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MDR-CD900STは本当にモニターヘッドホンとして最適なのか

1990年台から日本ではモニターヘッドホンのデファクトスタンダードとなっているSONY MDR-CD900ST(以後、900ST)。宅録においても未だ定番として君臨しているようですが、果たしてそれでいいのか。ミックスやら何やらすべてこいつを信じて任せてしまっていいのかという疑問があるので色々と考えてみました。

(音源全体の音の確認は、ミキシングやマスタリング等色々ありますが便宜上ひっくるめて「ミックス」として記述します)

結論というか要点というか

  • 演奏時のモニタリング、粗探しには適しているがミックスにはもっと適した他のヘッドホンを使ったほうがいい

  • つまり目的により他のヘッドホンとの棲み分けをしつつ使用するのがいい

  • そもそもミックスの確認はスピーカーでしょ

  • プロのスタジオで使われるレベルの立派なヘッドホンアンプで鳴らさないと900ST本来の性能は発揮できないのでは

以下、その理由などを書いていきます。

定番説に疑問を持ったきっかけ

長年世間の噂を信じて900STを信仰してきた私ですが、信仰心が揺らぐきっかけとなった事件がありました。それはMDR-M1STの登場です。2019年に発売されたとき、900STの後継機と目されていたのか単に私の思い込みだったのかは分かりませんが、「後継機が出た。これは欲しい」とすぐに購入しました。そして聴いてみて随分と音が違うのに驚いたのです。900STにあった高域チャラチャラ傾向の音ではなく、低域がずっしりと鳴っていたのです。ちなみに私は(日本人には珍しく?)低域が腹に堪えるような音が好みであります。即座に「あ、これだ。こうじゃなくちゃ」と掌が返ってしまい、「900STは何だったのだろう。今まで俺は騙されていたのか」とまで思うようになりました。ただ、変わらずに900ST信者が多くいるだろうということは想像できました。

低域不足説

巷では「900STは低域が不足気味」と言われていますが実際どうなのでしょう。う〜ん、正確には分かりません。ただ、前述のようにM1STと比べれば物足りないし、少なくとも900STは高域が強調されているというのは事実のようなので相対的に低域が不足と捉えても差し支えないのかもしれません。

ちなみに、低域不足が理由なのかは分かりませんが、900STが標準とされているのは日本だけで、欧州ならAKGSENNHEISERbeyerdynamic、米国ならaudio-technica、アジアでは同じSONYのMDR-7506もよく使われているようです。

ヘッドホンアンプ次第なのでは

900ST低域不足説を肯定するようなことを書きましたが、実はそれはアマチュアのレベルでの話なのではないかという考えもありまして。

900STはそもそもプロのスタジオで使われることを前提に設計された物です。プロのスタジオでは高性能の単体のヘッドホンアンプを使っているでしょう。それらはハイインピーダンスのヘッドホンでも難なく鳴らせるくらいドライブ能力が格段に違うのです。つまり900STはそういうヘッドホンアンプで鳴らすのが前提で、それならば低域もしっかり鳴るのではないかということです。逆に言うと、低域が不足なのはヘッドホンアンプがショボいからなのではないかということです。

とはいえ、多くの宅録者はオーディオインターフェースに直接ブッ挿していると思われるので、その場合の音としてどうかを考えた方が建設的なのかなという考えで話を進めます。

モニターヘッドホンの役割は一つではない

モニタリングと聞いて宅録者はどういう使い方を想定するのでしょうか。PCの前に座ってDAWの画面を見ている姿を想像するのでしょうか。マイクの前で歌っている、あるいはギターアンプの前でギターを弾いている人を想像する人はどれくらいいるのでしょうか。打ち込み専門の人は想像しないかもしれませんが、演奏しているときに音を確認するのもモニタリングなのです。それから、音声の収録や配信時にその音を確認するのもモニタリングです。

つまり、今あげただけでも以下の三つの目的があります。

  1. ミキシング

  2. 演奏時の確認

  3. 収録や配信時の確認

それぞれの目的に適したモニターヘッドホンがあってもおかしくはないわけです。900STは高域、特に人間の聴覚の感度が高い帯域を強調しているようで、聴こえ難いノイズ等も聴き逃しにくいヘッドホンと言えるでしょう。それを考えると上記目的の2と3には適していると言えます。

何が言いたいかというと、ミックスには向いていないのではないかと。そもそも、プロのスタジオで使う前提で本機を作ったSONYはミックスを想定していないのではないかと。

そもそもミックスはスピーカーで

そもそもの繰り返しになりますが、プロのエンジニアはミックスの時は基本はスピーカーで聴いているという話があります。つまり、900STを使ってミックスすることはないのではないかということです。たまに不要な音、不快な音が混じっていないかをチェックするために使うことはあるかもしれませんが。

そうするとちょっと気になることが……。「900STでミックスした音が標準になっているのだから自分も900STの音を基準にしなければ」みたいな考えで900STを使っている人が多いと聞きますが、それはいったい何だったのでしょうか。

ミックスはどのヘッドホンを使えばいいのか

ミックスの確認はスピーカーでやるものだと言われてもそんなに立派なモニタースピーカーは持っていないし、ヘッドホンでやるしかないじゃないという方は多いと思います。そんな方が900STじゃないとしたら何を使えばいいのか。私の知る範囲ではSONY MDR-M1STとか、audio-technica ATH-M50xとかYAMAHA HPH-MT8、その辺りでしょうか。

私は何を使っているか

私は本気で宅録やっているわけではなく、朗読やナレーションやポッドキャストなどがメインなのですが、参考までに書いておきます。

モニタースピーカー:YAMAHA MSP5 STUDIO
ヘッドホン:普段はCLASSIC PRO CPH7000、本気出す時はSONY MDR-M1ST、他 AKGのも持っているが音が硬く感じられ好きではない
ヘッドホンアンプ:単体のものは使っていないがRupert Neve Designs RNHPを導入予定(価格がどんどん上がってたいへん)。最近はAMATERAS 7022も気になっている。

以上

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