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「行ってみたい外国」というお題

「行ってみたい外国」というお題は否応なしにテーブルが盛り上がる

ぜひ今日会う友人と話してみてほしい。「外国行けるならどこ行きたい!?」と最高潮のテンションで聞くのだ。「行ってみたい」と思いを馳せるだけならタダだし、バチも当たらない。

「なぜ行きたいか」という部分にはそのひとのアイデンティティが詰まっている。

進歩と調和の最先端を走るシンガポールでテクノロジーを感じたいのか、『外国の基本のキ』とも言えるアメリカなのか、神秘に身を投じたいから北欧系なのか。

投資にそのひとの価値観は出ないけど消費には出る。
「どの銘柄買う!?」なんて株の話をしても人格は見えてこない。それは理由のほとんどが「儲かるから」でしかないからだ。だけど、「どの国を訪れたい!?」には絶対に理由がある。

それに「行ってみたいとこ」の話が楽しいのは予算や時間の余裕を気にしなくていいからだ。実際に仕事があってムリ、お金がない、言葉が不安、治安にビビる。こんなことは気にしなくていい。

ただの「行ってみたい」という与太話だ。「現実的に行けるとこ」の話ではない。「行きたい!」と吠えるだけなら月でも深海でも21世紀でもアリだ。リアリティなんていらない。

そんな「行ってみたいとこ」についてのトーク。これはもしかしたら仕事や出身地、趣味の話なんかよりもよっぽど相手のことを知れるんじゃないだろうかと思う。

実際にやってみると「お嬢様だと思ってたけど、案外モンゴル!?」なんてことがあった。

そのお嬢様は「紛争地帯」とも答えていた。
「報道なんかじゃ真実は分からないから。戦争が悲しいことは分かるけど、私たちはそれがどれぐらい非道ひどいことなのかはまったく分かっていないもの」とのことだった。
「ご趣味は?」なんて話では出せないコクだ。

灰色の空の下

かく言う自分はイギリスである。

シンプルにビートルズっ子なのだ。
僕の音楽を作り続けているアイディアの源泉はいつもビートルズにある。昔から今に至るまでずっと指針にしている。

バンアパ、ブルーハーツ、グリーンデイ、レイジ、メタリカ、レッチリ、ニルヴァーナ、オアシスと好きなバンドは多いし、いろんなものからインスパイアされてきて僕の音楽はできている。

この最新曲も「アメリカか?」と聞かれたら100%イギリスである。
アメリカにもいろんなバンドがいるが、やはりエアロスミス、Mr.Big、リンキンパークみたいな『壮大なスケールとダイナミックさ』が多くのひとの感じる「アメリカ音楽」じゃないだろうか。

その点、イギリスは逆方向を行く。楽器の数も少なめ、曲も短め、キーも低め。ジャンルや違いもあれど、比較的「小さくて鋭くて、定量的に測れない魅力」で勝負している。

オアシスの楽曲なんかもアメリカ人がプレイしたならもっと荘厳になりそうなものである。

面白い現象がある。
「いろんな音楽の真似っこをしてきたけれど、定期的にビートルズに舞い戻ってしまう現象」だ。

地球史上最高のバンドだから当然なのかもしれないが、ビートルズには何というか強力な磁力がある。あの連中がS極で、我々人類がN曲のような引き寄せられ方だ。世界中の音楽業界の新星が溢れているのに、何年かに一度のタームで1965年に引き戻されてしまう。

そんな彼らが生きていたイギリスという国。行けるか行けないかは置いといて、選ぶならばソコなのだ。

「ジョン、ポール、ジョージ、リンゴが吸っていた空気を吸ってみたい!」
そんな気持ちは10代の頃からあった。違う学校の友だちの修学旅行の行き先が、イギリスだったときは心底羨ましかった。高2のときだった。

文字が全然書けないアビーロードのボールペンを土産にもらった。

「こ、これ……ロンドンの現地のアビーロードスタジオで買ったのかよ……!」と僕はマンガのようにワナワナと震えた。「いや、ただの空港で買った」という報告と共に手渡されたソレを、僕は今も家宝にしている。ビートルズの絵が描かれているが病的に似ていない。

ペニーレインやストロベリーフィールズ、ジュリアの家。歴史的名曲の『聖地巡礼』はもちろんだが、アビーロードやBBCやゲットバックのライブの現場は死ぬまででいいから一度見てみたい。

5年暮らしても飽きない気もする。リバプール以外にもロンドン、マンチェスター、シェフィールド、スコットランドと行きたい場所が多すぎる。書いてるうちに本当に行きたくなってきた。

写真でしか見たことのない灰色の空の下歩いてみるだけで、中学生のときの、神戸に住みつつ大阪や京都にすらなかなか出してもらえなかった自分と、ヒースロー空港からうちにやってきたあの書けないペンも成仏する気がするのだ。

それにしてもイギリスは良いバンドが沢山いる。ディープパープル、クイーン、ツェッペリン、ストーンズにクラッシュ。

馴染み深い90年代以降もオアシス、アークティック、レディヘ、コールドプレイと勢揃いだ。
この根源的理由の一端には「ビートルズを生んだ国だから」と考えるのはイギリスびいきが過ぎるだろうか。


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