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2040年の鉄道業界 〜未来を描くには、今までの常識を疑え

次世代モビリティーというと、今は自動運転のクルマが話題になることが多いですよね。トヨタ、テスラ、アップル...さまざまな企業が自動運転に参入してきています。そんな中、1970年代から「自動運転」自体の取り組みは行われている鉄道業界はどうなるのか?世の中で言われている未来の、その先を考えて行きたいと思います。

そしてなぜ、僕が将来鉄道業界で起業したいと思っているかについても、お話ししたいです。

鉄道業界を取り巻く環境

自動運転は「人件費が伴わないタクシー」と考えれば、その破壊力は理解できるのではないでしょうか。

例えば、タクシーとバスが月額10000円で日本全国乗り放題としたら。極端な例ですが、すごく安い、所持しなくていい、メンテナンスフリー、公共交通として使える、プライベート空間が確保されているのが自動運転車の強みです。しかも、最先端の通信技術と組み合わせれば、自動車の最大の弱点である渋滞ですら無くなります。イーロンマスク氏が提唱する、ハイパーループという地下の超高速トンネルを使えば、新幹線ですら追い抜いてしまうでしょう。

つまり、鉄道よりも、速く、安く、快適な、まさに究極とも言える陸上交通が誕生する訳です。その市場価値を考えれば、大手企業がこぞって自動運転に目が向くのは自然と言えます。

一方で、鉄道業界は、このまま単なる輸送手段としての役割だけでは着実に縮小していきます。これは純粋に、日本の人口が減っていくからです。さて、そんな中で鉄道業界は生き残っていけるのでしょうか?

2020年代 〜プラットフォーム化する鉄道

自動運転車といえど、技術開発されればすぐに普及されるわけではありません。価格も、月額10000円ほどになるにも時間がかかるでしょう。ここら辺は、これまでの携帯電話の料金の変遷を辿るとイメージしやすいのではないでしょうか。

しかし、着実にシェアは奪われて行きます。ならば、どのような対策が必要か。そもそも、鉄道というのは決まった「ルート」「停車駅」「時刻」で運行されるのが常です。まずやるべきことは簡単で、これを最適化することでしょう。

これを今までやってこなかったかといえば、そうでもありません。需要を予測し、新駅設置、新線開通、相互直通運転などさまざまな取り組みを行なってきました。しかしながら、そう、こんなことでは時間がかかるのです。

ではどうするかというと、「物理的に可能な範囲で」「システム上の都合で不可能だったことを」「無理なく」こなすことです。順を追ってご説明しましょう。

まず、鉄道にはいくつか規格があります。レールの幅、集電システム、電圧などが代表です。ここは今は乗り越えるのが大変。ですが、システム上の都合は少し難易度が下がります。線路のキャパシティ(どれくらいの間隔で列車が走れるか)、保安システム(信号システム、列車無線など)、会社間の利害関係です。キャパシティーに関しては、今後人口減りますし、地方移住も進むでしょうから自然と空いてきます。あとはシステムを、本格的な自動運転と共に共通化すれば良いだけです。

そして、会社間の利害関係。かつては、集客を奪い合っていた関係の路線も多く、いまだに会社間の壁は厚くなっています。東京メトロと都営地下鉄で、料金系統が違うのがいい例です。しかし、今後鉄道業界まるごと、自動車に収益が奪われるなら、話が変わります。なんとしても、鉄道に乗ってもらわなければならない。かつてはライバル関係だとしても、協調しなければ生き残る確率は下がるでしょう。

そうなると、線路は繋がっていたけれど、今まで乗り入れ無かった路線同士でも、システムを統一し、乗り入れることことで少しでも利便性を高める取り組みが、今後一気に増えてくると思います。

つまり、鉄道業界は、線路と運行をセットで管理する今の業態から、線路というプラットフォームに、車両を走らせるというサービスを展開するという新しい業態へとシフトして行くのです。こうなってくると、線路を所有(インフラ管理)する、車両を管理する、車両を走らせるという事業を、それぞれ分社した方が、効率的に回る可能性があります。例えば、インフラ管理を従来の鉄道会社、車両管理を製造メーカー、車両を走らせるのを運行企画会社、という具合にです。

前にもどっかで書きましたが、鉄道会社は他の業界と比較して、やることの幅が広すぎるのです。第三セクターとかのように、分離することが世の中的には当たり前じゃないでしょうか。

2030年代 〜鉄道はライフスタイルの多様化に貢献

そうして、プラットフォーム化が完了した2020年代を終え、次の時代に入ります。

全鉄道会社が強力な関係を結んでも、なおも自動運転車のシェアは止まるところを知りません。前時代の遺物として、このまま鉄道は消え去る運命なのでしょうか。

そこで、考えていただきたいのが車両限界です。

なんでこんな話が出てきたかって疑問に思うかもしれませんが、これこそが、「速さ、安さ」を自動車に奪われた鉄道業界が生き残る、唯一にして無二の道なのです。

乗り物には、大きさに制限があります。それを基準に、インフラ整備をしているからです。

まず、普通自動車の車両限界を見て行きましょう。普通自動車の寸法は、「道路法」にて以下のように定められています。

普通自動車の車両限界:高さ3.9m × 長さ12.0m × 幅2.5m
(国土交通省関東地方整備局HPより)
https://www.ktr.mlit.go.jp/road/sinsei/road_sinsei00000010.html

これは、乗用車のみならずバスも含まれます。ただし、特殊な連接バスとかは例外措置が取られています。2車体連接なら、長さは18-19mになるそうです。

連節バスは全長が日本の保安基準で定められている12 mを越えるなどの特殊構造のため、道路運送法に基づく国土交通省運輸局の特例措置を受け、使用路線を限定して運行される。走行レーンおよび経路を厳守するという条件で運転が可能となった。もっとも、非常時の迂回路や新規路線への投入にはその都度実車による検証と認可が必要となり、運用には依然として制限がある。
(Wikipediaより)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E7%AF%80%E3%83%90%E3%82%B9#%E9%80%A3%E7%AF%80%E3%83%90%E3%82%B9%E3%81%AE%E9%81%8B%E8%BB%A2%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6

次に、鉄道を見てみましょう。「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準」には、以下のように書かれています。

(「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準」国土交通省HP)
https://www.mlit.go.jp/pubcom/06/pubcomt129/03.pdf

なんだか分からない。レール、ホーム、架線との関係で、複雑な図形をしています。JRの1車両あたりの長さは、20mのものが多いので、ざっくりと、

鉄道の車両限界(だいたい):高さ4.1m × 長さ20m × 幅2.8m

くらいになります。上の部分は、丸く屋根になりますけどね。

さて、実は幅も高さも、そんなには変わらない。長さも、連接バスなら同じくらい。ではあるのですが、問題はその制限です。自動車は、大きな車両に合わせて整備されている道路なら問題ありませんが、高さ制限があったり、重量、タイヤの耐力、そして交差点の曲がりやすさといった課題が出てきます。

これは、新幹線の陸上輸送をイメージすると分かりやすいと思います。新幹線並の大きさだと道路に走らせるだけで、結構大掛かりな作業です。

新幹線の陸上輸送の様子https://www.sbs-logicom.co.jp/lgcm/physical/transport/special/special-case2/

これに対して、鉄道では大きなものを運ぶのに適しています。むしろ、本来そのために建設されたのが鉄道です。

大きさのメリットを十分活かせるということは、自動車とは快適の意味合いが異なってきます。単純に心地がいいだけでなく、生活の様々な場面において、人間には必要な空間があります。仕事をする、寝る、余暇を楽しむ、物をしまう。部屋と同じレベルで空間を利用するなら、大きさが必要です。そのため、「移動しながら何かをする」ならば、圧倒的に鉄道は有利になるでしょう。

多様化するライフスタイルに応えるには、多様な空間が必要です。移動しながら会議や、睡眠、食事など様々なニーズに応える列車、今は観光列車が中心ですが、これが今後主流になって行くと思います。ローカル戦を移動しながら自然の中でテレワーク、などライフスタイルの多様化に大いに貢献するでしょう。

2040年代 〜鉄道は住む場所に

こうして、多様なライフスタイルに応える鉄道サービスは、運行企画会社によって出され、自動運転で低コストに、柔軟に提供されていきます。

そんな中、もはや鉄道に住みたいと、キャンピングカーならぬ「キャンピング電車」が登場するかもしれません。ちなみに、半導体技術の進歩で今後動力部分はさらに小さくなり蓄電池の容量も大きくなれば、車内の空間はより広がり、さらに非電化区間でも対応できます。

AIで車両メンテナンスができれば、下手に物件(不動産)を持つよりも、車とみなされる電車は、維持管理費・税金が安上がりになる可能性があります。同じくらいの価格だとしても、全国各地を移動できる電車の方が楽しく生活できるかもしれませんね。

描いた未来を、現実にするために

以上が、僕が描く未来です。

達成するには、鉄道会社を横断的につなぐ、運行企画を中心に行う会社の存在が欠かせません。線路も車両も、運行もしない会社が、鉄道業界を大きく動かすことが可能になる未来が、まもなくやってきます。

今、デザインやマーケティング領域で、2021年内の起業に向けて動いているのも、これが理由の1つです。

ぜひ、いろんな方々と一緒に、これまでの常識に縛られない、面白い未来をこれから作って行きたいですね!

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