ワイン入門の思い出 ⑧ボジョレー・ヌーボーとクリュ・ボジョレー

ボジョレー・ヌーボーを初めて飲んだのは、ワインを飲み始めてまもない頃でした。当時は友人と家でよく飲み会をしていたのですが、ある日友人から、ボジョレー・ヌーボーというワインがあって、そろそろ解禁日らしい、という情報を聞きます。それで、じゃあ話のタネに飲んでみますか、となったのがきっかけでした。

その頃、私はほとんどワインを飲み慣れていませんでしたが、美味しいと思ったかどうかはさておき、楽しむことはできたように思います。そして、これがワインに興味をもつきっかけの一端になったと言えます。

ワインのことを知り始めると、ボジョレー・ヌーボーについていろいろな意見を耳にすることになります。どちらかというと、否定的な意見が多いでしょうか。品質の割に価格が高いとか、そもそも美味しくないとか、ボジョレー・ヌーボーをありがたがるのは日本人くらいだとか。肯定的な意見としては、思い入れのある生産者がいて毎年飲んでいるとか、熟成させると短期間で劇的に変化するので面白いとか。

クリュ・ボジョレーの存在を知る

もう一つ、別の方向性の話題として、クリュ・ボジョレーが挙げられます。新酒(ヌーボー)ではないボジョレーがあり、その上に品質の高いクリュ・ボジョレーが存在する、というものです。

私がクリュ・ボジョレーの存在を知ったのは、漫画「ソムリエ」でした。ワインは酸っぱくて飲めない、とビールを飲んでいた客に、主人公が勧めたのがクリュ・ボジョレーです。「上級のブルゴーニュにも引けを取らない」という作中のコメントもあって、ずっと気になっていました。そこで紹介されていたのが、シャトー・デ・ジャックです。

シャトー・デ・ジャック

シャトー・デ・ジャックは、大手ルイ・ジャド傘下の造り手で、そのラインナップのほぼ全てがボジョレーです。ルイ・ジャドのボジョレー部門といったところでしょうか。私が飲んだ時は、ムーラン・ア・ヴァンしかなかったと思いますが、現在は規模が拡大しており、モルゴンなどでも造っているようです。

当時、私が飲んだのは、

1.  ムーラン・ア・ヴァン クロ・ド・ロシュグレ(畑名あり)
2.  ムーラン・ア・ヴァン(畑名なし)

の2つでした。以下に貼った2つの画像が 1、2 に該当します。当時の価格は、1 が4千円、2 が2千円でした。

1.  ムーラン・ア・ヴァン クロ・ド・ロシュグレ(畑名あり)

最初に飲んだのは、より高品質な 1 の方でした。そもそも 1, 2 の区別があることも知らず、後になって 2 が半値で売られているのを見つけ、調べてみてようやく畑名あり・なしの違いであることを知った、というような状況でした。

飲んだ瞬間、これは美味しいと思いました。これを飲んだ時点では、2千円程度のACブルゴーニュを飲み始めていて、ある程度の基準が自分の中にありました。それと比較して感じたことは、味わいが平板ではなく奥行きが感じられ、酸味が控えめでフィニッシュが甘い、ということです。純粋に、これまで飲んできたACブルよりも美味しい!と思いました。

2千円のACブルと、4千円のボジョレーのフラグシップとの比較ですから、後者の方が圧倒的に高品質なのですが、このステップアップの体験は私のワイン入門の忘れられない思い出のひとつとして今でも強く印象に残り続けています。

2.  ムーラン・ア・ヴァン(畑名なし)

その後、しばらくしてから 2 を見つけて飲んでみましたが、1 とは完全に別物でした。エチケットは畑名が入っていないことを除けば完全に同じデザインなのですが(細かいですが、当時のデザインはクーヴァン・デ・ジャコバンと一緒で、畑名のクロ・ド・ロシュグレが扇型に書かれているか、いないかの違いしかありませんでした)。

ブルゴーニュ入門時の疑問として、ほとんど同じエチケットのワインでも、畑名がちょこっと書かれているだけで値段が全然違うのはなぜ?そんなに違うの?というのがあると思いますが、その違いを初めて体験した思い出のワインです。


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