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生活習慣病のランナーはしっかり治療を~運動誘発性高血圧~

健康診断で、医師から生活習慣病を指摘されたのを機にランニングを始める方が多くいます。ミズノが行ったWEBアンケートでは、健康やダイエットのために走り始めたという方が65%という結果でした。

健康診断で生活習慣病を指摘されても、走り始めて痩せたら病院を受診しなくてよいのか・・・、なんだか走り始めたら血圧は下がってきた気がするし・・・でもそんな事はありません

今回は高血圧と運動、ランニングについて書いてゆきます。

1.運動すると血圧は下がる?~運動後低血圧(post-exercise hypotension:PEH)~

よく皆さんが血圧を測る場として、スポーツジムがあると思います。運動前には血圧を測定して、高い場合は運動を控えてもらうためです。

ですが多少高めでも、運動をすると血圧は下がったようにみえます。そう運動後は血圧が下がるんです。これを運動後低血圧~PEHと言います。あーやっぱり運動って血圧にいいんだぁと実感されると思います。

1-1.PEHとは

運動中は心臓が強く拍動し、全身の毛細血管が拡張し、全身への血液の流れが高まります。運動を終えると心臓の拍動は数分でもどるものの、全身の毛細血管拡張はしばらく拡張したままになります。それにより血圧が低下する現象をPEHといいます。

PEHは主に、有酸素運動で数時間から十数時間続く血圧の低下効果で、HIITやMICT、SITでも同様の効果がみられたとか筋トレでは効果が乏しかったなどの報告もあります。特に収縮期血圧(上の血圧)が低下します。ですがさすがにガチで長距離を走ると効果が乏しいようです。ハーフマラソンの研究では、女性や速いランナーは効果がみられなかったとあります。

有酸素運動の方がよいのですが、多かれ少なかれどんな運動でもみられるようです。

1-2.PEHの落とし穴

血圧が高くても運動すれば下がるなら、高血圧の人はどんどん運動すればいいんじゃないか!と思うかもしれません。ですがこれは、運動後の話です。

特に高負荷の運動中は、血圧が急上昇することが研究で分かっています。そしてその血圧の急上昇が、運動中の心疾患を起こすことが分かっています。「運動は血圧が下がるから良い」はそうなんですが、運動中は上昇していまうので血圧の高い患者は、高負荷の運動は避けるべきと言われてしまうのです。

2.運動中は血圧が急上昇する~運動誘発性高血圧(Exercise-induced hypertension:EIH)~

2-1.EIHとは?

EIHとは「運動の負荷により、収縮期血圧が男性で210mmHg女性で190mmHgを超える」こととされています。運動中にはそこまで血圧が上がる方がいます。

でもそんな人は珍しいんでしょ!!と思うかもしれません。韓国の研究では、30-64歳までの市民ランナー606人を調べたところ、338人(55.8%)がEIHだったとのことです。半数以上の人がEIHなんです!!

そして同研究では、高血圧の有病率が高い傾向にあったとのことです(EIHでないひと7.8%vsEIHのひと11.2%※ただし有意差はなし)。高血圧がないから大丈夫という訳ではありませんが、高血圧のある人は可能性が高いという訳です。

2-2.EIHの人は何故いけないの?

血圧200だと脳の血管が切れちゃうのでは!?と思うかもしれませんが、不思議と頭の血管は大丈夫なんです。医療文献サイトのPub-medなどで検索しても、症例は見当たりません。それより心臓がトラブルを起こすんです。血圧200で心臓が拍動しないといけないなんて、心臓には相当しんどいんです。

血圧が200になるとは、普段50㎏のバーベルを上げている人が突然80kgのバーベルを上げるようなものです。しかも心拍数も急上昇しますから、バーベルを上げるピッチもいつもの3倍に!!という事なんです。要は普段は50kgのバーベルを6秒に1回挙げていたのが、突然80kgのバーベルを2秒に1回挙げるようなものです。心臓が「もう無理!」と発作を起こすわけです。文献では心血管イベントおよ心臓突然死、死亡率の上昇につながるとあります。

さらにEIHの人は、のちに高血圧を発症しやすい(要は安静時血圧も上昇してくるということです)と言われています。そしてEIH は左心室 (LV) 肥大、心損傷、心房細動、心筋線維症につながるとされています。

2-3.EIHの治療は?

EIHが高血圧と心脳血管疾患の発症の危険因子であることが確認されていますが、診断と治療の推奨ガイドラインは提唱されていません。

現在のところ言われているのは、EIHの病態生理はアンジオテンシンIIの上昇、一酸化窒素(NO)レベルの低下、および交感神経緊張の亢進と言われています。ですのでアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とβ遮断薬がよいのではないかと言われています。また、ランニングによるフリーラジカルと酸化ストレスが心血管疾患の原因となります。その予防として抗酸化サプリメントは有用な可能性があります。

また、肥満・高血糖・高血圧・脂質異常症のリスクが増加、長期化するほど心臓イベントのリスクが上昇します。そのような方はしっかり治療をすることをおすすめします。

3.生活習慣病、特に高血圧の人はしっかり治療を

東京マラソンの過去14回の調べでは、約43.7万人中11人、つまり約4万人に1人の心停止が起きたとの報告があります。その背景には心臓の血管の動脈硬化があり、さらにはランニングによる高血圧が負担となり心臓発作を起こしたものと想定されます。

動脈硬化の原因(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙)のある人は、普段から抗酸化サプリor食品を摂取して、血圧・血糖・血清脂質はしっかり治療しておくことをおすすめします。










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