ブランドが目指すべきは「競合と比較されないこと」


どんな商品・サービスであっても「競合の商品・サービス」が存在する。これが消費者にとって意味することは、「別にこの商品・サービスではなくても良い」ということである。企業がブランディングに力を入れるのは、「別にこの商品ではなくても良い」から「この商品でないとダメ」と思われるためでもある。また、「この商品をもっと売るためにどうするべきか」という問いは、「競合よりも自社が選ばれるためには何をするべきなのか?」という視点から考えると方向性が見えてきやすい。今回は「競合とは何か?」「自社と競合の理想の関係とは?」について書いてみたい。

1. 競合とは何か?

ある商品にとっての「競合」はどう定義されるべきだろうか。色々な定義があるかと思うが、自分が使っている定義は下記。

「競合」の定義
・・・顧客がその商品の代わりに選ぶ可能性が高い商品・サービス

例えば、「お~いお茶」の競合は、綾鷹、生茶などである。さらに、いろはす、炭酸水、なども競合かもしれない。もっと広げると、ウォーターサーバーも競合かもしれない。「競合」という言葉は、直接的な戦いを連想させる言葉であるため、同じカテゴリでバチバチにシェアを奪い合っている商品・サービスのみを競合と捉えてしまうことは非常に多い。しかし「直接競合」に対する「潜在競合」という言葉もあるように、チャンスやリスクを考える上では「顧客にとっての競合」を広く考えることが大事。例えば、「駅の売店でガムが近年売れなくなった原因が、実はスマホの台頭だった」という話がある。つまり、「暇つぶしのためにガムを買って噛んでいた時間」が「暇つぶしのためにスマホを見る時間」に変わってしまったということ。「ガムの競合がスマホ」という考え方は、だいぶ飛んだ感じがするが、消費者にとっての「他の選択肢」をそのくらい広く把握しておくことは、マーケティング上は非常に重要。

2. 自社と競合と理想の関係とは?

究極の理想は「消費者から競合と比べられないこと」(つまり独占)である。例えば、Google検索は、他とは比べられないものである。消費者からすると「これじゃないとダメ」なのである。つまり、「競合がいない」「競合と比べられない」存在である。これは、ブランディングが目指す究極の姿である。しかし実際には、ブランド力があると言われる商品・サービスでさえも「競合」はほぼ必ず存在する。例えば、ディズニーランドですらも「消費者から競合と比べられない」ほどではないので、実際には他の選択肢と普通に比べられてしまう。例えば、東京に住んでいる人は東京ドームシティーに行く可能性もあるし、スポッチャに行く可能性もある。中国からくる人は、ユニバに行く可能性がある。そこで、次に目指すべき状態は「競合にはない自商品のユニークなポイントが消費者に伝わっており、それが魅力的だと思われていること」である。ディズニーランドは他にないユニークなポイントが伝わっている「強いブランド」なので、ユニバ等と比較はされるものの、ディズニーランドが選ばれる可能性はかなり高い。ここで、「東京在住のカップルがテーマパークで一日中デートしたい」というケースを考えてみる。すると、この場合は他のどことも比較すらされず、ディズニーランドの一択になりそうである。つまり、「顧客」と「顧客の目的」次第では「消費者から競合と比べられないこと」という理想状態を達成することが可能だということ。これはすごく大事な視点。ビジネスシーンでは「顧客」は「ターゲット顧客」「フォーカス顧客」、「目的」は「カテゴリ」「シーン」「用途」などと言われることも多いですが、それらで構成される「勝負の土俵」を工夫することができれば「消費者から競合と比べられない理想状況を達成することが可能」なのだ。「競合にない差別化ポイントを!ユニークか強みを!」みたいな話は、分かりやすいようで分かりづらくて、誤解を生んでいるケースも結構あって、例えば「競合よりも重量が○%軽いこと」を差別化と考えてしまうことなどが挙げられるが、それはあまり意味ないことが多い。その理由は、その○%で消費者は比べないし、それが理由で決まることはないから。また、「ユニークであること」を「競合にない特徴をたくさん持っていること」と捉えてしまうケースもあるがそれもほとんどの場合は誤解。「競合との差別化」の本質的な狙いは「ある人のある目的に限定したときに、競合と比べられない存在になる」こと。

3. まとめ

1. ある商品にとっての競合とは「顧客がある商品の代わりに選ぶ可能性が高い商品・サービス」
2. 自社と競合と理想の関係は、「消費者から競合と比べられないこと」
3. ただ実際には、消費者から競合と比べられることがほとんどなので、次に目指すべきは「消費者に競合にはない自商品のユニークなポイントが伝わっていること」。これは言い換えると「ある人のある目的に限定すれば競合と比べられない存在になる」こと。


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