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台風・豪雨などの自然災害の脅威を避けることはできないのか~台風の制御・活用に向けた取組み

最近は異常気象による自然災害が頻発しています。しかも、我々の子ども時代よりも、災害の規模が大きくなっている印象が強く、被害を受けられた方の1日も早い復旧を願うばかりです。

ちなみに、2023年の台風発生件数は16個と、2020年、2021年の22個、2022年の25個よりは少なくなっていますが、日本全国に大きな爪痕を残していることには違いありません。

台風や集中豪雨による大きな被害の発生に、何とかならないのかという想いを強くするのは私だけではないと思います。繰り返し発生する自然災害を防ぐ方法はないものでしょうか?

自然災害が発生する大きな原因の一つに気候変動があります。その中でも、地球温暖化は自然災害だけではなく、あらゆる方面に大きな影響を及ぼしています。

自然災害の現状を検証するとともに、人類にとって画期的な発想である台風の制御・活用に向けた取組みについて説明していきます。


気候変動による大災害

直近の10年間で世界の平均気温は、約1℃上昇しているといわれています。ただ、これはあくまで平均であり、シベリアが観測史上最高の気温38℃を記録していることが報告されています。

また、高温による干ばつが深刻化し、森林火災が助長されるなど温暖化の影響はとどまるところを知りません。

今、地球で何が起きているのでしょうか? 
環境問題は喫緊の課題であり、次世代に先送りして良いものではありません。現代に生きる我々の責任でもあるのです。

気候変動による自然災害だけではなく、水不足、農作物の不作、飢饉なども引き起こすことを忘れてはなりません。気候変動による「気候難民」は、世界中で増加しています。

地球温暖化の影響

「10年に1度の・・・」という天気予報が珍しくなくなりました。梅雨時期から続く猛暑、迷走しながら日本列島を縦断する台風、線状降水帯による集中豪雨・・・。近年の異常気象は我々の想定をはるかに超えています。

温暖化の進行で、海水の表面温度が上昇すると水蒸気が増え、集中豪雨をもたらすことになります。2021年、中国やオーストラリアでは豪雨の影響で、地下鉄の浸水や多数の避難民を発生させました。

日本でも2020年、長野県や高知県で集中豪雨が発生し、多いところで2,000ミリを超える降水量を記録しました。年間降水日は減少しても、大雨の頻度が増しており、集中豪雨となる傾向が強まっています。

また、熱帯低気圧が発達した「台風」は、日本の南海上で多く発生しています。地球温暖化による海水の表面温度の上昇が「勢力」の強い台風の発生を加速させているとの指摘がされています。

海面上の温度が上がり、水蒸気が増えると、それだけエネルギー源が増えて台風の勢力が強くなるというメカニズムです。

「災害大国」日本と呼ばれる理由

日本は「災害大国」と呼ばれるほど、諸外国と比較しても自然災害の多い国として特に有名です。たとえば、地震に関しては世界中で起こる地震の10~15%は、日本で起きているといわれています。

では、なぜこれほどまでに日本では自然災害の発生が多いのでしょうか?
その理由は次のとおりです。

・日本のある位置:日本列島はプレートが多い場所に位置する
・気象条件:高温多湿のアジアモンスーン気候に属する
・地形:山地や丘陵が国土の約70%を占めている

これらの要因に加えて、近年では地球温暖化の影響で、台風や集中豪雨が頻発し、安定的な日常生活に大きな影響を与えています。

線状降水帯

さらに最近では「線状降水帯」という言葉を耳にすることが多くなりました。以前からこの現象は把握されていたのですが、気象レーダー技術の発展により、2014年の「広島豪雨」から使われるようになりました。

大雨をもたらす積乱雲が次々に発生し、上空の風の影響で線状に連なった状態をいいます。長さは50km~300kmにも達し、長時間と広い範囲での集中豪雨となります。

「ゲリラ豪雨」は、一時的な大雨をもたらすのに対し、「線状降水帯」は、同じ場所で積乱雲が発生し続け、長時間の大雨をもたらします。

日本における集中豪雨の原因は、「線状降水帯」によるものが60%を超えているとのことです。特に、南日本の発生率が高く90%にも達するといわれています。

今年の主な台風・集中豪雨

「災害大国」日本では、近年も台風、集中豪雨、地震などの自然災害が頻発しています。今年も例外ではありません。

たとえば、台風7号は2023年8月15日、和歌山県に上陸、兵庫県明石市に再上陸し、兵庫県を北上し、日本海に抜けました。

この影響で近畿地方、中国地方に記録的な大雨を降らしました。8月16日までに、奈良県や和歌山県で600ミリ近い降水量が記録され、負傷者や家屋の床上浸水など大きな被害をもたらせました。

新幹線も大混乱

日本が世界に誇る鉄道事故による死者ゼロの「安全神話」がある新幹線も、台風7号上陸の影響で大混乱しました。東海道・山陽新幹線の混乱ぶりをまとめました。

【8月15日】名古屋~岡山間の計画運休。
【8月16日】始発から通常運転。静岡県内の大雨により、三島~静岡間の運転を約5時間半見合わせ。この影響が山陽新幹線を含む全線に拡大。直通運転をあきらめ、新大阪での折り返し運転を開始。

各駅に停車する車両が渋滞し、身動きが取れなくなる。16日20時に博多を出た「のぞみ」の新大阪到着は午前2時。お盆の帰省ラッシュと重なり、各ターミナル駅はラッシュ並みの混雑。

【8月17日】日付が変わりJRは、始発までの時間を過ごすための「列車ホテル」を東京駅と新大阪駅で準備。乗り切れない人たちがホームなどにごった返す。午前5時前後の在来線の始発電車の発車を待つ。

実をいうとこのカオス状態の中に、私の娘と6歳、3歳の孫二人が巻き込まれました。初めての経験で眠い目をこすりながら文句も言わずに、母親にへばりつき、この異様な光景に圧倒されていたとのこと。

ホームに立っていると親切な方が、自分の荷物の上に座らせてくれたそうです。とてもありがたいことです。仕事で大阪に帰る娘を、やむを得ないと送り出したことを大変後悔しました。

その後、娘たちは午前5時の在来線の始発電車に乗り、自宅へ帰り着いたのは6時だったといいます。博多から「のぞみ」に乗り新大阪まで、実家を出てから実に約12時間の旅でした。そのまま、娘は仕事に出かけたそうです。

午前6時半に前日の下り最終列車が新大阪に到着。午前8時以降に上下線とも運転再開するも、ダイヤの大幅乱れは改善できないまま。影響を受けた利用者は約50万人にも上りました。

今後の課題

今回の新幹線の大混乱には、大きな課題が残りました。

JR側としては、利用者にとって必要な情報のきめ細かな提供、計画運休を含めた運行計画・管理の見直しなど想定外の自然災害に対する危機管理能力を高める必要があります。

娘の話ですと、途中何度も駅などに停車しましたが、停車理由や停車予定時間、到着予定時間などの説明のアナウンスはほとんどなかったそうです。

乗務員による対応の差があったのかもしれませんが、タイムリーな情報提供に問題があったことは間違いない事実です。

また、利用者としても台風などの悪天候の際には、旅行を控えるなど自分で自分の身を守る意識を向上させなければなりません。すべてJR側の責任とする無責任さからは脱却すべきです。

台風の制御・活用に向けた取組み

私はかねてより、甚大な被害をもたらす自然災害を避ける方法はないだろうか、と考えていました。AIやロボットが何でもやってくれる時代の技術力があるのだから、台風や集中豪雨の制御ができないわけがないのです。

たとえば、台風が来ないようにブロックするとか、台風の進路を変えるとか、勢力を弱めることができないものだろうか、と真剣に考えていました。

家族や周囲の人に話しても馬鹿にされていましたが(笑)、いやこの無謀とも考えられることの実現を目指している研究者たちが存在したのです。

それがこれから紹介する「タイフーンショット計画」であり、台風を制御するだけではなく、台風のエネルギーを活用した発電システムを構築する取組みです。

台風制御に関する研究は近年に始まったものではなく、1940年代からアメリカで行われています。日本では1961年に施行された「災害対策基本法」第8条第2項第9号に、「台風に対する人為的調節の実施に努めなければならない」と規定されています。

タイフーンショット計画の概要

毎年甚大な被害をもたらす台風や集中豪雨。この自然の「脅威」になす術がなく、なすがままの状態で大きな苦悩に耐えてきた人類。

毎年世界で発生する自然災害の経済損失は、数千億ドルにのぼるとされ、台風をはじめとする自然災害への対策は喫緊の課題となっています。

2050年を目標に、この毎年強大化する台風を人為的にコントロールし、さらに台風のエネルギーを活用した発電システムを構築することで、この「脅威」を「恵み」に変換する壮大なロマン計画です。

2021年10月、横浜国立大学に台風専門の研究機関「台風科学技術研究センター」が開設されました。産官学が一体となって、まだ解明されていない台風のメカニズムを研究し、専門性の垣根を越えた研究者が集結しています。

政府も内閣府の「ムーンショット型研究開発事業」の目標に「2050年までに、台風や豪雨を制御し、風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現する」と掲げ、本格的な取組みを開始しました。

これまで台風制御については、著名な研究者の発言がありますが、単なる夢物語としか受け取られませんでした。しかしながら、産官学一体の研究体制が整ったことで、大きな一歩を踏み出したといえます。

台風制御の具体的手法については、いくつかの選択肢がありシミュレーションを含めて、現在研究が進められています。

たとえば航空機によって、水や氷、ドライアイスなどのインパクト物質を台風の中心に散布して暖気を冷やすことで、エネルギーを弱めることができるとしています。

この計画が実現すれば、台風の進路を今以上に正確に予測し、防災インフラなどが耐えられる程度の強度に台風を制御することが可能になります。

自然災害に悩まされていた世界中の日常生活が一変し、豊かな自然を育みながら、安心で安定的な生活や生産活動に取り組むことができると期待されています。

まとめ

地球温暖化による気候変動により、毎年発生する自然災害の被害が深刻化しています。日本においても台風や集中豪雨により、人命、財産、産業、交通など各方面に大きな損害がもたらされています。

ここで生まれたのが、台風の人為的コントロールや発電への活用を可能にする「タイフーンショット計画」。2050年を目標に、専門分野の垣根を越えて人類の前人未到の夢を実現すべく具体的な研究が進められています。

今後は技術的な課題を克服するだけではなく、政府はこの計画が日本社会に幅広く受け入れられるように、定期的な報告や進捗状況をていねいにわかりやすく説明し、国民の理解を得る必要があります。


 

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