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本当に「何者」かになりたいのか

『上京物語』という小説を読んだ。

大学進学のタイミングで上京し「何者かになりたい」「成功したい」という想いをもった主人公「ゆうすけ」。心の中で行われる理想と現実のギャップに葛藤を描く対話がメインに物語が進んでいく。

サラリーマンとして平凡な生活を送り、気づけば40歳になっていた主人公がある日、実家に帰る。そこで父から手紙を渡され、実家から東京に帰る新幹線の中で読む。その手紙を読んだゆうすけは、人生において多くの人が間違って捉えている5つの常識を教わる。

父の手紙で価値観をガラッと変えられたゆうすけが、また心新たに人生の一歩を踏み出していく。そんな”小説と自己啓発本が入り混じったような一冊”だった。

「何者かになりたい」
「成功したい」
主人公のように、こんな思いを漠然と抱いている人は今の時代、山ほどいることだろう。特に若い人に多い印象。僕にも少なからずそんな気持ちがあるだろうか。

「成功したい」の裏側にあるのは、「お金持ちになりたい」であり「お金がほしい」だ。「何者かになりたい」の”何者”にあたるのは、YouTuberだったり芸能人だったりインフルエンサーだったり経営者だったりするだろう。

要するに、有名もしくはお金持ちになりたいというのがこれらの言葉の裏に隠れている。先の読めない時代だけど、お金持ちになれば、将来お金に困ることなく過ごしていけるだろう。影響力があればスパチャとか案件とか再生回数とか、いずれにせよいつでもお金を生むのは容易だろう。こんな思惑があるのだと思う。

つまり、先の読めない時代において「お金しか信用できない」と考えているのではないだろうか。日本の未来が明るくない中で、会社は信用できない。そんな不安に煽られるようにして多くの人がこんな心境を抱いているのではなかろうか。

じゃあ、現実的に具体的に、何者かになる計画を立てようじゃないか。成功するための計画を立てようじゃないか。お金はいくらあれば安心するのか、1000万円なのか、1億円なのか、それ以上か。もし1億円ならなぜ1億円なのか。じゃあそれを手に入れるには、YouTuberだとどのくらいの再生回数が必要なのか。ジャンルを選定して、どの市場に参入するのか。
もっともっと具体的にたくさん考えていこう。

そんなことを言うと、きっと嫌な顔をされる。
「何者かになりたい」「成功したい」というのを叶えるために計画を考えているのに。

要するに、みんな本気でそんなことを思っちゃいないんだ。もしくは「楽して稼げる方法ないかな〜」というのと同じ感覚でそんな思いを抱いているのだろう。

甘すぎる。
けど幸せかもしれない。
夢や可能性の中で生きることができるから。

と、小説を読んでいろいろ考えたし、いろんな感情が湧いてきたけど、今の僕じゃあまりうまく整理できなそうだ。

この小説の最後にあったたった一つのメッセージ。「本を読め」。
とりあえずもっとたくさんいろんな本を読むことにする。

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