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ビールを飲みながら速くなる~プロローグ~ビアランナーの最適解~

 以前から疑問に思っていたことがあります。
 ボディビルダーたちの多くは練習後は飲酒を控えています。少なくともトレーニングした日は飲酒しないようにと啓蒙しています。ですがランナーたちは練習後に普通に飲酒をしています。何なら走りながら飲んでいます。それなのにしっかりと結果を残しています。この違いはどうして生じるのでしょうか?
 これはそれぞれの競技性の違いと考えています。
 自分は、お酒を飲んでもしっかりと速く走れるのではないか!何なら飲んだ方が速く走れるかも!?と思っています。
 そのことについて、これから少しずつ書いてゆきたいと思います。

1. 飲酒すると筋肉はつきにくくなる

 以前にもnoteに書きましたがトレーニング後に飲酒をすることにより、筋肉はつきにくくなります。
 飲酒とは関係なく、一般的にトレーニングをすると筋肉が壊れ、その後さらに強い筋肉がつくられます。トレーニング日に飲酒するとその後の筋肉がつくられるのが妨げられると、多くのスタディで言われています。文献にもよりますが、最大3割程度効果が落ちると言われています。ですので一般的にボティビルダーや、筋肉が必要な競技を行うのであれば、少なくともトレーニング日には飲酒しない方がよいと言われています(翌日であればの飲んでokとの文献はみつけられませんでしたが、経験上okと言っている方が多くおられるので大丈夫なのでしょう)。
 そのためトレーニングを行う際には、飲酒はしない方がいい?と言われてます。一般的にはランニングも同様に言われています。一応ナイキのHPも貼っておきます。ですが疑問があるのです。普段しっかり練習した人であれば、10km、20km走った程度でそんなに筋の崩壊はくるのでしょうか?そしてランナーにそんなに筋肉は必要あるのでしょうか?

2.ランニングで筋崩壊はおきる?

 筋の崩壊については、通常のトレーニングや、その延長程度のランニングや大会程度であれば、ほとんど起きないと思います。
 文献検査をしてみると、実際にランニングによる筋崩壊を調べたものの多くがマラソンやウルトラマラソンです。一応国内の先生が独自にマラソンによる筋崩壊(CPK)を調べたものを貼っておきます。これでもフルマラソン前後でCPKは軽度上昇に留まっています。ラットによる実験では特に下り坂で筋損傷が強くくるとのことです。
 血液検査などしなくても、筋崩壊はトレーニング後の「筋肉痛」として知ることができます。自分は10kmやハーフマラソンを走るくらいでは筋肉痛はおきませんでしたが、フルマラソンをしっかり走ると軽い筋肉痛がおきました。また、練習会で奇異な(失礼!!)トレーニングをさせられると強い筋肉痛がおきました。その結果一年の中で数えても、筋肉痛になるのは10回程度と思います。
 その時に飲酒を控えるとよいのかもしれませんが、年10回のトレーニングの効率が若干落ちたとしても、ランニングの実力にほとんど差が出ないのではないかと思っています。

3.ランナーに強靭な筋肉は必要?

 そしてランナーに筋肉は、適切なところに適量がある程度でよいと思っています。それは走力のある人の体をみれば、ある程度分かると思います。ボクシングや柔道の強い人のように鋼のような筋肉をした方はまずいません。水泳選手のような逆三角形の肉体や、競輪選手のような膨れ上がった大腿をしている人も見かけません。ランナーというと瘦身で、おそらくカモシカのような足(実際にカモシカの足が細いかの議論は省きます)を想像されると思います。もちろん高速で走るトレーニングは筋の萎縮を来たしやすく、特に骨格筋量が少なくて練習量の多い人は、それを補う意味で筋トレはをすることはよいと思っています。
 では実際に筋トレの是非を文献に求めるどうなのでしょうか。実際にいくつも論文はあって、だいたい「よい」~「変わらない」のような結果を多くみかけます。一応最近の文献の中で、流行したことある体幹筋と呼吸筋がよいという文献大腰筋の筋トレがよいという新潟医療福祉大学の山中先生の査読前の論文を貼っておきます。そして、当時筑波大学で骨格筋とランニングについて研究していた三本木先生は、筋力とタイムの関係は「不明」としています。適量の筋力・・・なのでうまい結果がでないのではないかと思います。

4.ランナーの能力を決めるのは、最大酸素摂取量×乳酸作業性閾値×ランニング効率

 筋力ではないとすると、ランニングパフォーマンスに影響するのは何でしょうか。一番言われていることでは、最も強く影響するのは最大酸素摂取量、次いで乳酸作業性閾値、ランニング効率とされています。
 GARMINのGPS時計では、簡易測定した最大酸素摂取量をもとにマラソンの推定タイムが算出されます。またこれを鍛えるとされいてるタバタトレーニングを練習メニューに取り入れている練習会もあります(悶えます)。
 ここに飲酒が影響するかが一番大事になるかと思われます。

5.飲酒しても最大酸素摂取量は落ちない?

 結論からいうと、飲酒しても最大酸素摂取量は落ちない印象です。いくつか文献があるのでみてみましょう。
 まずは以前も上げたスペインからの報告で、10週間週2回のHIITを行いながら、週5日間食事の際に飲酒をしてもらいました。男性は昼食と夕食時にBeer330ml、女性は夕食時にBeer330ml飲んでもらい、その後の最大酸素摂取量の変化をみたものです。
 トレーニングに加えてBeerを飲んでも、効果は変わらないとあります。Beerに変えて同アルコール量のウォッカ水を飲んでも変わりませんでした。ひいき目に見ると逆に飲酒していた方がよくも見えます。

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 またアメリカの報告では、日常的な飲酒量と最大酸素摂取量の関連をみたものがあります。面白いことに男女ともに適度に飲酒する習慣があった方が、飲酒しないひとよりも最大酸素摂取量が高い傾向にありました。
 一日20-30g程度飲酒する人で、最大酸素摂取量が3程度高かったとのこと。これはフルマラソンのタイムでいうと10分以上とのことですから、衝撃ではないでしょうか。
 一応これは飲んでいる人が最大酸素摂取量が高かったという結果で、飲むと高くなるということではありません。

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 また別のアメリカからの報告では、お酒の中でビール、リキュール、ワインの中でどれがよいかをみたものがあります。ワイン、ビールが優秀なようですね。

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 また別の報告では、肺活量のみでみたものがあります。飲酒全体では飲酒量と肺活量に関連がみられなかったものの、ワインのみでみてみると白>赤で飲酒量と肺活量に関連があったとのことです。

 なんだか走るのが速くなるためには、お酒を飲んだ方がよさそうに思えてきませんか!?

6.ランナーの飲酒スタイルの提案

 2014年に行われた一般市民ランナーに対する調査では、ランナーは喫煙習慣は一般の人と比べて少ないものの、飲酒率は一般の人並みか、女性の場合それ以上との結果もあります。

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 ランナーはシューズや練習方法のみならず、食事・サプリメント、入浴や睡眠などのリカバリーについてまで勉強されている方もおられます。
 ですが、飲酒についてはまだまだ啓蒙されていません。
 前もって飲んだ方がよいものは?どんなおつまみがよいのか?飲んだあとにおすすめの補食・サプリメントは?
 今後ランナーに向けて、そんなことを少しずつ書いてゆきたいと思います。

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