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イタリアに学ぶ産業/事業 Ⅰ. 産業編

イノベーションやスタートアップという観点では、アメリカや中国が目立ちますが、産業創出やある事業領域ではイタリアが参考になるのではないかと思っています。

単に私がイタリアが好きなだけなので「いや、これはドイツの方が進んでいるのでは…」「実はこの観点でもアメリカの方が参考になるのでは…」ということはあると思いますがあしからず…笑

ということで、今日は「イタリアの概観」「産業」といった観点で記事を書きます。そのうち、「Ⅱ」として「イタリアの事業」も取り上げます。

産業創出に携わっている方、地方創生を進められている方に参考になるかと思います。

イタリアの概観 -日本との共通点-

まずはざっくりイタリアについて見ていきましょう。日本と比較しながら見ていきます。

  • 人口は約6,000万人で日本の約半分

  • 面積は30万平方キロメートルで日本の約8割

  • GDPは2兆51億3500万ドルで日本の約4割(以上、出典

  • イタリアの企業数は約 437 万社。1企業あたりの平均就業者数は約 3.8 人(出典)。一方、日本は367万社(出典)。1企業あたりの平均就業者数は約 15.7 人(総就業者数の出典

  • 南北に長い半島で、日本と同じく地域による気候の差異が大きい

こんな特徴を持つ国です。

イタリアの産業

ある一個人の体験

外務省の情報では、主要産業は「機械、繊維・衣料、自動車、鉄鋼」となっていますが、ここではちょっとミクロな、ともすると個人的な経験でしかない話をしようと思います。

フィレンツェを観光したとき、革製品の小物屋をたくさん見て回ったところ、どこもだいたい同じような製品を置いている。職人が製品を作って、自身で売っているようなお店もあり、組織論・仕事観に興味を覚えたのと同時に「過当競争にならないのか?」と観光客ながら心配になったのを覚えています(まぁ日本の多くの観光地も同じことが言えますが…笑)。

フィレンツェにはPeroniIL BISONTEなど、世界的な革ブランドももちろんありますが、どちらかと言うと、無名の革商店の多さに驚きました。

伸縮性のある専業化

調べてみると、このフィレンツェの革産業そのものではありませんが、イタリアの産業構造のおもしろい情報が中小企業白書にありました。

平成9年 中小企業白書(関連箇所は第3部 第3章)
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1052065/www.meti.go.jp/hakusho/chusyo/H09/index.html

簡単に言うと、特定エリアの特定産業に属する特定企業が企画や生産のコーディネートを担い、その企業に紐づく形で個別企業がネットワーク化されているようです。

企画と生産をあえて別にすることで、専門性を高め、なおかつ、企業の組み合わせによってバリエーションもフレキシビリティも高めているようです。

ジェトロのレポートでも同様の内容が言及されています。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001625/07001625.pdf

先ほどご紹介したフィレンツェの革商店が過当競争なのかどうかに関しては未だに解が得られていないのですが、もしかしたら各商店は「産業集積を形成する一企業で、片手間に店先に製品を並べている」ということなのかもしれません。

ちなみに、これはこれまでの仕事で知ったのですが、東京都大田区の製造業も同じ構造があるようです。ある企業A社が顧客企業に対する窓口の役割を担い、切削加工はB社、研磨は精度や納期によってC社かD社、表面処理はE社、といったネットワークが形成されているようです。

イタリアの産業の強さ

イタリアの全ての地域の全ての産業が上記のような構造ではないかもしれませんが、数値を見てみるとイタリアの強さがわかります。

イタリアの各地域・産業の「輸出額」(1ユーロ130円で計算)は、
・フィレンツェの靴・皮革製品:3,233億円(2012年)
・アレッツォの貴金属製品:2,237億円(同)
・パルマの食品:722億円(同)
出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「イタリア産地の変容」P41
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001625/07001625.pdf

一方、日本の伝統工芸品の「生産額」は、
・織物:251億円(2013年)
・染織品:218億円(同)
・和紙:190億円(同)
出典:四季の美
https://shikinobi.com/traditionalcrafts-info#03

となっています。日本は「各地の数字の合計」かつ「生産額」であり「輸出額ではない」ので、ますます小ささが目立ちます

冒頭で触れたようにGDPで見るとイタリアは日本の約4割であるにも関わらず、地域に根ざす産業という意味では日本の方がだいぶ小ぶりです。

イタリアは地域産業を保護する法律/規則が整備されているなど、産業構造以外にも産業を後押しする要因は多くありますが、地方創生や産業創出に関してはイタリアに学ぶところが多そうです。

まとめ

今回の記事は定量的な考察に欠けていつつも、事業ではなく産業を創出する上での視点の一つがお伝えできていればと思います。

近いうちにイタリアの事業、特にアグリツーリズモを取り上げたいと思います。

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