助動詞の授業。普通です。

中学2年生の助動詞(正確には「法助動詞」ですが,本記事では単に「助動詞」と呼びます)の授業実践を紹介させていただきます。
と言っても,見切り発車で行なったまだまだ穴だらけの実践です。また中2で助動詞を教えることがあればその時この記事を見て「クソつまんねーな」「でもまぁ肝は抑えてるか」みたいになるといいなって思います。

「助動詞」という単元は存在しない。

少なくとも自分の勤務校で使用している教科書には「助動詞」という単元はありません。willやcanは中1で学習して,mayとかmustとかは中2で学習して…という感じ。別にそれ自体が良いとか悪いとかは今ここで論じませんが,少なくとも体系的な文法理解を目指した時,あまり良いことではない気がします。

別にwillやcanといった助動詞と初めて出会った時に全てを教えるということではなくて,willやcanを「全然別のアイテムとしてなんとなく知ってる」みたいな状態になっている頃,mayやmustに出会うタイミングで全部まとめて整理してあげたいなという感じでしょうか。

自分は塾講師をしていた頃から助動詞の授業の冒頭で一覧表をノートに書かせます。特に高校生で「助動詞って何ですか?」って生徒が多かったので,中学校の時の記憶を引っ張りださせて,その時点で意味が分からなくてもとりあえず書かせます。

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この表のポイントを2点整理します。
① パーセンテージは「義務度」と「確信度」を横断的に理解する指標
数字自体は便宜的なものなので結構適当ですが,mustには「〜しなければいけない」と「〜に違いない」という2つの意味がある,というような何の工夫もない説明より遥かに助動詞の根源的意味と推量的意味の繋がりが感じられるのではないでしょうか。
② shallを入れていない
法助動詞の中でもshallはShall I …?やShall we …?といったフレーズでの使用がほとんどであり,根源的意味・推量的意味ともに使用頻度は低いです。そうすると過去形のshouldとの関係性も整理しづらくなります。そういったわけでshallに関しては一覧表にはあえて入れずに,(入れない理由は簡単に説明して)フレーズで導入してしまいます。

更に高校レベルだとmay wellとmay as wellも体系的に理解できるだけのポテンシャルを秘めた一覧表ですが,ここでは一旦触れずにおきます。

未来表現 = will ?

willばかりが「未来形」とか「未来表現」とかでピックアップされるけど,助動詞は基本的には(「未来」というより)「未然」を前提にする概念。「〜しなければならない」(must)や「〜してもよい」(may)のような「根源的意味」であれ,「〜なはずだ」(should)や「〜かもしれない」(can)のような「推量的意味」であれ,基本的には「まだ行われていない」ことに対して使う表現です。(もちろん,過去形にしたりhave p.p.を後ろにつけたりで過去のことにも言及できますが。)

授業実践

上の節に書いたことを活動の中でやんわりと,活動の後である程度明示的に示すことを狙って,人に何かへの注意を促したり,ある行動(の抑制)を求めたりする場面・状況をとりあえず考えてみました。
まず行き着いた先はポスターでしたが,「そんな大げさにしなくていいなぁ」と思い,結局「英語教育2.0」にお世話になり,「標識」をテーマにしました。
https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20131007/p1
単元の最初の授業では世界の変わった標識を見せ,その意味を考えて英語にしてみる活動。「〇〇禁止」とか「〇〇注意」とかでgoogle翻訳にかけても助動詞を使った表現には行き着かないのがちょっとミソ。
助動詞の導入としてこちらからは助動詞を用いた整った文を提示する一方で,すぐgoogle翻訳に頼る横着な生徒のおかげでよりシンプルな表現方法もあることに自然に触れることができました。
その後なんやかんややって,「オリジナルの標識を作ろう」となるわけですが,まぁ道路標識を作ってもあんまり幅が広がる気がしなかったので,「学校の中とかどこに貼るものでもいいよ」と曖昧な感じにしておきました。(実際に学校内に貼るところまで持っていけなかったのが残念)
生徒の作った標識からいくつかを選んで,標識の下にその意味を予想して書く欄を設けたワークシートを作成します。
分かりやすいものから,「そんなん伝わるわけないじゃんw」「でもこれ,貼る場所を工夫すれば伝わるね〜」みたいなものまで色々なタイプのものを入れましたが,この選考の作業が教材作りとしてなかなか楽しい。
複数作ってくれる生徒も沢山いて,80人の生徒から100個近い標識が出て来ました。1番典型的なのが次の写真みたいな'must'を使って意味を表せるパターン(授業でみんなにシェアする際には英文の書いてある部分は切り取りました)。これはシンプルにマスクの絵がめちゃ上手い。

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次の写真。これも'must'を使って,"We must respect black people."そもそもこれは標識という感じはしないですが,ワークシートを作成する時すぐに決めたことは,この標識を1番最後にすること,そしてこの英文を授業終了10分前までに提示するプランです。

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ここで自分が期待したのは「black peopleって差別用語じゃないですか!?」という生徒の反応。
数ヶ月前にNHKが作って問題になったアニメーションも観せたり,他の授業でも何度も黒人差別の話を聞いたり,その辺りのセンサーは敏感なようで,期待通りの反応がありました。
自分には黒人差別の問題に関する深い理解があるとは言えませんが,個人的な考えとして"black people"という言葉自体が差別的というよりは,その言葉を差別的文脈で使ってきてしまった歴史があるのではないか。”Respect all people"では,今,この時代の問題提起として意味がないのではないか,みたいな話をし,生徒らも半分納得・半分モヤモヤみたいな感じになったところで,チャイム。
きっとmust notとdon't have toをしっかり使い分けられない生徒もまだいるけど,公教育における英語授業としては悪くなかったんじゃないでしょうか?

「単元」を事前に構成して,何時間目にはどんな技能を育てて…みたいなことはまだまだ全然できていません。学校のシステム的にも単元を組みづらいという言い訳はできないでもないですが,そもそも何時間も先のことを考えるだけの余裕も見通しも持てていないのが実情です。

今まで鍛えてきた即興力でなんとかしてる感じですが,ブログに実践を書けば書くほど未熟さが浮き彫りになります。「1年目はやめなければ上等」という何処かで聞いたような聞いていないような言葉に励まされているようじゃ…

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