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新しくなった事業再構築補助金① どの申請枠で応募するか

3/30(木)に事業再構築補助金(第10回)の公募要領が発表されました。今回から新たな通常枠として「成長枠」が創設され、旧通常枠で必須だった売上減少要件が撤廃されるなど、成長分野への転換を強く意識した制度へと様変わりしました。とはいえ「ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応する中小企業等の挑戦を支援する」という本補助金の主旨は変わっておらず、「新たに取り組む事業がコロナによる外部環境の変化をいかに克服するか」が採択を勝ち取る上で引き続き大きなテーマとなっています。

どの申請枠で応募するか

第10回公募では、8つの申請枠が用意されています。応募を検討している事業者はそれぞれの要件を確認し、どの枠なら申請可能か、どの枠が最も採択可能性が高いかを判断する必要があります。
※ サプライチェーン強靭化枠は申請要件が大きく異なるため本記事では割愛します(後日追記する場合があります)。

申請枠ごとの要件

成長枠

第10回公募から創設された実質的な新たな通常枠です。前回までの通常枠で必須だった売上高減少要件は撤廃され、新たに取り組む事業が10年間で市場規模が10%以上拡大※している業種・業態に属していることが要件となります。また、付加価値額増加要件が年率平均4.0%以上増(前回の通常枠では年率平均3.0%以上増)に引き上げられるとともに、新たに給与支給総額の増加要件(年率平均2.0%以上増)が追加されるなど、より成長を意識した申請枠として位置付けられています。補助上限金額および補助率は以下の通りです。大幅な賃上げに取り組む事業者には補助率が引き上げられる優遇制度が設けられています。
※ 市場拡大要件の詳細は前回記事を参照

補助金額
・従業員数20人以下:100万円 ~ 2,000万円
・従業員数21~50人:100万円 ~ 4,000万円
・従業員数51~100人:100万円 ~ 5,000万円
・従業員数101人以上:100万円 ~ 7,000万円
補助率
【中小企業】1/2 (大規模賃上※を行う場合は2/3)
【中堅企業】1/3 (大規模賃上※を行う場合は1/2)
※ 大規模賃上:給与支給総額を年率平均6%以上増かつ事業場内最低賃金を年額45円以上増。


グリーン成長枠

研究開発・技術開発または人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野※の課題解決に資する取り組みを行う事業者を対象とした申請枠です。成長枠と比較して補助上限金額が高めに設定されているため、高額物件の購入を予定している場合は、本申請枠での応募を検討してみましょう。第10回公募から新たに要件を緩和したエントリー枠が創設され、申請できる事業者の幅が広がりました。また、成長枠同様、大幅な賃上げに取り組む事業者は補助率が引き上げられます。
※ 「洋上風力・太陽光・地熱」「水素・燃料アンモニア」「次世代熱エネルギー」「原子力」「自動車・蓄電池」「半導体・情報通信」「船舶」「物流・人流・土木インフラ」「食料・農林水産業」「航空機」「カーボンリサイクル・マテリアル」「住宅・建築物・次世代電力マネジメント」「資源循環関連」「ライフスタイル関連」の14分野

補助金額
(エントリー枠)

【中小企業者等】
・従業員数20人以下:100万円 ~ 4,000万円
・従業員数21~50人:100万円 ~ 6,000万円
・従業員数51人以上:100万円 ~ 8,000万円
【中堅企業等】100万円~1億円
(スタンダード枠)
【中小企業者等】100万円 ~ 1億円
【中堅企業者等】100万円 ~ 1.5億円
補助率(エントリー枠、スタンダード枠共通)
【中小企業】1/2 (大規模賃上※を行う場合は2/3)
【中堅企業】1/3 (大規模賃上※を行う場合は1/2)
※ 大規模賃上:給与支給総額を年率平均6%以上増かつ事業場内最低賃金を年額45円以上増。


卒業促進枠・大規模賃金引上促進枠

成長枠またはグリーン成長枠で申請する事業者を対象とした補助金額の上乗せ枠です。卒業促進枠では、補助事業終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業する場合に、成長枠、グリーン成長枠の補助上限金額内で従業員規模に応じた上乗せが適用されます。一方、大規模賃金引上促進枠では、補助事業終了後3~5年で事業場内最低賃金を年額45円以上増加、従業員数を年率平均1.5%以上増員する場合に、100万円~3,000万円の範囲で上乗せが適用されます。尚、①卒業促進枠または大規模賃金引上促進枠は単独で申請することはできず、必ず成長枠またはグリーン成長枠と一緒に申請すること、②卒業促進枠と大規模賃金引上促進枠は併用できないこと、③卒業促進枠と大規模賃金引上促進枠で申請する補助対象経費は、成長枠またはグリーン成長枠で申請する補助対象経費と明確に区別すること(同一の建物・設備を両方で対象経費とすることはできない)に注意が必要です。

上乗せ金額
(卒業促進枠)
成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる。
(大規模賃金引上促進枠)100万円 ~ 3,000万円
補助率(卒業促進枠、大規模賃金引上促進枠共通)
【中小企業】1/2
【中堅企業】1/3


産業構造転換枠

現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態から別の業種・業態に転換する事業者を対象とした申請枠です。成長枠は「儲かる分野への進出」、産業構造転換枠では「儲からない分野からの撤退」を支援します。既存事業の廃止を伴う場合は、廃業費として最大2,000万円が上乗せされます。

補助金額
・従業員数20人以下:100万円 ~ 2,000万円
・従業員数21~50人:100万円 ~ 4,000万円
・従業員数51~100人:100万円 ~ 5,000万円
・従業員数101人以上:100万円 ~ 7,000万円
※ 廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ。
補助率
【中小企業】1/2
【中堅企業】1/3


最低賃金枠

国が推し進める最低賃金引上の影響を受け、その原資の確保が困難な事業者を対象とした申請枠であり、他の枠と比較して補助上限金額は低いものの高い補助率が設定されており、以下の要件を満たす場合に申請が可能です。

  1. 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が対2019~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%減少している。

  2. 2021年10月から2022年8月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いる。

補助金額
・従業員数5人以下:100万円 ~ 500万円
・従業員数6~20人:100万円 ~ 1,000万円
・従業員数21人以上:100万円 ~ 1,500万円
補助率
【中小企業】3/4
【中堅企業】2/3


物価高騰対策・回復再生応援枠

コロナや物価高騰の影響により依然として業況が厳しい事業者を対象とした申請枠です。以下のいずれかを満たす場合に申請可能であり、使い勝手としては前回までの回復・再生応援枠や緊急対策枠と類似しています。

  1. 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が対2019~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%減少している。

  2. 中小企業活性化協議会等において再生計画を策定中、または、中小企業活性化協議会等において再生計画を策定済かつ再生計画成立後3年以内である。

補助金額
・従業員数5人以下:100万円 ~ 1,000万円
・従業員数6~20人:100万円 ~ 1,500万円
・従業員数21~50人:100万円 ~ 2,000万円
・従業員51人~:100万円 ~ 3,000万円
補助率
中小企業者等2/3
中堅企業等1/2
※ 従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合1,200万円まで、中小企業者では3/4、中堅企業では2/3の補助率を適用。

今回は新しくなった事業再構築補助金の申請枠について見てきました。次回は新たに取り組む事業が、どの事業再構築類型(新市場進出、事業転換、業種転換、事業再編、国内回帰など)に該当するかを解説します。

当事務所では事業再構築補助金、ものづくり補助金の申請支援サービスをご提供しています。ご相談内容に応じてさまざまなサポートサービスをご用意していますので、申請をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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