『さんかく』千早茜
気がつけば何冊目か分からないが、千早茜さんの本をいくらか読んでる。
『さんかく』では、主人公3人の視点を、順繰り描いてる。
主人公のひとりは、恋人と別々の場所で過ごしている。その恋人が大切にしていることは、職業としての研究を積み重ねていくこと。舞い込む仕事それぞれが、成果であり、きっかけである。命を終えた生物を用いて、骨格や臓器の研究をしている。この研究において、研究対象の具合が時間にシビアである。そのため研究対象中心に生活は回っていく。
この状況は、そこそこに仕事をして、恋人との時間を優先したい者にとって、少し寂しいものだろう。
そんな中、恋人と会えない時間で、もう1人の主人公と仲を深める。こちらの人は自営業を営んでおり、独身のバリキャリである。メリハリや分別をつけ切れてるか、なんとも言えないが、意志を示し個が立っている。食の楽しみを共有できる友達として、時々飲みに行く。スッキリした関係は続いていくが、1人目の主人公の気持ちがほぐれ、甘えが出始めた。寂しさを埋めると言うより、生活のフィット感を感じたんだう。「朝ごはんを一緒に食べたい」のようなことを口走り、関係に亀裂が入った。口にした途端、バリキャリの表情たるや、憤怒極まっていた。やらかしの絶望でぶっ倒れ、なんやかんなバリキャリの部屋で目覚める。気まずいが、用意してもらった朝ご飯を食べる。不用意な言葉に気をつけながら。
壁ともいえない調和した距離感が生まれた頃、同居生活が始まった。恋人はそのことを知らない。
食事の価値観が近く、半ば家族のように、食事の楽しみを共有する生活が始まった。食事に絡む新しい試みは、互いに受け入れられる適度な発見を与え合う。生活の中で、認識を密に共有・共感できる事柄があるなら、それが生きることの中心に思うかもしれない。
一方で、恋人との密な認識の共有といえば、理由の難しい、恋ってやつだった。そう簡単な説明が付かず、とにかく愛おしいらしい。
違う側面での、人との繋がり。そんな三角関係が描かれた。
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