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土曜と日曜の挾間で

好きなだけ夜ふかしができる土曜の夜と好きなだけ朝寝坊ができる日曜の朝が好きだ。

完全週休一日制の仕事に長年就いていると、日常的な楽しみなんてひとつもない。祝日も盆も正月もない。賃金も馬鹿みたいに安い。毎日が同じことの繰り返しのように思えて憂鬱だし、口から漏れでるおなじみの言葉は癖は「疲れた」と「早く帰りたい」。

そんな人はごまんといるだろう。

それでも働かなくては金にならず、人は生きてはいけず、人生はままならないことばかりだ。

ハーゲンダッツのアイスを食べること

エリザベスアーデンの香水をふりかける瞬間

ふかふかの布団に抱かれて微睡んでいるとき

きれいな言葉を紡ぐことができたとき

海外にいる友人から素敵なエアメールが届いたとき

映画を観ていて価値観をひっくり返すほど強烈な言葉に出会えたとき

小説を読み始める瞬間と、読み終わった瞬間

柔軟剤の効いた洗い立ての洋服を嗅いでいるとき

雨音を聞いているとき

わたしは欠陥だらけの人間だから、高望みはするまい。無駄な努力もしたくないし。だから、ささやかでいい。そんなもので何色にも染められないグレイ色の日々を満たしたいだけ。

夜ふかしも朝寝坊も、一週間で一回だけ許されるささやかな喜び。

願わくば、土曜と日曜の挾間でずっと溺れていたいのだけど。

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