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ええとこの子

「芦屋出身です」という自己紹介に子供の頃からアレルギー反応がある。「HEY! HEY! HEY!」や「ダウンタウンDX」のゲストが「私お二人と同じ兵庫県出身なんですけど、芦屋でー」と言うと、ダウンタウンの二人が「うわー、出たー。勘弁してくれー」というような反応をするのはお決まりになっている。姫路市民である僕はあれと全く同じリアクションをテレビの前で取ってきた。姫路と尼崎は距離こそあるものの、姉妹都市協定を結んでもいいくらい同じ雰囲気を持っている街だと認識してもらって構わない。実際に姫路のスター松浦亜弥がゲストで出た時、ダウンタウンの二人はとても安心しているように見えた。

芦屋=金持ちたちの街というのは常識で、汚いとこ育ちの僕とは全く違う人たちの集まり。でも同じ兵庫県民というジレンマ。幼いながらも、芦屋に対する謎の反骨心は昔から備わっていたのだ。
芦屋の人たちとは関わってはいけない。というか、僕の人生のレールでは芦屋の人と交わることがないだろうと鷹を括っていた。市町村別で全国5位の平均所得だ?ふん、しょーもないしょーもない。何が起こるか分からない低所得ゾーンの方が刺激があって楽しいに決まってるだろ。安定なんてつまらないよ。安定し続けることの方が危険だと覚えておいてほしい。聞いてるか?芦屋市民の皆さん。

今月から芦屋に住むことになった。自分でも驚いている。まさか僕が芦屋市民になるだなんて。HEY!HEY!HEY!を見ていた頃の松本少年が知ったらどう思うだろうか。結局お前もそっち側だったのかと幻滅するのか、それともグーサインを送ってくれるのか。

僕は金持ちでもなんでもない。奥さんは働けないから世帯収入だってカツカツだ。それでも芦屋には住める。つまりはそういうことなのだ。ただこれは卵が先か鶏が先か論争と同じで、芦屋に住むことでこれから金持ちロードを歩むことになるかもしれない。閑静なこの街で、自分はモンスターシティ姫路出身であることを自覚しながら、謙虚に暴れていきたい。

本格的な引越しはまだだが、今日は隣の部屋に挨拶に行った。70代くらいのおじいさんがランニングシャツ一枚で出てきた。僕が一通り挨拶すると、おじいさんは「こんな格好ですいません」と、胸元を隠しながら照れくさそうにしていた。上品だ。

サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。