現代人が身体や心の不調を抱えるのは「遺伝子」が理由かもしれない|前編
こんにちは。ニシムラタクミです。現代に生きる人たちは、ストレス社会の波に揉まれて、体もしくは心の病気であったり、謎の不調に頭を悩ませることも少なくないと思います。
「なんだか調子が悪い」、「体がだるい」、「元気がでない」といった感覚が続くのはやっかいで、そのような状態では人生の楽しみが半減しているといっても過言ではないと思います。僕たちが人生を楽しむためには「健康」が不可欠です。
これらの病気や体調不良の原因は様々だと思いますが、その1つの原因として、僕たち人間を設計している遺伝子が、現代の生き方に適応できていないといったことが挙げられます。
それでは、現代に生きる僕たちが心も身体も健康に生きるためには、どのようにすればいいのかを紹介していきます。
この記事では前編として、「身体の健康」について紹介し、次の後編で「心の健康」について紹介していきます。
文明によって人は不健康になった?
科学や技術が発達して、便利に生活できるようになった一方で僕達が失ったものもあります。その1つが「健康」です。
もちろん、医療技術の発展により、平均寿命が伸びたり、治らなかった病気が治ったりしていますが、それとは逆に現代ならではの病気も増えています。
その1つが「肥満」です。アメリカ疾患管理予防センターによれば、1950年代の肥満率は10%を下回るレベルでしたが、2010年代には35%と大幅に増加しています。
その理由として、社会が豊かになり、人々が食べ物(つまりカロリー)を簡単に摂取できるようになった、ということが思い当たると思います。
もちろんそれも正しいと思いますが、根本的な原因は僕たちの身体の仕組みが現代の生活習慣に適していない、といったところにあるのです。
人類の歴史において現代の食生活は異常である
人類の基礎となる生物が誕生したのは約680万年〜700万年前と言われています。そこから農耕生活をして米や小麦を食べるようになったのが約1~2万年前です。
つまり、長きに渡って狩猟採集生活(動物を狩ったり、野草、木の実などを採集して食べる生活)が行われてきており、農耕生活で炭水化物を主食とした生活は、人類の歴史においてほんのごく最近の一部でしかありません。よって、人間の身体はどちらかと言うと狩猟採集生活に適した構造になっていると考えるのが自然です。
狩猟採集の食事に適した身体に対して、現代の食生活は適合できていない部分があり、「肥満」や「生活習慣病」が珍しものではなくなってきているのです。
身体の疲れの原因は「炎症」である
歳をとっても健康を維持していて、日々のパフォーマンスが低下しない高齢者の方々は一定数います。そのような人達はどのような共通点を持っているのでしょうか。
慶應大学医学部が、そのような「超健康な高齢者」の秘訣を調査したところ、健康的な高齢者に共通するものがありました。それは体の炎症レベルが低いことです。
では、そもそも炎症とはなんのことなのか。炎症とは、体が怪我や病気などのなんらかのダメージを受けた際に免疫システムがダメージと取り除こうと働いた時に出る症状のことを指します。
例えば、アレルギー反応は、外から入ってきた異物に対して免疫システムが過剰に反応することにより、目の充血、かゆみ、鼻詰まりなどが、炎症反応として起こっている状態ですし、風邪によって発熱が起こるのも免疫がウイルスと戦って起こる炎症反応です。
それであれば、「普段から怪我や病気に気を付けて生活すれば良いのか?」いった単純な話で済めばいいのですが、現代においてやっかいなのは「自分が気づかないところで発生している炎症」です。
内臓脂肪があると炎症は発生し続ける
消費するカロリーよりも摂取するカロリーが上回ると、余ったカロリーは「脂肪」として体に蓄えられます。体につく脂肪は「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類があります。
皮下脂肪は皮膚と筋肉の間に蓄えらる脂肪で、内臓脂肪は肝臓や腸といった内臓の周りにつく脂肪です。そしてやっかいなのはこの「内臓脂肪」の方です。
内臓脂肪は人間にとっては「異物」です。よって免疫システムがこの内臓脂肪を排除しようと炎症を引き起こします。
しかし、脂肪は食事のコントロールや運動でカロリーを消費することでしか減ることはなく、免疫システムが頑張っても脂肪は減らないのです。
なので、内臓脂肪が体内にある限り、体の中で炎症が起こり続け、健康に害を及ぼします。これが「メタボリックシンドローム」です。
なんだか体調が優れないのは体内で炎症が起こっている
このようなタイプの炎症ははっきりとした自覚症状がなく、「なんか調子が悪い」、「体がだるい」といった症状として現れます。しかし、原因がはっきりとしないまま放置しておくと、やがて大きな病気に繋がってしまうこともあります。
スウェーデンのカロリンス研究所のチームが行った調査では、本人が感じている体調の不調・好調の度合いと、炎症レベルに関係性があるかを調べたところ、体調が悪いと感じている人程、炎症のレベルが高かったという結果が示されています。
これらの結果から健康と炎症には大きな関係があるといえます。ただし体内で炎症が起きるのは食べ過ぎによる内臓脂肪の蓄積だけではありません。
現代人に足りていない睡眠
現代になって「過剰」になったカロリーとは逆に、現代に「不足」しているのが睡眠です。睡眠不足も体内の炎症を引き起こすことが明らかになっています。
2010年の国の調査によると日本人の睡眠時間の平均は約7時間で、1960年と比較すると1時間少なくなっており、先進国の中でも2番目に少ない数字です。
また、睡眠不足と炎症にまつわる様々な研究結果から下記のことがわかっています。
・1日の平均の睡眠時間が1日7~9時間を逸脱すると体内の炎症レベルが高くなる(短すぎても長すぎてもダメ)
・夜中に何度も目が覚めてしまうような場合も、体内の炎症は増える
睡眠と体内の炎症には大きな関係があるのです。
現代に新しく誕生したものが炎症を引き起こす原因に
その他にも現代になって新しく登場したものに体がついてこれずに、炎症を引き起こしているものがあります。その1つが「トランス脂肪酸」です。
トランス脂肪酸はマーガリンや植物油などに含まれる脂肪酸の1種で、油を人工的に安価で大量に作れるようになった際に生まれたものです。
トランス脂肪酸の体への悪影響は実証されており、ハーバード大学の研究でもトランス脂肪酸の摂取量が多いほど、炎症のレベルが高いことがわかっています。
トランス脂肪酸が体に悪いのは、トランス脂肪酸が人にとって新し過ぎる物質なので、体内でうまく処理できないからです。
その結果、トランス脂肪酸は悪玉のコレステロールとなり、動脈硬化などの悪影響を身体に引き起こします。
人工的に作られた全ての食べ物が悪いというわけではないですが、このように人工的に作られたものは、体でうまく処理できずに健康に害を及ぼす場合もあるのです。
免疫システムに大切なのは腸内環境
「高カロリーな食事をしすぎない」、「睡眠をしっかりとる」といった健康を意識した生活を送ることで体内の炎症を抑えることができますが、免疫機能を適切に働かせて、炎症を起こさないようにするために大切なのが「腸内環境」です。
では、よく言われる「腸内環境」とは具体的に何のことを指すのか。それは腸内に住み着く「腸内細菌」の状態のことを指します。
腸内細菌は、菌という名前がついていますが、人にとって悪いものではなく、人間の消化器官の中に住みついている微生物でのことです。代表的な腸内細菌には、乳酸菌やビフィズス菌がいます。
腸内細菌は人間が健康を維持するのに非常に重要な役割を持っており、人に必要なビタミンを生成したり、栄養の吸収を助けたり、脂肪酸を生成して腸の中の壁を保護したりと、様々な働きをしています。
様々な良い働きをする腸内細菌ですが、その中でも重要な役割が免疫機能です。腸内細菌は外敵から体を守ってくれる働きをしてくれています。
つまり、腸内細菌が正しく働いていなければ、免疫システムが正しく機能せず、体内に炎症を起こしてしまいます。
謎の不調を引き起こすリーキーガット
腸の不調によって起こる炎症の1つがリーキーガットです。
リーキーガットとは腸内の細胞と細胞の間に隙間ができてしまう状態のことをいいます。大袈裟に言うと腸に穴が空いているような状態で、その穴から未消化の食べ物や毒素が体内に漏れ出し、炎症を起こします。
リーキーガットが起こるとアレルギーや認知機能の低下などの様々な症状を起こしますが、その中でも危険なのが「慢性的な疲れ」です。慢性的な疲れとは、大して何もしていないのに体が疲れている状態がずっと続いている症状のことをいいます。
2016年にコーネル大学は慢性的な疲れに悩む患者の腸内細菌を調査する研究を行いました。その研究では、慢性的な疲労を感じている人は、健康な人に比べて腸内細菌が少ないといった結果が出ており、腸内環境と慢性的な疲れの関係性が示されています。
腸内環境の悪化を引き起こすのは?
腸内環境の悪化はどのように引き起こされるのでしょうか?その主たる原因は「極度な衛生環境」と「食物繊維の不足」です。
衛生環境の発達により、感染症を克服することができた結果、平均寿命を伸ばすことができた反面、人間にとって有用な微生物も減少しています。
あえて身の回りを汚い環境にする必要はないと思いますが、極度な潔癖による無菌環境はやめた方がいいです。例えば、薬用ソープで手を洗ったり、消毒用のアルコールで殺菌消毒を行うと、肌に住み着く有用なバクテリアまで殺してしまいます。
アメリカ政府も「薬用ソープの良い効果を示す証拠はゼロである」とコメントしています。手や体を洗う際は、固形の石けんや無添加のボディーソープを使えば、十分に汚れや悪い菌は除去することができます。
2つ目の原因は「食物繊維の不足」です。腸内細菌は主に食物繊維を食べて繁殖するのですが、現代の人達は食物繊維が不足しています。
安くて美味しいものがコンビニやファストフードで食べらるようになり、食物繊維を多く含む食材を食べる機会が減少しています。
食物繊維不足は食物繊維を多く含む食材を摂取することでも解消できますが、それが難しい場合はサプリメントを摂取することでも解消可能です。具体的なサプリメントは後ほど紹介します。
腸内環境を回復させるには?
腸内環境を回復させる方法は2つです。その1つ目が「腸内に細菌を送り込む」ことです。
腸内に細菌を送り込むのに適しているのが発酵食品の摂取です。発酵食品には乳酸菌などの微生物が含まれおり、具体的には味噌、納豆、キムチ、ヨーグルト、チーズなどが挙げられます。
古代では現代のような冷蔵や冷凍技術もないので、自然と発酵食品を摂取していたと考えられています。
発酵食品の摂取が健康に良い影響を与える具体的なデータもあります。ロンドン大学の研究では、発酵食品の消費量と健康状態の関係性を調査したところ、普段から発酵食品を食べている人ほど、心疾患や糖尿病にかかりにくいといった結果がでています。
また、カリフォルニア大学の研究では、乳製の発酵食品を4週間食べ続けてもらった実験を行った結果、感情や注意力に関する脳機能の向上が見られました。
このように、発酵食品を日常的に取り入れ、腸内環境を良好な状態に保つこといにり、健康にプラスの影響を与えるのです。
ただし、注意点として、1つの発酵食品ばかりを食べるのではなく、できれば複数の発酵食品を食べるようにしましょう。というのも、発酵食品ごとに摂取できる菌は異なるので、色々な発酵食品を取り入れた方が腸内細菌の多様性が生まれ、より腸内環境を強固にできるからです。
発酵食品だけで効果がない場合のプロバイオティクス
発酵食品を食べることによって腸内環境の改善が期待できますが、人によっては効果が全くでない場合もあるようです。その原因として、腸内の「悪玉菌が増加しすぎた」ことが考えられます。
腸内細菌には、人に良い影響をもたらす「善玉菌」と、悪い影響をもたらす「悪玉菌」、とくに何も起こさない「日和見菌」の3種類が存在します。
悪玉菌は脂や動物性タンパク質を好み、偏った食生活を続けていると悪玉菌が増え、善玉菌が少なくなります。
この、善玉菌と悪玉菌は腸内で常に戦っており、悪玉菌が優勢な状態が続くと、発酵食品を食べて善玉菌を腸内に送っても、悪玉菌によってすぐに駆逐されてしまいます。
そのような状態では発酵食品を食べても効果はありません。そのような状態で効果を示すのが「プロバイオティクス」です。
プロバイオティクスとは「十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物」と定義されていますが、ざっくり言うと、(発酵食品では微生物の数が少ないので)サプリメント等で生きている良い微生物を腸内に大量に届けることを意味します。身近にあるプロバイオティクスとして「ビオフェルミン」などがあります。
このプロバイオティクスですが、最近の研究で様々な健康効果があることが判明してきました。その1つがアレルギー症状の改善です。
フロリダ大学の実験では、花粉症に悩む男女にプロバイオティクスを8週間飲み続けてもらったところ、目のかゆみや鼻詰まりが改善したという結果がでました。
腸内環境が改善されたことによって、炎症であるアレルギー反応が緩和されたと考えられます。
具体的におすすめのプロバイオティクスは?
プロバイオティクスが有効であることはわかったが、具体的にどのような商品選べばよいかわからないと思うので、いくつかおすすめの商品を載せておきます。
プロバイオティクスの選び方としては、下記の2点を見てもらえればと思います。
・菌がたくさん入っているか
菌を大量に送りほんだ方が効果が高いです。菌の単位は「CFU」と表記されています。
・目的の菌が入っているか
菌によって得られる効果も変わってくるので、菌の特徴を抑えておくとよいです。
・ビフィズス菌、乳酸菌:下痢や便秘に有効
・サッカロミセス・ブラウディ、LGG:抗生物質などで荒れた腸に有効
ちなみに、各商品に含まれている菌の説明を見ると、このように見たことも無い名前が連なっています。
※iherbより抜粋
ざっくりではありますが、
・ラクト〜(Lacto~)→乳酸菌
・ビフィド〜(Bifido~)→ビフィズス菌
と考えてもらえれば問題ないです。
以下、おすすめ商品です。(ちなみに紹介しているiherbというサイトは海外からサプリメントや健康食品を個人輸入できるサイトです。プロテインなども購入することができて、コスパもいいのでおすすめです。※海外=危険ではありません。)
世界で一番売れているプロバイオティクス
海外で有名なサプリメントメーカーのNowFoods
サッカロミセスのプロバイオティクスならこれ
食物繊維を摂取して腸内細菌に栄養を与えよう
腸内環境を良くするための2つ目の方法は「食物繊維」を摂取することです。腸内細菌を腸内に取り込んだ後に腸内細菌に必要な栄養素を送る必要があります。
実際に食物繊維を多く摂取することで、健康に良い影響を与えるデータも出ています。
中国の医療機関が行った研究では、食物繊維の摂取量が多い人は、摂取量が少ない人に比べて、早期死亡率が23%、癌の発生率が17%、さらに炎症性の病気の発症率が43%も低いといった結果が出ています。
食物繊維が多く含まれる食材は下記のようなものがあります。
・玄米、全粒粉のパン
・海藻類
・大豆製品
・葉野菜
・フルーツ
・きのこ類
とはいえ、上記の食品を日常的に食べるのは難しい場合もあると思います。そのような場合はサプリメントからの摂取も可能です。
サプリメントであればなんでもOKというわけではないので、下記にデータでも裏付けのある、おすすめのものを載せておきます。
難消化性デキストリン
「糖の吸収を抑える〜」といった謳い文句のトクホ飲料によく含まれている食物繊維です。コスパもよく、臨床テストも多く実施されているので最もおすすめです。
イヌリン
フルーツや野菜に含まれている食物繊維です。難消化性デキストリンと同程度のコスパです。
レジスタントスターチ
食物繊維の中でも腸内細菌が好む食物繊維。腸壁を保護する作用が高い。他の2つに比べるとややコスパは悪め。
さいごに
今は変化がめまぐるしい時代ではありますが、人間の身体は意外にもまだ大昔のままです。
もちろん健康のために原始人のような生活をする必要はないのですが、正しい知識を身につけて「利便性」を享受しつつも「健康」に生きることが大切だと思います。
「常に体調がよくない」、「定期的に体調を崩す」といった悩みを持っている方は体の中で知らずのうちに炎症が起きている可能性が高いです。そのような方は食生活や腸内環境を今一度見直してみましょう。
「健康」が当たり前になるだけで、人生が大きく変わります!
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