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シニア起業のリアル【3】時間の感覚が変わった

32年放送局のアナウンサーとして働いていた間、基本的な時間の単位は「秒」でした(笑)これ、おかしいですよね。日常生活で秒を意識する場面ってそれほど多くはないと思いますが、アナウンサーは毎日秒単位で仕事をしていました。これ本当です。

秒単位というと、何かセカセカした印象で、心の余裕がないように思えます。その通りで、秒が基本の仕事って、なかなかにストレスフルでした。でもそれが当たり前な中で生きてきたので、振り返ってみるとそこまで苦しかったとは思わないから不思議です。

もうひとつ、8時間労働という感覚も、局アナ時代は当たり前だと思っていました。職種によっては、時間の経つのも忘れて没頭する業務もありましたが、働き方を適正化しようという令和の時代にあっては、8時間に収まるように効率的な時間配分や業務分担をして、仕事に向き合うのが一般的でしょう。

ところが、開業してフリーアナウンサーになると、この時間の感覚が大きく変わったことに気がつきました。

まず「秒」単位の仕事は少なくなります。放送という、時間的な制約が多い仕事からは一旦離れ、もう少し緩やかな締切、たとえば何日間とか何時間のうちにといった、大きな枠の中で仕事をすることが多くなった気がします。

また、8時間働くという感覚は全く無くなりました。私の働き方としては、ギュッと集中して仕事をし、しっかり休憩する。決まった仕事や予定が無い日は、思いつくままに過ごすという感覚に変わりました。1日8時間、1ヶ月働くといくらお給料がもらえる、という感覚は無くなり、短時間に集中して働く、そのための準備にどの程度時間と労力をかけるか、という感覚に変わりました。

8時間労働、イコール9時5時という感覚も消えました。この原稿を書いているのは夜中の10時過ぎですし、録音しているのも夕方の5時以降です。8時間ベッタリ仕事をしているわけではなく、例えば講演の講師を務める場合には、本番が約1時間。会場への移動に合計2時間。打ち合わせやご挨拶に2時間かけたとしても、トータル5時間。これで十分1日の仕事として成立します。

また、ふとビジネスのアイディアが閃いた時、それが夜明け前でも←よくあるのですが、スマホのメモに打ち込んだり、パソコンを起動してガッツリレジュメを作り始めることもあります。そうかと思うと、朝寝坊してお昼近くに目が覚めたり、夕方我慢できないほどの眠気に襲われて、記憶を失ったような時間を過ごしてしまうこともあります。


でも逆に考えると、世の中本当に「基本8時間労働」「基本9時5時」でなければならないんでしょうか。残業にしろ、フレックスタイム制にしろ、基本8時間という考え方ありきでの対応ということに思えます。労務管理上、こうした原則があると運用しやすいのは分かりますが、いったいいつ誰がこの原則を決めたんだろうと、初めて疑問に思うようになりました。

会社員を辞めて、自分の能力や体力に応じた働き方をしてみて、私には今の働き方の方が、クリエイティブになれるし、自己肯定感を持てるなという実感があります。会社勤めをする中で、自分の感覚とのズレを感じる要素の一つとして、働く長さや時刻の縛りがあるというケースもありました。

55歳で起業した私は、気力に対して体力が追いつかないと感じることが、正直あります。若い頃に比べて、疲労回復に時間がかかるし、視力や集中力が昔ほど冴えなくなっていることも自覚しています。だからこそ、会社員であり続けるよりも、起業して時間の差配を自分でできる働き方を選ぶ価値があるように思えますがいかがでしょう。

もうひとつ変わったのが、仕事と休暇の位置関係でした。会社員時代は当然ながら仕事が最優先で、休暇を取るには仕事をある程度前倒して詰め込んだりして、休日を「捻出」するのが当たり前でした。しかし今は、「ここは休暇にしょう」「よほどの仕事が入ったら、休暇は返上してタイミングをずらそう」という、休暇先行での考え方ができるようになりました。

もちろん、定期的に入る仕事のパターンは先読みしますし、祝日や休日には急な依頼が来るかもしれないので、なるべく空けるように予定を組んだりもしています。でも、決める優先順位が休暇の方が上になりました。休暇をしっかり楽しむために仕事を入れないように差配する、この当たり前のような感覚が、これまで押し殺されてきたというのが、正直なところです。

独立起業して変わることはたくさんありますが、時間の感覚がここまで大きく変わるとは思いませんでした。特にシニア起業と言われる年代では、この変化は歓迎すべきだと感じます。

秒という単位が迫り来る感覚から解放され、9時5時8時間労働というルールからも解放され、休暇と仕事の優先順位が逆転する。それが独立起業による大きな変化のひとつと言えるでしょう。そしてシニア年代の起業家にとって、この変化は有利に働くと思います。

つまり、シニアが起業すると、いいことがある!という思いに至りました。

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