ブランドマネジメントは「コンセプト策定+一貫した具現化」の長期戦
強いブランドとは何か?
基本的にすべての商品・サービスにはなんらかのブランドが付与されている。その中で,消費者に「強いブランド」として認識されるものと,その他雑多なものに分けられる。「企業は価値(コンセプト)を約束し,消費者はそれを絶大に信頼する」という状態が強固なブランドの存在を意味している。ディズニーランドに行けば非日常を味わえる,Starbucksに行けば落ち着いて話せる,ワークマンの洋服を購入すれば機能的で長く着られる,オイコスのヨーグルトなら太りにくく腹を満たせる,TBSのラヴィット!を見ていれば朝から明るい気持ちになれる。このように,企業が発信しているコンセプトが有名無実ではなく,実際に消費者が信頼しているかが重要である。
ブランドづくりはとにかく地道
商品・サービスがブランドとして消費者に認識されるまでに求められるマネジメントの過程を以下に示す。ここで重要な点は2つである。
1つは,永遠に到達しないコンセプトを社内外に発信し続けることである。具体的な1つの技術・デザインを発信しているだけでは,それが陳腐化したら終わりである。そうではなく,ブランドの存在意義はコンセプトにある。そして,コンセプトは,すぐに実現できてしまうものでは,大したブランドには成長できない。明日にでも達成できるなら,すぐに模倣されてしまう。また,そもそも塵1つの問題もない完璧な世界などこの世に存在しない。よって,コンセプトで掲げている実用的・心理的問題がすべて解決されることはないだろう。技術進化によって1つの問題を解決したら,新たな別の問題が生まれているはずである。
2つ目は,積み重ねた時間が長いほど,ブランドが強固になるということである。一般的に,技術的・社会的な制約から,一足飛びにコンセプトを実現することはできない。その時点で適用できる技術を駆使しながら,地道にコンセプトに近づいていく。例を挙げると,Teslaは完全自動運転の未来を発信し続けている。そして,現時点では技術的に難しいものの,既に販売している車は将来利用可能となる完全自動運転を提供できるハードウェアを標準装備しており,ソフトウェアアップデートを通して継続的に機能が向上するよう設計されている。コンセプトを”完璧に”開発してから世に出すことを考えていては,開発期間が長期化し,商機を逃してしまう。そうではなく,目指す世界(コンセプト)に対するロードマップと現在地を顧客・株主・社員に発信し,一歩一歩近づけていくことが大切である。
コンセプト策定 + 一貫した具現化
著名人を起用した派手な広告,大規模なイベント,大盤振る舞いのキャンペーンなどは短期的な客寄せにはなっても,ブランドを強化することは難しい。大切な視点は,コンセプトの信頼を高めるか否か?,である。したがって,やるべきことは極めてシンプルである。それは,「コンセプト策定 + あらゆる消費者接点での一貫した具現化」である。
コンセプト策定は,以前の記事で述べたとおり,「誰に(Who)・何を(What)・どのように(How)」を決めることである。特にWhoにおいて,「どんな実用的・心理的な問題を抱えている人か?」を具体的に策定することが肝である。困っている消費者の顔,その問題を解決したら喜んで高いお金を払ってくれる姿,を具体的に想像できるか否かで成否は決まる。
コンセプトの定義後は,一貫した具現化を行う。具現化の対象は,商品・サービスだけではない。大別すると,真実の瞬間(Moment of truth)と呼ばれる以下3つの消費者接点すべてが対象となる。ZMOT(zero moment of truth)はWebサイトやSNSを見た時,FMOT(first moment of truth)は店舗で商品を見た時,SMOT(second moment of truth)は商品・サービスを利用した時,である。さらには,故障やトラブルに遭遇して,コールセンターやアフターサービスに接触した時も含まれる。コンセプトを単なるアイディアに終わらせないためには,あらゆる接点にてコンセプトを感じられる具現化が必要である。
このように,コンセプトの地道な具現化こそがブランドマネジメントであり,決して華やかな広告1つで完結することではない。
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