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滞独日記「循環する生活をする」

いよいよベルリンのなかで引っ越し6回目になった。

今までの住宅のなかでも最も古いであろう佇まいに一目惚れして入居を申し込んだ壁には赤や黄色といった代々の壁色の痕跡が残っているから、100年以上この家が繋いできた人の生活を想わせる。

ここでの暮らしは自分たちがいなくなっても続いていくということを想うと、家そのものを大切にしたくなった。

この古くて居心地のいい家に住まわせてもらうといっても、塗装は剥げ生活するための品々も充分ではなく、ゆっくりくつろげる居場所もほとんどない。

ぼくらの生活が完成していないからだろう。家を育てたいとはじめて思うようになった。

時を経たものに価値はある

アルトバウと呼ばれる古い住宅の床の木目が美しい。傷があってもやさしい肌ざわり、つやっと輝く木肌に、愛おしくなる。おばあさんの笑い皺を見ているかのように心が和む。

デンマークやイギリスでも見ないベルリンっぽさは、木材の統一感がないことだろう。あろうことか床の木幅はでこぼこしている。その理由はDo it yourself 心をもつベルリーナーたちが、ありあわせの道具と材料で家に手を入れてきたからだろう。これはすなわち、ブリコラージュしているということだ。

思えばゲルスワルドのzumlowenでもおなじように、整いすぎない居心地よさを感じた。ベルリンの人々は、持ち合わせと組み合わせで家を育て生活しているのではないだろうか。

循環する生活をする

次の人の生活が続いていくことを心に留めて、大切に扱い、育てること。壊れたら手を入れ、使ったら使う前の状態に戻し繋げること。

たったそれだけのことでこの街は循環している。そのときに必要な人がモノも住まいも使い、おなじように継がれていく。

近年はインターネットによって個人間で物品を流通させやすくなったが、ベルリンは蚤の市やマーケットプレイスといった個人間での中古売買が盛んだ。

循環する流れに身を任せ、ここにあるもので家とともに生活を育てていきたい。エンジニア思考で、生活を設計することも大切だと思うけれど。

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