時間の流れ方が違いすぎて困る

「日本の法案成立がなぜ遅いのか?」というワイドショーを見ていた。アル中病棟の待合室にて。

一般の世に広がる時空の流れが流水ならば、病院の中における時間の体感は汚泥かと思うぐらいスローだ。鉄門一つを隔てると、何も変わらずどこへも進まない、進むことのできないグラウンドが広がっている。ここで「正気を取り戻す」という競技をみんながやっている。

例に漏れず、僕もそこの選手なのだが、たまに「世間と俺たちどちらが正気なのか」という気にはなる。
待合室には泥酔に飲まれ、大切なものが大切じゃなくなってしまった連中が集っているが、TVの中のやつらも酔っ払ったようなことばかり言っているではないか。

街を見渡しても同様だ。正気の人間なんてほとんどいないように見える。

ワイドショーと同様に、あれが遅いこれが遅いと急いでいる。首都高、新宿のホーム、時短営業の終わり。
東京には「早くしろよ」があふれている。僕だって「のんびりいこうよ」などとは言わないが、吠えたところで一ミリも早くならないものに対して絶叫しているひとを見ると軽く引く。

おそらくみんな心が今ではなくて未来に向かっているのだと思う。数分後、数時間後にワープしてしまっている。実際の自分は今現在にしかないのに、心ここに在らずなのだ。

そういう意味では病院の中はいい。精神の病棟には未来も過去も無いからだ。今現在しかない。
もちろん「今、輝いているの?」と問われたらNOだ。ただ、今ではある。今現在、全開に腐っているのだ。

ここからしか見れない風景がある。かげない腐臭がある。

たまに「いつまでここにいればいいんだろう」と不安にはなる。つい未来に心が飛んでいってしまう。僕には未来など無く、今しかないのに。

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