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ランニングとカフェインとカプサイシン

ランナーは少しでも速く、そして少しでも長く走るために、トレーニングを積んでいます。そしてトレーニングのみならず、シューズやウェア、補食やサプリメントまで様々なものを試しています。

今回はサプリメントの中で、カフェインとカプサイシンについてまとめてゆきます。

1.カフェイン

1-1.カフェインの利点

「カフェイン」と「ランニング」でPub-medで検索すると260件。「カフェイン」と「マラソン」で検索すると12件で、多数の文献があります。短距離走から長距離まで文献があります。

まず短距離走におけるカフェインの効果の文献は少ないのですが、体重あたり6mgのカフェインを摂取することで100mのタイムが0.14秒短縮するとあります。これは主に、カフェインが筋肉内のカルシウム放出を増強し、それによって神経の興奮と筋収縮の連携を強化して、筋肉の収縮機能を高める働きによります。
自分は大学時代に短距離走をしていましたが、競技前にカフェインを摂取していました。効果のムラはあるのですが、効いた時は立毛筋が逆立って交感神経が刺激されているのを感じました。逆にタイムが出なかったときは、変化が何も体感できませんでした。

次にマラソンですが、前記の短距離の効果に加え、痛みや苦しさを感じにくくなるという効果や、集中力の向上という効果があります。短距離のような無酸素運動より、有酸素運動に効果を発揮するとも言われています。そしてその効果は、遺伝的な要素により個人差があるとも言われています。さらに低用量のカフェイン(75mg<日)でも習慣的に摂取すると耐性ができるとも、普段のカフェイン摂取量に関係なく恩恵を受けられるとも言われています。さらには寝不足の時に摂取するとよいよ!とか、暑熱の時に摂取するとパフォーマンスが向上するとか向上しないとか、でも高麗人参と一緒に摂取すると向上するもあります。
一般に摂取して効果が出るまでに30~60分ほど時間がかかるので、ハーフマラソンではスタート直前に、フルマラソンでは中間点を超えたあたりで摂取するのがよいと思われます。文献的には体重1kgあたり2-6mgの研究が多いので、200-300mg程度がよいと思われます。

そしてウルトラマラソンですが、前記働きの他に覚醒効果も大きいようです。眠気予防により、夜間走の能力向上と事故防止になるとのことです。
これは摂取量が多ければ効果が高いというのではなく、少ない量を分けて摂取するのがよいとされています(例:1-2mg/kg/回)

1-2.カフェインの欠点

カフェインの欠点は、過剰摂取による胃腸障害や頭痛・動悸です。個人差がありますが、摂取量が増えると増加する傾向があります。特に9mg/kg以上で有害作用が増加したとの報告もあり、300mg程度までにとどめるのがよいと思われます。

1-3.カフェインの使い方

まずはカフェインが自分にとって有効な武器となるか、見極める必要があります。できれば練習会の20km程度のタイムトライアルのスタート直前に、4-5mg/kg程度のカフェインを摂取してみて、スピードの出しやすさや後半の疲れの感じ方を確認してみるのがよいと思います。
カフェインがあっている人であれば、ハーフではスタート直前、フルでは中間点のあたりで体重1㎏あたり4-5mg程度のカフェインを摂取するのをおすすめします。

2.カプサイシン

カフェインほど有名ではありませんが、カプサイシンも同様の研究があります。「カプサイシンって、あぁあの唐辛子の辛いあれね!」と思うかもしれませんが、辛くない唐辛子のカプサイシン類似物質のカプシエイトにも、カプサイシン同様のダイエット効果持久力運動能力の向上効果があるとされています。そしてカプサイシンには脂肪の利用効率を上げることにより、筋肉のグリコーゲンを保持する効果、そして筋持久力の向上の効果が期待されます。
効果を試した文献をみてゆきましょう。

2-1.カプサイシンの利点

「カフェイン」と「ランニング」でPub-medで検索すると43件。「カフェイン」と「マラソン」で検索すると0件で、カフェインと比べると文献的な裏付けは少ないです。さらにカプサイシンの研究の多くは、ブラジルのサンパウロ大学のもので、信憑性も「うーん」といったところです。一つ一つみてゆきましょう。

2018年の報告では、10人のランナーを2グループに分けて、カプサイシン12mgまたはプラセボを摂取して45分後に1500m走をしたところ、カプサイシンvsプラセボで(371.6vs376.7秒)とパフォーマンスの向上がみられ、疲労感の感じ方も低かったと報告されました。

2019年の報告では、13人の男性にカプサイシン12mgまたはプラセボを摂取して45分後にシャトルランテストを行ったところ、疲労までの時間、血中乳酸濃度、運動中および運動後 20 分間の酸素消費量、エネルギー消費量などを比較したところ、疲労までの時間以外は変わらなかったとこのことです。

2020年の報告では、カプサイシン12mg摂取から45分後に400mと3000mのタイムトライアルをしたところ、400mはカプサイシンvsプラセボ(66.4 vs 67.1秒)、3000mはカプサイシンvsプラセボ(893.9vs915.2秒)という結果で有意なパフォーマンスの向上が見られたとあります。

2021年の報告では、21人のランナーが1週間の感覚で2回カプサイシン24 mg(開始45分前と直前に12mgずつ)を摂取した10kmのタイムと、プラセボを摂取した10km走タイムを比較したところ、CAP = 45.07 ± 6.41 分 vs. PLA = 45.13 ± 6.73で有意差はなかったとあります。

なお、2020年のアメリカからの報告で、1.2mgという少量のカプサイシンでは効果がなかったとのことでした。マウスの実験ではカプサイシンは多ければ多いほど効果が高まるとされています。

2-2.カプサイシンの欠点

カプサイシノイドは1日あたり33mg以上摂取すると胃腸障害を誘発したとの報告があります。摂取量が多いほど効果高いと言われていますが、文献の報告が12-24mgに抑えられているのはそういう理由があるのかもしれません。
また涙や鼻水、咳なども生じますが、前述のとおりカプシエイトでは辛み・刺激が少なく、そういう欠点を危惧せずに使用できそうです。

2-3.カプサイシンの使い方

カプサイシンは摂取から45分後に効果がピークとなり1.5時間程度持続します。カフェインより効果の消失が早いですが、体脂肪を効率よく使える可能性があります。文献を見る限り、やはり効果には個人差がありそうです。
特に体脂肪が多いランナーや、終盤にガス欠しやすいランナーは試してみる価値がありそうです。ハーフではスタート前に、フルでは中間点~30kmで摂取するのがよいかもしれません。
ただ市販のサプリメントではカプシエイトの錠剤1錠あたり1-1.5mg程度、1回あたり1-3mgが常用量とされています。1.2mgでは効果がない、12mgで効果があるかどうかという文献的な見解ですので、自己責任ですが倍量の2-6mg程度「エイっ」と摂取するのがよいかもしれません。


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