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企業と士業の関係~企業内診断士とは~

中小企業診断士の宮﨑です。
企業内診断士のリレーブログ内で恐縮ですが、実は、「企業内診断士」(企業内中小企業診断士)という言葉に対し、診断士試験合格前、私は違和感を持っていました。つまり、中小企業診断士のうち、企業内診断士という人たちは、企業内でどのような活動をする人なのか、あまり想像できていませんでした。
その後、研究会などに顔を出し情報交換したりする中で、企業内診断士の形が見えてきました。このブログのメンバーの方も企業内での活動を書かれている方も多く参考になります。前回の森さんのブログも、このような見方があるのか、と大変参考になりました。

今回、他の「企業内」士業の方々はどのような活動をしているのか見たうえで、企業内診断士というものを考えてみました。なんとなく理解したのは、

中小企業診断士は登録する上で、勤務形態の制限はない
中小企業診断士のカバー範囲は広くどの部署でもスキルを生かすことが可能
それ故に、企業との関わりに決まりは無く、関わり方が濃いものから薄いものまでグラデーション状態に分布している

つまり、イチゼロで定義づけられるものではないのに定義しようとしていたところが私の違和感の原因と思い至りました。「企業内診断士」という一言には色々な形態を含んでいて「みんな違ってみんな良い」状態なのでしょう。

以下、「企業と士業の関係」について簡単に書いてみたいと思います(間違いありましたら大変申し訳ございません)。

企業内税理士

基本的に、税理士登録した場合は、開業か税理士法人勤務かになるようです。もちろん、自宅を事務所として税理士登録し、一般企業に勤めることも可能です。
しかし、一般企業勤務の方が税理士会に所属し税理士登録するためには、勤務先の税理士業務はしない、という誓約書が必要とのことです。
診断士に例えると、勤務先には診断士として助言しない誓約を行うのと同じです。税理士業務が独占業務であるが故の厳しさなんでしょうね。
ただし、税理士の登録をしない場合は企業勤めには制約はないと思います。この場合は税理士業務ではなく税理の知識を仕事に生かす形となり、企業内診断士に近いと考えます。

企業内公認会計士

監査法人に在籍している場合も企業内とすると範囲が広いので、それ以外の方を考えます。公認会計士の一般企業勤務については特に制限は無いようです。
そもそも公認会計士の登録の要件として会計業務や監査業務など実務経験が必要で、その実務経験先としては、公共団体や、銀行など金融機関が想定されているようです。登録後にその企業を辞めなくてはならないという話は聞いたことがありませんので、在籍し続けても問題ないと思われます。
企業内公認会計士は、企業の監査や会計部門などで知識を生かした活動をしているものと思います。ただ、勤務先の会計監査は「外部監査」ではなく「内部監査」扱いになると考えます。

企業内弁護士

組織内弁護士、あるいはインハウス・ローヤーとも呼ばれるようです。弁護士登録をしても、企業所属の弁護士として活動できます。その際は弁護士業務として勤務先企業の訴訟代理も担当できるようです。弁護士登録には事務所の所在地が必要ですが、勤務先企業の所在地を事務所としてよいそうです。
企業内弁護士は、本業の訴訟代理以外にも、法務部門やコンプライアンス部門で知識を生かした活動を行っているものと思います。
なお、日本組織内弁護士協会(JILA)によると、企業内弁護士が多い業種は、商社、銀行等とのことですが、企業別では2018年6月時点の1位はなんとIT企業の「ヤフー」でした。他にもTOP20内にはLINEやアマゾンジャパンというIT企業が見られます。私もIT企業に勤務していますが、このような動きがあることは全く知りませんでした。

企業内社労士

社労士の登録形態として、「開業」「社会保険労務士法人の社員」「勤務」「その他」があります。前者2種が「開業」で、後者2種が「非開業」とされるようです。
ここでは後者2種を「企業内」としましょう。「勤務」登録の社労士は、勤務先企業の社労士業務しか行うことができないそうです。また「その他」登録の場合は、社会保険労務士の業務を社労士として行うことはできないという厳しい縛りがあります。
企業内かそうでないか、企業内でも仕事に関連するのかしないのか、について、高度に制度化されている印象です。

企業内司法書士

組織内司法書士と呼ばれるようです。司法書士として登録する場合は、事務所を設置して、業務が受託できるようにしておく必要があるのですが、企業に所属しているかどうか制限は無いようです。ただ、仕事を引き受ける準備が出来ている状態、ということは、勤務先企業と相談して、兼業や副業可にしておく必要あります。兼業で司法書士業務の受託が出来るのか、悩ましい問題のようです。
司法書士として登録しない場合は、他の士業と同様で、法律の知識を生かす活動を行うものと思います。

おわりに

診断士以外にも登録にあたって企業勤めの制限がない士業はありますが、診断士は業務の幅が広いゆえ、貢献の仕方も様々になっています。診断士に独占業務が無いことも影響しているのでしょう。

しかしながら「中小企業」の診断士、という面からは、中小企業「以外」に勤める場合(私もそうなのですが)は自ら手を広げていくしかないのでは?という新たな悩みがでてきました。
というところで今回は終わりにしたいと思います。

IT系企業に所属する企業内診断士です。