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あなたが余らせているものは何ですか?

はじめに

このnoteは春秋社から出版されている『小川さやか著 - チョンキンマンションのボスは知っている』を読んだ読書感想文になります。
香港にあるタンザニア人のコミュニティの話なので一見すると我々からは遠い話なのかな?と思いますが、読んでみるとなかなかに我々の普段の生活にも活かせそうな話があったりしてとても興味深かったです。
コミュニティの運営であったりに興味がある人は読んでみても良いのではないかなと思います。

注意

これから書くことは私がこの本を読んで感じたことです
私の考えが多分に入っていますので、変なことを書いてても許してピョン

人と人がおこなう「もの」のやり取りには4つあった

小田亮さんという学者さんが、人と人の間に発生する「もの」のやり取りを「負い目の刻印の存在形態」に着目して4つに分類したそうです。

負い目を持続させる「贈与交換」

お中元やお歳暮、バレンタインデーのチョコレート、結婚式のご祝儀などが贈与交換にあたると思います。
対等な関係での贈与交換は、貰ったからお返しするみたいな習慣を作りやすいそうです。
という事は、逆に対等でない関係の贈与交換は途切れてしまう可能性があることを示唆してるのかもしれません。

負い目を曖昧にする「分配」

「置いといても腐っちゃうしみんなで山分けしよう!」が分配だと思います。
誰かが自分が持ってたものをその場にいる全員に分けはじめたら、なんだか自分も持っているものを分けないといけないような、別にそうでもないような気がしてきますよね。

負い目を返済できない無限のものとして永続させる「再分配」

「いったん回収してみんなに分けるね!」というのが再分配に当てはまると思います。
この場合、回収して分ける人と一旦預けて後で分けてもらう人の間に上下というか強弱の関係が生まれてしまうような気がします。
税金は再分配だと思うのですが、「じゃあ次は僕が集めるね!」って言っても通らないですもんね。

負い目を消去する「市場交換」

お店でものを買ったりする行為が市場交換に当てはまると思います。
この場合、「お店に売っていただいた!」みたいな感情を持ちにくいように、対等な関係でものの交換が行われるそうです。
ただし、双方が大勢の中の一人の関係性になる可能性があったり、お店の人に「お前には売らない!」と言われてしまうと交換が発生しなかったりします。

あれ?贈与、コスト高くない?

そう考えてみると、多様な境遇の人間が集まる現代社会のコミュニティには贈与交換は荷が重いシステムな気がしてきます。
なぜなら、『対等でない関係の贈与交換は途切れてしまう可能性がある』からです。
かと言って、再分配をするにはみんなが持ってるものを一度預けてもらわないとダメですし、市場交換はどれだけ続けてもその場限りの関係性で終わってしまう可能性があります。
では、私たちはどうやって他の人と継続的な関係性を作っていけばいいのでしょうか?

分配に可能性を探ってみよう

贈与と再分配はどうやら「自分の行動を相手が受けてくれること」が必要で、市場交換と分配は相手の意思の確認が必要ではないのですが、市場交換には先述した「継続的な関係性を築くには不向き」という性質がありあまり向いてなさそうです。
では残された分配はどうでしょうか?

分配は、まず自分が持っているものをみんなに分け与えることで成立します。
ですので、相手の意思の確認が不要です。
そして、「じゃあ俺も/私も」と相手が持っているものを分配してくれた相手とは今後ともなんとなくいい関係性を築けそうな気がします。
そう考えてみると、なんとなく分配が使いやすそうな気がしませんか?
でも、なんでもかんでもそこにいるみんなで分けてしまうと、間違えて自分の生活を維持していく為に必要なものまで分けてしまう危険性もあるので注意した方がよいのかもしれません。

そういえば「腐っちゃうもの」を分けてなかった?

そういえば分配は、そのまま置いておくと腐ってしまったりしてそのものの価値が目減りしてしまうようなものを分けていたそうです。
でも技術が進歩した今の時代、腐るものなんてそんなにないですよね。
「はい、分配もムリー!お疲れっしたー!」
ではあまりにも華がないので、分配してもよさそうなものの範囲を拡げて考えてみることにします。

いっそ減ってもかまわないものを分けてみよう

価値が目減りしてしまうものが無いなら、分けてもなんとも思わないものを分けてみてはどうでしょうか?
例えば、実家のおばあちゃんが送ってくれた食べきれない量の果物、とか、抽選で当たった一年分のお菓子とか、読み終わって見返す予定が無い本とか、がそういうものに当てはまりそうです。

ここまで考えてみるとなんだか自分にもできそうな気がしてきました。

でもゴミはダメ!!

「分けてもなんとも思わないものを分ける」のが大事ですので、決して「いらないもの」はあげないようにした方がよさそうです。
継続的な関係性を作りたい人に、「ゴミ(いらないもの)」をあげる人ってたぶんいませんもんね。

まとめ

「もの」のやり取りには、「贈与交換」「分配」「再分配」「市場交換」の4つがあるそうです。
新しく関係性を作るには「贈与交換」か「分配」が有効そうです。
しかし、贈与交換は相手に受け取りの意思がないと成立しません。
ということで余ったものをあげる「分配」にチャレンジしてみてはどうでしょうか?
ゴミを渡してきた人と継続的な関係は、その人がゴミ好きな人以外は、築きにくいので注意してくださいね。

以上、『小川さやか著 - チョンキンマンションのボスは知っている』を読んだ読書感想文でした。
ついつい「いかに少ない手数で相手の印象に残るか?」を考えがちな忙しい現代人にはいささか遠回りなアプローチかもしれませんが、みんなの逆のプローチをした方が効果的な場面もあったりすると思いますのでよかったらぜひ分配にチャレンジしてみてください!

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大阪で音楽関係の仕事をしています。 アニメや漫画、TVゲームからボードゲームまで広く遊びが好きです。