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元研究開発者の日々の情報:ネアンデルタール人DNAとCOVID19 重症化の関係(2020年11月30日号)

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人類は2万~4万年前に絶滅したとされるネアンデルタール人と交雑し、そのDNAを受け継いできたことが知られています。

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新型コロナウイルス(COVID-19)に関する研究により、現人類が持つネアンデルタール人のDNAが「COVID-19の重症化と深い関わりがあった」ことが新たに示唆されました。

ヴァンダービルト大学、トニー・カプラ氏は「ネアンデルタール人のDNAは、もともとは4万年以上前に存在していた別のウイルスに対する免疫をつかさどっていた可能性がある」と述べました。

これまでも、ネアンデルタール人由来のDNAは現代人の健康を損ねたり、子どもを生まれにくくしたりする働きがあることが分かっていますが、今回特定されたDNAは、少なくとも以前は有益(免疫物質分泌促進など)の働きをしていた可能性があります。

カプラ氏によると、人体がCOVID-19を発症すると、免疫物質であるサイトカインが分泌されますが、ウイルスに感染した組織を攻撃して感染の影響を抑制します。ネアンデルタール人由来のDNAはこの反応が強いと判断されています。しかし、その働きが過剰(サイトカインストーム)になると正常な肺などの組織まで損傷し、その結果COVID-19が重症化してしまう推定があります。

アフリカに住む人は全くCOVID-19の重症化に関するネアンデルタール人のDNAを持たない一方で、ヨーロッパに住む人の約8%、南アジアに住む人の約30%がこのDNAを持っていたとのこと。

南アジアの中でも、最も極端にDNAの保有率が高いのがバングラデシュで、人口全体の約63%がこのDNAを保有していました。

実際に、イギリスではバングラデシュ出身者が特にCOVID-19で死亡する確率が高いことが分かっています。

以下の地図では、COVID-19の重症化リスクを高めるネアンデルタール人のDNAを保有している人が住む地域が赤い丸で示されています。

また、アフリカや日本を含む東アジアにある透明な丸印は、この地域で当該DNAが発見されなかったことを意味しています。

このことは過去にDNAの相違により、地域毎の自然選択の影響を受けた可能性があることが示唆されています。

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引用:
1.人類が6万年前にネアンデルタール人から受け継いだDNAが「新型コロナウイルス感染症の重症化」と関連しているという可能性(ヴァンダービルト大学 トニー・カプラ氏)
2.新型コロナの重症化リスクを増加させる「ネアンデルタール人のDNA」の詳細な分布が判明 – GIGAZINE(カロリンスカ研究所Hugo Zeberg氏)
3.ネアンデルタール人より受け継がれた新型コロナウイルス感染症の重症化に関わる遺伝要因(公益財団法人 東京都医学総合研究所 宮川 卓氏)


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