見出し画像

新規事業開発の"本当の"課題

新規事業に関する取り組みは近年ますます増えてきているように感じます。日本国内だけ見ても、DXと関連してリーンスタートアップやデザイン思考といった言葉はかなり市民権を得ていると思いますし、世界的に見ても2019年にはISOがイノベーションマネジメントシステムの国際規格を発行するなどの背景から、イノベーションに関する取り組みが活発化していることが伺えます。

この記事では、主に大企業のクライアント/パートナーの新規事業開発を通じて出くわす、よくある"本当の"課題をまとめながら、解決アプローチとRelicのストラテジックイノベーション事業部の紹介をしようと思います。

何らかの形で新規事業に向き合っている方にぜひ読んでいただければと思います。

1. 新規事業開発の流れ

デザイン思考であれば、顧客の行動観察を行い、顧客の不満・不安・不便に共感し、解決策を検討し、実際にプロトタイプ(試作品)を使ってもらい、顧客に受け入れられるか検証していきます。

リーンスタートアップでは、まず顧客は誰なのか、本当に課題に困っているか検証し、解決策が有効なのか検証し、より広い市場に受け入れられる方策を検討/実行していきます。

不確実性を低減するために検証を重視する、という考え方は、新規事業界隈ではすでに共通認識となっていると思います。

ただ、それでも新規事業開発をうまく進められないという声をよく聞きます。

2. あるあるな課題群

よくある課題は、3つにまとめられそうです。
(1) 全社的な新規事業開発の方針や戦略がない
(2) 人材や予算などのリソースを十分に投下できていない
(3) 知見や経験が組織的に蓄積/活用されず、失敗を重ねている

の3つです。

(1) 全社的な新規事業開発の方針や戦略がない

ある特定の新規事業案の方針や戦略ではなく、新規事業そのものの方針や戦略がないために具体的な新規事業開発がうまく進まない、というケースです。

企業における新規事業の位置付けが不明確であったり、経営層が多角化を進めたいと言いながら、土地勘がないために事業案を評価/選定できなかったり、早期に結果を求めて撤退を早まったり、撤退基準があいまいで止めるに止められない事業が多く存在したり…。

企業内で新規事業開発を行っている方々は、思い当たることがあるのではないでしょうか。

(2) 人材や予算などのリソースを十分に投下できていない

人材や予算に関するお悩みも多く伺います。新規事業開発の経験者がそもそも少ない、という事情もあると思いますし、エース級の人材(が必ずしも新規事業に向いているとは限りませんが)は既存事業でガッチリ確保されたり、既存事業と同じ評価制度で新規事業開発を行っている人を評価して不整合を起こしたり、育成や支援が不十分で活躍しきれなかったり…。

さらに、不確実性の高い新規事業の取り組みに十分な予算を引き出せないこともあるでしょう。例えば、マーケティングリサーチを実行するとなると数十万円以上掛かってしまいますが「この結果、何がわかるのか、示唆が得られなかったらどうするのか」と言われてしまい、検証が進まないという状況です。

(3) 知見や経験が組織的に蓄積/活用されず、失敗を重ねている

(2)でご紹介した人材や予算などの課題が解決されたとしても、ある特定の個人の中に知見や経験が留まってしまい、他の人は同じ失敗を繰り返している、というケースもよくあります。また、ある個人に知見が溜まったと思ったら定期的な異動で新規事業を離れてしまう、というケースもあります。

3. 課題の背景

このような課題はなぜ発生するのでしょうか。ここまで読んでくださった方はお気づきの通り、先ほどご紹介した3つの課題は並列関係ではなく、因果関係があります。「1. 全社的な新規事業開発の方針や戦略が不在」だからこそ、「2. 人材や予算などのリソースを十分に投下でき」ず、十分なリソースによる十分な活動量がないので知見/経験を蓄積する必要性が感じられず「3. 知見や経験が組織的に蓄積/活用されない」という構造があります。

では、なぜ「1. 全社的な新規事業開発の方針や戦略が不在」という状況に陥ってしまうのでしょうか?

それは「切迫感不足」と「方法論不足」だと考えています。

「利益を出している既存事業が複数あれば、成り行きの状態でもすぐに経営が悪化することはないだろう。新たな試みを行ってうまく行かなかったら利益が損なわれる。稼ぎ頭の事業部からは反発が来る。少なくとも新規事業による短期的なプラス・マイナスを差し引きしたときに、大胆な方針や戦略を検討する必要がない」という「切迫感不足」の状況です。そして切迫感が出てきたときに、短期的に新規事業の成果を求められるようになる、という苦しいストーリーにも成り得ます。

また、一つひとつの新規事業の検討/検証の方法論はリーンスタートアップやデザイン志向のような形で整備されてきている一方で、企業全体の新規事業の方針/戦略という一段階大きな活動に適した方法論が不足しているという背景もあります。

4. 解決アプローチとストラテジックイノベーション事業部の仕事

私が責任者を務めているストラテジックイノベーション事業部は「どんな仕事をしているのか?」というご質問をよくいただきますが、まさに上述した課題群を解決する活動を行っています。

「インキュベーション戦略」という名で、方針/戦略の策定はもちろん、経営層との討議や仕組みへの落とし込み、さらに実行を通じた活動の見直しや追加施策の検討/実行などを行っています。

  • これまでの企業活動や外部環境を踏まえた「存在意義(パーパス)」

  • 存在意義を体現する具体的な「狙う事業領域」

  • 新規事業開発活動の「目線と時間軸」

  • 新規事業を生み出すための「実現アプローチと力配分」

  • 新規事業を実現するための「組織のありたい姿と道のり」

  • 同時に、リスキリングを含む「人のありたい姿と道のり」

  • 新規事業の「開発プロセス」

  • 事業ポートフォリオの組み換えを含む「投資/意思決定」

  • これらの活動のPDCAを加速するための「システム」 

…などを策定/設計し、実装することで「新規事業開発の本当の課題」の解決に取り組んでいます。

新規事業開発を日々実行する組織/人だけでなく、経営層や既存事業部門も絡む課題だからこそ、悩みも多く、難易度も高い取り組みです。

本日は簡単なご紹介に留まりますが、様々な取り組みを通じて発信を続けていきますので、今後もよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?