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吉村食ぐ人 #027 料理実験

料理が苦手な人から「料理が上手くなるにはどうしたら良いですか」と質問をいただくことがたまにある。
それに対する回答として言うのが「レシピ通りにきっちり作る」だ。
武道などにおける守破離そのものだ。
料理が苦手な人は大抵レシピ通りに作っていないという人が大半だ。
もちろんそれ以外の理由で料理が上手くできないケースもある(フライパンが大きくてすぐに調味料が蒸発する等)が、冒険せず、我流ではなくしっかりとレシピ通りに作ることが料理上手への第一歩となる。
ある程度コツが掴んできたら目分量で作ることもできるようになる。

何をきっかけだったかは失念したが、とあることを思い出した。

中学生か、はたまた小学生高学年の時だったかは覚えていないが、レシピにはない調理を行なった。
それは牛乳にレモン汁を入れてかき混ぜる、だった。
なんとなくさっぱりとした味わいになるのでは、という推測と好奇心から実際にレモン汁を牛乳に入れてかき混ぜた。

固体が生まれた。

想定外の結果に驚いてしまった。
そして「これは食べることができるのだろうか」という疑問を抱いた。

牛乳のタンパク質がレモンの酸によって凝固した、いわば即席のカッテージチーズだ。
ただカッテージチーズなど知らない少年時代の私は恐る恐るその固体物を食べた。
味わいは悪くない。
そして残った半透明の液体を飲んだ。
限りなく薄い牛乳の味で不味かった。
所謂、ホエイ(乳清)なので体には良いが、まぁ不味かった。

高校での化学に挫折するまでは理科の中でも化学が好きだった自分。
実験が好きだったのだ。
家でスライムを作りたい、と思ったことは何度あったか。
そうしたなんちゃって理系少年だった自分にとって、料理における実験的経験はこれが初めてだったのではないだろうか。

なぜかはわからないが、そんなことをふと思い出した。

改めて料理に実験的要素は日常においては不要だと思うが、こうした原体験によって得られることもあるはずだ。
とはいえ、新生活で料理を始めようと思う人には口を酸っぱくいうが、レシピ通りに作った方が良い。

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