見出し画像

【移動】なぜテイラー主審は笛を吹かなかったのか。 【2016/12/3、マンチェスターシティvsチェルシーより】


*この記事は2016年12月にライブドアブログに投稿したものを移行したものです。

*ブログを作って初めて投稿した思い出深い記事です。




12/3、プレミアリーグ第14節、3位マンチェスターシティが7連勝中の首位チェルシーをエティハドに迎えた上位対決。



ホームのシティは、前半から右サイドのナバスとデブライネを中心に多くのチャンスを作り出すも、決定機をことごとく外し、オウンゴールの1点のリードにとどまった。チェルシーは次第に押し込まれる時間が長くなるも、カウンターからチャンスをうかがう。

画像2

後半に入り、リードを広げるべく攻撃に出たシティだが、何度も訪れた決定機を決めきれない。逆に手薄になった守備をチェルシーに突かれてしまう。そしてその少ないチャンスを確実に仕留めたチェルシーが3得点を奪い逆転に成功する。

このまま試合が終わるかと思ったが、アディショナルタイムにアグエロがダビドルイスに対して完全に必要のないタックルを見舞い退場。その際に両チームがもみ合いになり、セスクの挑発に乗ったと思われるフェルナンジーニョも1発退場。後味の悪い試合となってしまった。

画像1

勝ったチェルシーは8連勝で首位キープ。シティは4位に後退もチェルシーとは勝ち点差は4とまだまだ先は分からない。


さて、この試合では、両チームの戦術やハイレベルなプレーも目立ったが、残念ながら審判も目立つ形となってしまった。

このビックマッチを任されたのはアンソニー・テイラー主審。

画像3

この日のアンソニーテイラー主審は、試合中だけでなく前後半の終了後にシティサポからブーイングを浴びた。選手達もジャッジに対してイライラする場面が多々あり、また、ツイッターでは多くのシティサポから批判されていた。

確かに、私の目から見ても、この上位対決の熱い試合をコントロールし円滑に進められたとは言い難かった。

そんな彼のレフリングの中から気になったジャッジを1シーン切り取って分析してみる。


画像4


前半29分の出来事。

デブライネのロングボールが一度チェルシーボールになるが、アスピリクエタのバックパスが中途半端になり、アグエロが抜け出そうとするもダビドルイスと交錯して転倒するというシーンがあったものの…

アンソニーテイラー主審は笛を吹かなかった。

しかし、このプレーをリプレイで見てみると、確かにあまり激しく接触してはないが、ダビドルイスがアグエロの進行を妨げている感じにも見えた。さらにあの場面でアグエロが倒れなければボールに追いつきシュートに行けた可能性が高いことを考えれば、

競技規則12条、直接フリーキックが与えられる項目の中の「身体的接触によって相手競技者を妨げる」

によりファールを取り、警告もしくは決定機阻止と判断すれば赤を出してもおかしくなかったと疑問が残る。

ではなぜ、アンソニーテイラー主審は笛を吹かなかったのか。その理由は3つあると考えられる。


画像5

1.争点から20メートルも離れていた


接触があった場所と主審との距離は20メートルほど離れていた。遠くからでは争点で何が起きたのか分かりにくい。

なぜアンソニーテイラー主審は争点から離れていたのか。

ここで興味深いのが、接触の直前にアンソニーテイラー主審が走るスピードを緩めていることである。

なぜスピードを緩めたのか。

接触が起こる前、デブライネのロングボールはアグエロの元には渡らずチェルシーのDFが先にボールに追いついている。そこでアンソニーテイラー主審は、争点では反則が起こらないであろうと判断したためではないかと考えられる。

しかし、アンソニーテイラー主審にとっての悲劇は、反則が起こらないであろうと判断し走るスピードを緩めた上に、走る向きを変えようとした時に接触が起こってしまったのだ。

2つ目の理由で詳しく述べよう。

画像6

2.争点を見るポジショニングが悪く、反則かどうかを見極めることが出来なかった。

アンソニーテイラー主審の走る向きの変化に注目していただきたい。

接触する前

画像7


デブライネがパスしたボールは完全にチェルシーボールになった。そしてアスピリクエタはGKへバックパスをした。この状況からして、GKがボールを持っている所で反則は起こらないだろうと判断できるので、アンソニーテイラー主審は次の展開に対応できるポジショニングに移動しようとしていたのだ。


画像9



しかしここで予想外のプレーが起こる。

アスピリクエタのバックパスが短くなり、そのボールにアグエロが食いついたのだ。

その後ダビドルイスと交錯。


画像8

アンソニーテイラー主審は慌てて進路を変えて争点に回り込もうとしたが、時すでに遅し…

おそらくアンソニーテイラー主審はファールを取らなかったのではなく、ファールかどうか見極められなかったのだろう。

画像11

なぜならアンソニーテイラー主審の位置からだとアグエロとダビドルイスが横に並んで見えていたからである。


もし争点に回り込み、より近くで見ていたら…


画像10



白丸の位置から見た上でファールかどうかを判断していれば説得力のあるジャッジになったであろう。

しかしポジショニングが悪く、争点をしっかりと見れていなかった為に説得力のないジャッジになってしまった。

「説得力のないジャッジ」と勝手に決め付けているが、その証拠として、アグエロが倒れた後に、アンソニーテイラー主審は笛を口に持っていった。しかし笛は吹かなかった。笛を口に持っていきながら笛を吹かないのは、一番印象が悪く、選手や見ている側から不満を抱かれやすい。あのシーンでアンソニーテイラー主審は、ファールを取ろうか迷ったが、ファールを取るのをやめたと考えられる。

とはいえこのシーンで、争点から離れてポジショニングが悪くなったのは一定の擁護をすべきである。

主審は的確なジャッジをする為に、試合中に常に次の争点はどこに行くのかを予測しながら走っている。やみくもに争点に近づくだけではなく、時には今回のようにあえて争点から離れて次のプレーに備えてポジション修正をすることも必要である。アンソニーテイラー主審にとっては少しだけ不運だったかもしれない。


3.そもそもファールではない

「主審が笛を吹かなかったのだからファールではない。」「今更蒸し返しても醜いだけだ。」こう思う方もいると思うが、これらのことは承知の上でこの記事を書いている。審判を批判や私が応援しているシティが負けた言い訳をする為に書いている訳ではないのでご理解いただきたい。

今回取り上げたシーンを始め、ケーヒルのハンド疑惑や、ギュンドアンがペナルティエリア内で倒されたシーンなど疑問に残るジャッジが多かった。もちろん審判の判定は絶対だが、アンソニーテイラー主審には判定に対してもっと自信を持って、選手に対して判定を理解してもらう努力をして欲しかったというのがこの試合を通しての感想である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?