁ、いいなぁ、絵は。本は。久しぶりに、吉田篤弘さんを読もうか。
いつか、日下さんの絵と音と言葉のユニットのLIVEにも行こう。

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