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空飛ぶクルマプレイヤーの最新動向

こんにちは、STRIVEの古城です。2020年頃から、空飛ぶクルマのニュースを見かける機会が増えたと思います。実際、世界各国のスタートアップが空飛ぶクルマの社会実装・サービスローンチに向けて機体開発を加速させたり、事業構想を打ち出したり、大規模な資金調達を実施したりしております。今回、インターンの鶴原啓君に、空飛ぶクルマを開発する海外メジャープレイヤーの概要と最新動向を纏めてもらいました!

こんにちは、インターンの鶴原です。空飛ぶクルマには電動駆動(主に電動垂直離陸機(eVTOL))とガソリンエンジン駆動、ハイブリッドがありますが、今回はeVTOL(電動垂直離着陸機)を開発していて、直近で大型調達を実施・検討している海外のメジャープレイヤー5社を取り上げていきます。よろしくお願いします!

Lilium GmbH(ドイツ)

まず1社目はドイツのLilium GmbHです。2015年に、ミュンヘン工科大学で勉強していたDaniel Wiegandら4人によって設立されました。”Revolutionizing the way we travel”(旅行の仕方に革命を起こす)というビジョンの元、7人乗りeVTOL(電動垂直離着陸機)であるLilium Jetの開発を進めており、2024年から複数の都市でエアタクシーサービスを開始する計画です。当初は5人乗りの機体を開発していましたが、7人乗りの機体を優先させるようです。先日(3月30日)、SPAC(特別買収目的会社)※であるQell Acquisition Corp.との合併を発表しており、評価額33億ドルでナスダックに上場する予定です。

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Archer Aviation(アメリカ)

2社目はアメリカのArcher Aviationです。2018年に就職斡旋サイトVetteryをAdecco Groupに1億ドル超で売却した起業家コンビであるBrett AdcockとAdam Goldsteinによって設立され、2020年からメディアへの露出を増やしております。”To advance the benefits of sustainable air mobility”(持続可能なエアモビリティの便益を世に拡げる)をミッションに掲げ、Makerという2人乗りeVTOLを開発しています。2024年までにロサンゼルスとマイアミでUAM(アーバンエアモビリティー)ネットワークを立ち上げ、サービスを開始させる計画です。2021年2月10日にSPACであるAtlas Crest Investment Corp.との合併を発表しており、評価額38億ドルでニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する予定です。この際、ユナイテッド航空が出資および10億ドル分の航空機の発注(5億ドル分追加オプション付)に合意していることも注目を集めています。

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Joby Aviation(アメリカ)

3社目はアメリカのJoby Aviationです。カメラやモバイルアクセサリーを生産するJOBY社の創設者でもあるJoeBen Bevirtによって2009年に設立されました。”To build a global passenger service that saves a billion people an hour every day, while helping to protect our precious planet”(大切な地球環境を守りつつ、10億人の人々が毎日1時間を節約できる旅客サービスをつくる)を長期的なビジョンに掲げています。2024年までにアメリカの複数都市でサービスを開始することを目指しており、2020年にはUberの空飛ぶタクシー事業部門「Elevate」を買収することで、事業化を加速させております。また2020年の年始にはトヨタが約400億円出資し、eVTOLの開発・生産で協業すると発表し、話題になりました。2021年2月24日にSPACであるReinvent Technology Partnersとの合併を発表しており、評価額66億ドルでNYSEに上場する予定です。

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Volocopter GmbH(ドイツ)

4社目はドイツのVolocopter GmbHです。2011年に土木工学をバックグラウンドに持つAlexander Zoselとソフトウェア開発者のStephan Wolfによって設立されました。” To become the leading Urban Air Mobility service provider worldwide”(世界をリードするアーバンエアモビリティサービスプロバイダーとなる)を目標に掲げ、2人乗りのeVTOL(VoloCity)を開発しています。2023年までにシンガポール、2024年の五輪までにパリでそれぞれエアタクシーサービス提供を目指しています。またJALと業務提携を結んでいることで注目されており、日本でも2023年ごろまでのサービス提供を目指しています。直近のシリーズC・Dの資金調達ラウンドでは、日本から三井住友海上MS&AD、NTT、東京センチュリーが新たに加わりました。VolocopterはSPAC経由での上場はあくまでオプションの1つとしているようです。

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Ehang Holdings Limited(中国)

最後に紹介するのは中国のEhang Holdings Limitedです。2014年ヘリコプターのパイロットであったHuazhi Huと起業家のDerrick Xiongによって設立されました。”To make safe, autonomous and eco-friendly air mobility accessible to everyone”(安全で自律的で環境にやさしいエアモビリティを誰もが利用できるようにする)を使命に掲げていて、2人乗りのeVTOLを開発しております。2020年7月にパイロットなし(リモート操作)での有人飛行に成功しており、一部で空中観光サービスを展開し始めております。また現在、新たに開発している長距離eVTOLについても近々情報が公開される予定で、デザインは明かされていないものの、固定翼機ではないかという噂があります。Ehangは世界初の空飛ぶクルマ上場企業(2019年12月にナスダック市場に上場)であり、現在は世界各国で実証フライトを行うなど活動を活発化させています。
※補足:2021年2月16日に米投資会社WOLFPACK RESEARCHによるショートレポートで売上水増しなどの粉飾疑惑が浮上。会社側は反論レポ―トなどを出しており、今後の真相解明が期待される。

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サマリー

・空飛ぶクルマの早期社会実装に向けて、大規模な資金調達や大手企業との提携などの動きが活発化している
・機体サイズや形状は各社各様で、2023年〜2025年ごろのサービス開始が予定されている
・既に上場しているEhangを除いた4社のうち3社がSPAC経由での上場を予定しており、2021年中に多数の空飛ぶクルマ企業が上場する見込み

いかがだったでしょうか?実は空飛ぶクルマが飛び回る社会はそこまで遠くないのかもしれません。空飛ぶクルマの社会実装には、法改正を含めた制度整備が必須で、各国対応を進めております。FAA(アメリカ連邦航空局)は航空法改正、EASA(欧州航空安全機関)は新たなeVTOLの型式証明のルール策定を進めております。日本でも、政府が2023年の空飛ぶクルマの社会実装に向けて2021年度中に試験飛行に必要な手続きをまとめた手引書の公表を目指すなど、制度整備が進んでおります。空飛ぶクルマの市場は2040年に1兆5000億ドル規模になるとも予想されています。実用化に向けた課題はまだまだあるものの、今後も目が離せない業界です。

※SPAC(Special Purpose Acquisition Company)とは?
・SPACは特別買収目的会社のことで、未公開会社の買収を目的として設立される法人。設立および上場時は、自らは事業を行なっていないペーパーカンパニーで、上場後に株式市場から資金調達を行い未公開会社の買収を実施
・SPACに買収された未公開会社は、従来の上場のプロセスを踏まずに上場できる(それ故、裏口上場とも言われている)
・2020年にはEVメーカーのFisker Inc.や不動産テックのOpenDoor Labs, Inc.がSPACで上場。足もとでは、WeWorkや量子コンピューターのIonQ, Inc.などがSPACで上場を目指している

参考リンク





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