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人生を支える英語教育がここにある 【鎌倉女学院中学校高等学校インタビュー】

絶え間なく国内外の観光客が訪れ、歴史と国際色、そして現代文化が交差する古都、鎌倉。鶴岡八幡宮の大鳥居と海をまっすぐにつなぐ参道沿いに位置する鎌倉女学院中学校高等学校は、この土地で長く「鎌女(カマジョ)」の愛称で親しまれてきました。

この鎌倉女学院の生徒たちの英語力には驚かされます。全国の高校3年生のCEFR B1(英検2級レベル)以上取得率が約1割*といわれている中、鎌女では9割(令和5年度)にのぼります。取得が難しいとされる準1級以上もおよそ3割の生徒が取得。英語力の高さがうかがえます。
*令和4年度文科省「英語教育実施状況調査」より

昨年、インタビュアーが代表を務める株式会社タラントンは、鎌倉女学院に英語劇の公演で訪れました。海外から本格的な英語劇を呼んで上演するのは、コロナ禍によるブランクを経て実に4年ぶりのこと。

ようやく『鎌女の英語が戻ってきた』という気持ちです

と嬉しいお言葉をくださったのは、中高の英語教育を束ねる英語科主任の根岸真由美先生。先生のおっしゃる「鎌女の英語」とは、一体どのようなものでしょうか?その特徴ある英語教育の内容と、学院が育んできた「鎌女のアイデンティティ」について、興味深いお話を伺いました。(インタビュアー:前田聖子)



●「鎌女の英語」を支える2本の柱

前田:非常に立地に恵まれた学校ですね。学校の周辺をちょっと歩くと歴史的名所がたくさんあり、海や山などの自然環境にも恵まれているこの地に開校されたのは、どういった経緯からでしょうか?

根岸:本校は、湘南の女子教育の発展のため1904年に漢学者の田辺新之助先生が開かれました。その教え子である外交官陸奥廣吉先生(外務大臣陸奥宗光の長男。奥様はイギリス人)は、病気療養のための鎌倉転居を機に、鎌倉の名勝を保存する活動や女子教育の発展に強く興味を持たれたのです。史跡や自然に恵まれた立地の本校に初代理事長として財政援助をしてくださいました。

前田:歴史ある学校ならではの由来ですね。英語に注力し始めたのはいつ頃からですか?

根岸:遡ると1977年になります。当時の英語科主任が先を見据えた教育を考えて、近隣校に先駆けてアメリカの学校との交流やネイティブ教員の配置などを始めたのが最初ですね。

前田:英語劇の公演で伺った際には、生徒さんたちの英語力の高さや物怖じしない姿勢に驚かされました。どのような教育がその力を伸ばしているのか、今日は先生のお考えを伺いたいなと思っています。

根岸:鎌女の英語教育についてお話しますと、中心に2本の柱を据えています。一つは「コミュニカティブ」で、文系理系を問わず生涯使えるハイレベルの英語を身につけること。そしてもう一つは「グローバル」で、学んだ英語を生涯使うことで世界に貢献できる人間になること。この大きな柱を中心に、「読む・書く・聴く・話す」の4技能と「発表」も加えた5領域のどこにも偏ることなく、バランスよく伸ばしていくということを基本にやっております。

前田:言葉で聞くとシンプルですが、実際に行うのは大変だろうと想像できます。どのように授業で実践されているのか、とても興味があります。

鎌女のルールは「和訳しない」。中学1年から授業はすべて英語で行われる。

根岸:コミュニケーション重視と最近よく言われていますが、それを叶えるためには必ず基礎の土台が必要になります。鎌女では、中学の時期にしっかり基礎を身につけ、高校以降ではそれを応用して自己表現できるところまで持っていく、というイメージです。

前田:中高一貫教育だからこそ叶うことですね。まず基礎の土台を作ると。

根岸:このために何をしているかというと、日々の授業ではとにかく豊かな量の英語に触れ、4技能5領域に渡る活動をたくさん繰り返せる環境を作っています。リーディングでは多読・精読・速読・音読という基本をとても大事にし、またライティング活動では中1からパラグラフライティングを行い、論理的な思考を育てることに注力しています。そしてそこで書いたものは必ずスピーチで発表してもらうなど、各領域にまたがった活動を持続的に行っています。

ライティング活動の発展として、学生だけで作った英字新聞「鎌女タイムズ」。タイトル画は美術部による黒板アートで、それぞれの個性や才能に驚かされるのだそう。

前田:一つの活動で終わりとならずに、生きた英語として身につく工夫をされていますね。

根岸:ネイティブの先生方が担当するリサーチとプレゼンテーションの授業でも同じように、リサーチしたものを書いて発表して、ということが徹底されています。本校では、ネイティブの先生方も同じように「鎌女の英語」について日々知恵を絞りながら頑張ってくださるんですよ。毎日のようにミーティングされていますし、生徒にとって何が一番良いかを真剣に考え、授業に活かしてくれています。

前田:どんなアイディアが出るんでしょうか?

根岸:例えば高2・高3のスピーキング活動(グローバルスタディーズ)では、生徒達はSDGsについて様々な角度から学んだあと、「UN Habitat職員」を模した模擬面接という活動を行っています。グローバルな就職を想定した面接の練習をする活動なのですが、このユニットは、途上国の町に影響を与えるSDGsに対する認識を高めることと、履歴書の作成スキルやプロの面接スキルを発展させることの二つの役割を果たします。面接官の役も生徒が担当したりして、面白いですよ。こういうアイディアは私たちからは出てこないなと思います。

前田:相手の立場や考えを想像する力も育ちますね。それに、人前でプレゼンテーションする機会も、若い頃から豊富にあると将来に必ず役立ちます。

根岸:プレゼンテーション力は、鎌女では中学3年間を通じて参加する「陸奥杯スピーチコンテスト」という学内コンテストもありますから、生徒たちはじっくりと能力に磨きをかけることができます。友人の暗唱やスピーチを聞いて刺激を受けたり、自分の英語を褒められて自信がついたり、高校生になって学外コンテストにチャレンジしてみたりと、とても有意義な活動です。

陸奥杯スピーチコンテストの様子。英語力やスピーチの構成力、そして何より人前で話す度胸が身に付く。


●ICTをうまく活用して基礎力向上

根岸:さらに今は、ICTの便利さが目覚ましいですね。鎌女では中学1年から、授業の5分間「教科書を離れて英語に触れる時間」を設けていまして、洋書を読ませるんです。生徒たちにChromebookを持たせるようになってからは、読む本の選択肢が格段に充実しました。

前田:思わず読みたくなるようなテキストを揃えることは大事ですね。

根岸:プリントで揃える時代からだいぶ変わりましたよね。ICTはライティング活動にも大いに役立っていて、生徒たちが書いて提出した文章が、このようにオンラインですぐに全員で見ることができるんです。紙の時代とは大違いですね。

ライティングのシェア画面。同級生がどんな意見を持ち、どんな英語表現を用いているのかが一目で確認できる。

根岸:生徒同士でこんな英語表現があるんだ、私も使ってみようかな、などと刺激しあっていて、とても良い傾向だなと思います。それに私たち教員のチェックも、AI添削を使うことでかなり楽になりました。すぐにフィードバックが返ってくるAIと人間の添削の組み合わせはかなり有効だと思います。

前田:今の教育現場は大きく変わっているんですね。便利なものはどんどん取り入れていく姿勢に、頭が下がります。

平成30年より始めたオンライン・スピーキング。生身の体験が減ってしまったコロナ禍でも役立った。

根岸:コロナ禍でICTの利用は一気に進みましたが、正直、私たち教員も手探りをしている面もあります。例えば、単語はノートに10回書いて覚えようというのがありますよね。そういった基礎を作るプロセスは大事で、これをICTと並行しつつどのように生徒に教えていこうかという葛藤はあります。探しているものが簡単に出てくる時代ですからね。どうすれば良い教育ができるか、日々教員たちも模索してます。

前田:先生方も時代の流れに迷いながら、最適な道を常に考え続けてらっしゃるという。その姿勢が日々の教育に生きているのでしょうね。


●鎌女の本領発揮、豊かな課外活動

前田:お話を伺っていて、4技能5領域のあらゆる分野がミックスされた活動が盛りだくさんなことがわかってきました。これは「鎌女ならでは」という活動について、お聞かせいただけますか?

根岸:鎌倉の地の利を活かした「鎌倉英語インタビュー・ガイド」という活動は、本校ならではのものですね。場所柄、海外からの観光客がたくさん訪れますので、インタビューや案内してみたいことを教室で準備し、街へ出て観光客の方に声をかけ、インタビューの依頼をし…というところまでひっくるめた活動です。

前田:知らない方に声をかけるのは緊張しますね!

見知らぬ人に声をかけるのは、生徒たちにとってドキドキの体験。

根岸:それが面白いことに、グループでやっていると案外うまく乗り越えるんですよ。ちょっと誰かが失敗してしまっても、すぐに他の子がフォローに回ってみんなで乗り越えていく姿が見られます。最初はおそるおそる街に出て行った生徒たちも、時間が経つうちに随分積極的になって、帰る頃には「先生、あともう少し!」となるんですよ。

前田:失敗した時にいかに即興でリカバーするか、という体験が語学には非常に大事ですね。とても恵まれた環境です。

根岸:それから、これは国際理解も含めた活動ですが、外国人講師のレクチャーを英語で聞く機会を作っています。例えば高3はミャンマーの方のお話を聞くのですが、この方は実際に民主活動家のアウンサンスーチーさんと一緒に活動をされていたんです。ミャンマーの民主化運動は教科書に取り上げられていますので、それを学習した後に生身の体験が聞けるという、貴重な機会になっています。

ミャンマーからの講師(現在日本在住)を招いた毎年恒例の講演会。講師の方と先生方は、家族ぐるみの温かい交流が続いているそう。

前田:教科書が実体験と結び付けられるというのは、他では得難い体験ですね。

根岸:その他に、海外での研修や交換留学にも力を入れています。昨今の円安事情で海外に行くのが大変になりましたが、生徒たちが豊富な体験をできるよう、協力先を工夫し続けています。アメリカ、カナダ、イギリスとこれまで色々なプログラムを作ってきましたが、ニュージーランドでは1年留学の他、複数の学校とも協力関係を結んでいます。現地に着くと、みんな一人ずつバラバラの学校に向かうんです。

前田:日本語が使えない環境に身を置けるわけですね。

根岸:そうです。この中3対象のターム留学は、とてもおおらかな環境で英語を学ぶことができ、みんな大きく成長して戻ってきます。そういえば一つのエピソードなのですが、海外研修に参加する生徒たちは、空港に着いたら英語に切り替える、ということを徹底してくれるんです。空港で出会う他の学生さんたちが日本語で話していても、鎌女の生徒たちは英語を貫いてくれますね。日々の教育の積み重ねがこういうところに表れるのだと、私たち教員もはっとさせられる一場面です。

前田:その時の先生方の喜びが、目に浮かびますね!

根岸:国際交流の経験を若いうちに積むのは非常に大事なことです。本校の卒業生の一人であるジャーナリストの安田菜津紀さんは、在校時カンボジアに行った際に大きな衝撃を受けられたそうで、今は国際的に素晴らしい活動をされています。

前田:卒業生にそういう方がいると在校生は誇らしいし、自分の将来についても真剣に考えますよね。

根岸:各種プログラムにはある程度英語力の基準を設けているのですが、成績にとらわれないものもあれば、という理由から、誰でも参加できるプログラムも作ってみました。マレーシアとシンガポールでの研修です。

マレーシアの学校でのランチタイム。異文化に触れる絶好の機会です。

根岸:現地では日本のアニメがとても人気で、達者な日本語を話してくれる人が多く、うまくコミュニケーションが取れているから面白いですね。一つの学校の中には多様な民族の方がいて、制服もイスラム系、中華系、マレー系、イギリス系と異なっているんです。そういったところからも、生徒はたくさんのものを学んで帰って来ます。


●「常に新しい何かを始めよう」を合言葉に

前田:このような多彩な活動を学校単位で行うということは、アイディアとして思い浮かんでも、一般的にはなかなか踏み出すことが難しいのではないでしょうか。どのようにして企画し実現されてきたのですか?

根岸:鎌女の英語科は「伝統は重んじつつ常に新しい何かを始めよう」という意識があるので、いつも教員たちでアイディアを出し合い、準備に時間はかけますがとりあえずやってみよう。あとは試行錯誤の繰り返しですよね。
長期留学生受け入れもそうした活動の一つです。

長期留学生としてアメリカからやってきたホリーさん。「THE名門校」(テレ東BS、’24年2月24日放送)にて彼女の学校生活やホームステイ先の密着ドキュメンタリーが放送された。

前田:貴校に足を踏み入れた時、真っ先に「なんて先生方の風通しがいいんだろう」と感じたんです。皆さん、とても話しかけやすい雰囲気を持っていらっしゃるなと。風通しが良いからこそ、新しいことにも踏み出していけるのでしょうか。

根岸:どの先生も「鎌女の英語」への理解が深いので、コミュニケーションがスムーズですよね。私も、ここで英語が教えられて本当に良かったといつも思いますよ。紆余曲折はどこにでもあって、例えばライティング活動の一環として行なっている「ペンパル・プロジェクト」。今は香港の学校と協力していますが、ここに辿り着くまでは20余年かかりました。色々と相手先の国を変えてもうまくいかず、どうしよう…と困っていた時に、香港で仕事をしている卒業生が知り合いの学校とつなげてくれたんです。

前田:そうやって、粘り強く独自の活動をいくつも作られてきたのですね。それにしても、卒業生が社会に出た後も関わりたい、力になりたい、と思える母校になっているのが素敵です。

根岸:鎌女で過ごしたことを誇りに思ってくれている卒業生がたくさんいるのは、ありがたいことですよね。卒業生と私たちは、もちろん歳の差が縮まることはないのだけれど、互いに大人として友達のような関係に変わってくるなと感じます。彼女たちから学ばせてもらうことも、とても多いです。

根岸真由美先生(左)と、ネイティブのヘッドであるサマンサ先生。


●受験英語よりも大事なこと

前田:もう一つ私が伺ってみたかったのは、大学受験への対策とアクティブな英語教育とをどのように両立させているのだろうかということです。日本では多くの先生方が、この点について悩まれていますよね。貴校はかなり高い進学実績もあげてらっしゃいますが、どのようにその両立を叶えているのかを伺えたらと思います。

根岸:まず「受験英語」がどうだということを、生徒たちには言わないというのがあります。それよりも「英語学習に大切なものは何か」ということを伝え続ける6年間ですね。中学入試の科目には英語がないので、生徒は中1から皆同じスタートを切るのですが、「こちらが提供しているものをきちんとやれば自主的な勉強法もわかってくるし、大学入試、社会に出てからの英語も保証するよ」と伝え続けています。

前田:先生がそう断言してくれると、安心感がありますね。

根岸:英語って、本音を言いますと、中高の6年間で学習している時に好きになるとは限らないじゃないですか。科目としてはそんなに好きじゃなかった生徒が、社会に出てから自分のやりたいことを見つけ、それに付随して英語のスイッチが入る可能性もあるのが人生だと思うんです。そういった時のために、教育は長い目で見ていかなければいけないと常に思っています。

前田:まるで種を蒔くようなイメージですね。

根岸:まさにそうです。卒業生の中には、東日本大震災の時に参加したボランティア活動で国境なき医師団の人たちと出会い、英語を身につけようと奮起した方もいました。

前田:「大人になって学び直せる力」が人生では大事だと私も感じています。基礎がないと、学び直そうにもすごく時間がかかるということも。

根岸:卒業して国内外で英語を使って活躍している方も多いですが、会うと皆「鎌女の英語で本当に良かった」と言ってくれるんです。それが嬉しいですし、励みになりますよね。


●英語劇で「鎌女の英語」が戻ってきた!

前田:昨年は、コロナ禍をあけて実に4年ぶりに英語劇の公演に伺えて、こちらとしても感無量な思いでした。

生徒を入り口で迎える俳優。一人芝居でステージに立ち、インタラクティブな参加型演劇「ジキル博士とハイド氏」を熱演。

根岸:ホワイトホース・シアター(タラントンが招致する海外の英語劇団)とは1997年からのご縁で、本校では教員も含めとても楽しみな行事として根付いています。

前田:どのような経緯で上演を始めたのでしょうか?

根岸:きっかけは、英語劇が好きな先代の英語科主任の先生の後押しですね。話を持ちかけた時、こんな費用で本格的な英語劇が見られるとは、ぜひ試した方がいいということでした。最初に来ていただいた時、役者さんが「ステージの棺に先生が入ってくれ」と言うんです。それで劇の最中、棺の中から先生が出てきたものだから生徒たちは大爆笑で、これは本当に楽しいなと思いましたね。そこから魅力に取り憑かれて今に至っています。

前田:英語劇には言葉で説明するより、とにかく一度観ていただきたい魅力がありますね。

根岸:ステージと観客が総動員になって劇を作り上げるところが、とても良いですよね。英語に自信があるかどうかは関係なく、ぜひどの学校も一度はトライしてみて欲しいですね。必ず新しい世界が開けると思います。

客席との距離の近さがホワイトホース・シアターの魅力。車座になっての公演も迫力がありました。

前田:昨年の公演では劇が終わった後の役者とのQ&Aタイムも、生徒の方が司会をしてくださり盛り上がりました。

根岸:劇の招致を続けている理由の一つは、この時間なんです。生徒にとってはドキドキですが、どの役者さんもとても誠実に答えてくださるし、どんな質問も成功体験で終わらせてくれますよね。ある年大きなカツラを被っている役者さんがいて、中1の生徒が”Is your hat heavy?”と尋ねたんです。そうしたら役者さんは生徒の方に歩いてきて、実際にカツラを彼女に被せてくれて。こういう体験って、一生ものですよね。

前田:心と心で触れ合えている感覚がありますよね。

根岸:本校では劇の鑑賞後に、役者さんに向けて「サンキュー・ノート」という感想カードを生徒全員英語で書くのですが、これを渡すととても喜んでくださるのがこちらも嬉しくて。

前田:昨年も、上演の2日目に伺った時にはもうすでに前日の感想が集まっていて、役者はとても感激していました。「帰りの飛行機で読むんだ」と嬉しそうに手荷物に入れていましたね。

根岸:生徒たちの喜びのコメントを読むと、私たちも上演できて本当に良かったなと改めて思いましたね。


●英語劇が人生に残してくれるもの

根岸:英語劇が生徒たちに何を残してくれているかというと、それは人生における一つの引き出しだと思っているんです。大人になってそれを開けた時に、大事なものが出てくるというような。教育ではすぐ効果があるものに注目しがちですが、随分と後になってからじわじわ効いてくるようなものも大事にしたいですね。

前田:6年間の姿だけでなく、長い目で生徒さんたちの人生を見据えてくださってるんですね。

根岸:英語劇が来る日が教員にとっても楽しみなのは、役者さんがステージの準備や片付けをしている時に、お話ができるじゃないですか。そういう時に、舞台上の堂々とした姿と素の姿とのギャップを感じて楽しいなと思ったり、世界中を旅して回っている方たちの考え方のおおらかさに感動したりと、色々な気づきがあるんです。

前田:アーティストが学校にやってくる機会からは、得るものが多いですよね。

根岸:上演はほんの一日や二日なんですが、役者の皆さんの生き様や仕事ぶり、教育に対する姿勢から学ぶものが本当にたくさんあって、私たちもある種の生徒になれる一日だなと。ただ劇を見せてもらうだけの体験ではないと改めて感じます。

前田:大人である先生方にとって、心がはっと動くような体験がいくつになってもあるというのは素晴らしいことですよね。若い人たちは言葉で何を言われるよりも、大人が本気で楽しんでいるかどうかを見ていると思うんです。

根岸:背中をしっかり見られていますよね。いくつになっても自分を磨かなくてはならないし、教える側であるだけでなく生徒の立場になって学んでいかなくてはと思わされます。

前田:私は今日根岸先生のお話を伺って、とても大きなメッセージを頂いたような気持ちでいます。英語教育のあり方や、学院全体のテーマとして、鎌倉女学院では「より良く生きる」ということを目指されているように感じるんです。これは子供も大人も関係なく、誰もが賛成し共感するテーマですよね。先生方が大人になっても「より良く生きること」について常に意識してらっしゃることに、今日は大変心動かされました。

根岸:ありがとうございます。そういう機会があるからこそ、私たちも日々大変なこともありますが、教育のために頑張ってこられたように思っています。

・・・終わり・・・


株式会社タラントンは、海外から教育英語劇団を日本に招き、教育機関や自治体を対象とした英語劇ツアーを毎年秋に行っています。また、海外の役者から直接に演劇メソッドや表現力を学ぶことのできる<英語教員向けオンライン・ワークショップ講座>を'24年よりスタートする予定です。
'24年ツアー(9〜10月来日)およびワークショップに関するお問い合わせは、以下のフォームからお願い致します。


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