奉り

権力とか忖度は、それを振り回している当事者でなく、周りによって作られるものだと思っている。

昨年のジャニーズ騒動、会見において矢面に立たされたのはプレイヤーとして会社を支えてきた東山紀之氏と井ノ原快彦氏であった。
井ノ原氏が会見の中で振り絞るように訴えた言葉が忘れられない。

「昔ジャニーさんがこう言ったから、メリーさんがこう言ったからっていうのを守ってきた昔のタイプのスタッフがいたことも事実」

「何これ?なくそうよっていうのはたくさんある。毎日言ってる。でも忖度って急に無くなるものじゃないと思うんですよ」

これは日本人ならではの腹の探り合いによって起こったことだと思う。
なるべくぶつかり合うのを避け、空気を読むだけで仕事を楽な方へ楽な方へ完結させようとする。
僕が働いている会社でもそういうことがよくある。「本当はAしたいけど。社長がダメって言うだろうな」と腹にしまっていたけれど、ある日突然「今日からAをしようと思います!」なんて言い出すことがたまにあるから、やっぱり話さないとわからない。トップの人間は毎日いろんな決定をしているから、意外と覚えていないものだ。だんだん偉くなって変わっていくのは偉くなったその人ではなく、意外と周りなのかもしれない。

ネット界の重鎮、DMMグループの亀山会長が一般読者からの悩み相談に乗る企画がかつて文春オンライン上で連載されていた。
「権力の一番上手な使い方は使わずに持っておくことだ」と亀山氏は語っていた。権力にも使い所があるんだと。何度も何度もきれるカードではないらしい。

下からも意見できるボトムアップがあるかないかで、良い組織になれるかどうかが決まる。そこで僕が憂うのは阪神タイガースのことだ。
岡田監督は確かに名将だと思う。野球を知っている。でも、誰も何も言えない雰囲気があるような気がしてならない。たとえ変な采配をしたとしても「岡田監督だから何か考えがあるんだろう」と思って、他のコーチが意見を言えない。いっそのこと向こう見ずの僕がベンチに入りたい。

「監督、ここノイジーちゃいますよ、豊田ですよ!」

凍りつくベンチ。

「おーん」

ほら、意外と言うこと聞いてくれるだろ。

サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。