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改良

あらすじ

 女になりたいのではない、「私」でありたい
 ゆるやかな絶望を生きる男が唯一求めたのは、
 美しくなることだった

 メイクやコーディネイト、女性らしい仕草の研究……。
 美しくなるために日々努力する大学生の私は、コールセンターのバイトで稼いだ金を、美容とデリヘルに費やしていた。
 やがて私は他人に自分の女装した姿を見て欲しいと思うようになる。
 美しさを他人に認められたい――唯一抱いたその望みが、性をめぐる理不尽な暴力とともに、絶望の頂へと私を導いてゆく。

感想

 簡素で読みやすくスラスラと読めてしまうのに、ズシンと心にくるような重厚な表現があったりと、独特の文体がとても魅力的だった。

 また、主題としてはルッキズムなのだろうけど、外見で判断をすることの善し悪しを断言し切らない点にも魅力を感じた。
 『人間の価値は、当然美しさだけでは決まらない。大切なものは、他にもたくさんあるはずだ』としながらも『強さ、優しさ、健康、財産、地位、友達……。しかし、どれも美しさの前では霞むように見えてならなかった』と主人公は感じている。そのためか主人公の根底には『どうして、私は美しくないのだろう。』というコンプレックスがあり、そこに向き合う様が生々しくも美しく描かれている。

 そして後半の恐ろしい展開も、多くは女性が味わってきた仕打ちを、男性だからこそ受けてしまった仕打ちとして表現しきった点が、新たな時代の文学として正しい在り方なのかなと感じた。

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