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十角館の殺人

あらすじ

 十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

感想

 本作も、占星術殺人事件に並ぶほどの名作とされており、『新本格ミステリー』というジャンルを生み出したともされる作品。
 大分県にある大学の推理小説研究会のメンバー7人が十角形の奇妙な館が建つ孤島を訪れるシーンから始まるのだけど、現代における推理小説の在り方みたいなものを登場人物が語っており、その台詞が刊行当時のミステリー界を敵に回すような内容で、その時点で驚かされた。——と、初見の際はこの台詞の内容にばかり目がいってしまっていたけれど、改めて考えると、7人ものキャラクターを上手く描き分けるために必要だったのだと思う。現に、その冒頭のシーンでそれぞれのキャラクター性を掴む事ができた。

 上記でも述べた通りキャラクターの書き分けが秀逸で、クローズド・サークルものでよくある『この登場人物誰だっけ』という事が全く起きなかったし、この登場人物のキャラクター性が面白いからもっと掘り下げて書いてくれるんだろうなと思った登場人物があっさり殺されたりと、いい裏切りも生まれた。
 しかも島の外の視点からの推理を挟むなど、500ページほどの長さだけれどそれを感じさせないほどスラスラと読む事ができた。

 そして肝心のトリックは、今更いうのも野暮なくらい語り継がれているのだけど、やはりその評判通りの素晴らしいものだった。
 大胆不敵でトリッキーなトリックなのだけど、よく考えたらすぐに答えを見つける事ができたなと思えるくらいシンプルで、1行で全てひっくり返されるこの快感は他では味わう事ができないほどのものだった。

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