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冒険のお約束

映画「グッバイ、ドン・グリーズ!」公式サイト (donglees.com)

映画『アンチャーテッド』 オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ (uncharted-movie.jp)

最近、立て続けに冒険モノの映画を2本観た。
1つは少年たちのひと夏の冒険を描くオリジナルアニメ映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』。
もうひとつは歴史に詳しい類まれな身体能力を持った主人公が、師匠と共に財宝を求めて冒険する様を描くゲーム原作の映画『アンチャーテッド』だ。
結論から言えば、私は、前者がハマらず、後者は普通に楽しめた。
この記事ではなぜ私がドン・グリーズにハマらなかったのか、その理由を冒険モノという視点から考えたことをメモ的に書いていきたい。

・冒険という語りの手法
冒険物語の流れは大体こうだ。
1:主人公、冒険の決意をする
2:色々な所を旅しながら困難(敵)を乗り越える
3:宝を手にする or 大切なモノを手に入れる(友情・恋愛など)
『アンチャーテッド』はまさにこの冒険の型にハマっていた。主人公は兄を探すために冒険の決意をし、謎解きやアクションを交えつつ困難を乗り越え、最終的に仲間との信頼を手に入れる。
それに対して『グッバイ、ドン・グリーズ!』は確かに冒険の要素はあったもののそれに対する必然性が少なかった気がする。山火事の犯人に仕立てられた疑いを晴らすため、墜落したドローンを探しに行くという目的だったが、本当に必要な過程だったのだろうか。確かに主人公たちは最終的にかけがえのない友情を手に入れることができたが、監督が本当に描きたかったのはその後の奇跡のような偶然の出来事、人生の巡り合わせの部分だったと思う。つまり、冒険が過程として形骸化してしまっていて、物語の説得力を損ねているのではないかということだ。ただし、その代わり監督のやりたいことは描けているのかなと思う。

お約束という型
冒険という型にハマっていた『アンチャーテッド』と冒険という過程は辿っていたものの、シーンの繋ぎの手段となってしまっていて説得力を欠いた『グッバイ、ドン・グリーズ!』、今回の私の見方では前者は定番のハリウッド映画という感じで楽しめたが、後者は感動する場面はあったもののさほどハマらなかった。『グッバイ、ドン・グリーズ!』の風景の美しさやキャラ同士の友情描写は素晴らしいものがあった。しかし、そこに至る過程に説得力が足りなかったと思うのだ。
逆の見方では、『アンチャーテッド』の方がありきたりなアクション映画の要素ばかりでインディジョーンズの2番煎じのようでつまらないという感想もあるかもしれない。しかし、今までの冒険・アクション映画のお決まりの描写があったからこそ、そこそこ楽しめてしまう映画になっているともいえる。ちょっと脳筋で頭の悪い悪役、最後に悪役に天罰のような出来事が起こるなど、もはやハリウッドあるあるといってもいい紋切り型の描写も多い。

・一般性と作家性のトレードオフ
ある程度の物語のお約束に従って一般的な説得力を持たせるのか、監督の描きたい描写を優先して作家性を出すのか。
このトレードオフの関係のバランスを取りながら、興行的なヒットを飛ばし、売上を上げて次回作に繋げる脚本を作る。
改めて商業として創作をやっていくということの難しさを今回冒険モノの2作品を比べて感じた。

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