takumanのなんでも感想文part6

こんにちは、takumanです。

今回は、予告していた通り、ライトノベルの紹介編です。

タイトルは、「怪物中毒」です。以前も紹介した三河ごーすと先生の新作で、第2巻の発売が予定されている作品になります。ジャンルは現代SFといった感じで、サスペンス要素や世界観がダークな印象を受けました。

「怪物中毒」とは

この作品は、「普通」ではない能力を持った主人公の霞見零士と頼山月が、「普通」を手に入れるために様々な怪事件を解決していく話です。高度なAIやIT技術によって社会の仕組みが全て管理された、まるで未来の日本を見ているかのような街「秋津洲《アキツシマ》」と、その管理から外れた者たちが暮らす「仮面舞踏街《マスカレード》」を跨いで物語が展開されていきます。そんな中、人を動物などの姿へと変え快感を与えるという「モンスターサプリ」の噂が流れ、人々はそれを求め、夜の街を闊歩していく。このドリンクを巡った騒動を解決するため、零士と月は”掃除屋”として事態の収拾に動く、というのがあらすじになります。

管理社会の怖さ

この物語の舞台が、未来の日本のようだと言いましたよね。詳しく紹介すると、戦争によって情報通信技術が進化し、世界中とつながることで国際貿易が盛んになるが、疫病によってパンデミックを迎える。ここの件は現在の世界情勢と似ている部分がありますが、注目すべきはここから。
世界最高水準の防疫システムを導入した秋津洲。人々はSNS義務づけられ、言動や行動の全てを監視される。疫病の影響で必須となったマスクを装着した上でも見分け可能な顔認証システムによって、365日リアルタイムであらゆる情報が管理されます。そして、社会にとって良い行動をとった者には様々な報酬が与えられ、生活が豊かになっていく。反対に、良くない行動をとり続けると罰則が下され、仮面舞踏街へと追い出される。いわばホームレス状態で暮らすことになる、という仕組みです。
もし、今後の日本が、社会が、このような生き方を強制してきたら皆さんはどうしますか。人間が管理するとなると完璧な情報漏洩は防げませんし、AIによって管理されていたとしても、不安を抱える人は少なくないと思います。仮面舞踏街では、スマホによる監視の目はなくなる代わりに、スマホ自体が意味を無くし、生活していくだけでも大変になります。例えるなら、常に「24時間監視される生活をするか、何も持たずに無人島で暮らすか」の2択を迫られて暮らす。といった感じでしょうか。

誘惑の先には

作品に登場するモンスターサプリ。
モンスターサプリを購入する人々は、稀に入手できるという噂の、伝承や逸話の存在へと変化するという幻獣サプリ《ファンタビ》を手に入れたいがために、あらゆる自由が許されている仮面舞踏街で姿を変え、その興奮に酔いしれていきます。しかし、興奮を抑えられなくなった時、人々を襲うようになっていく。仮面舞踏街に暮らす人やファンタビを使用した者には、人権がなく、たとえ人が殺されても害獣駆除として処理される。そんな害獣駆除を行うのが、や、特殊永続人獣《トクニン》という、生まれながらにして幻獣の力を手にしている存在です。彼らもファンタビ同様、人権がないため、掃除屋として雇われることで最低限の人権を得ているというわけです。
ファンタジーや物語でしか登場しないような物は、誰の目にも魅力的に映るものです。ましてや、強くなりたい。かっこよくなりたい。そう望んでいる人は多いはず。そうした願望を叶える手段が違法な方法や犯罪であったとしても、手の届くところにあるのなら手を伸ばしてしまうのが人間という生き物なのだと感じました。

作品の感想

雰囲気や、難解に見えて伝えたいことがしっかり伝わる描かれ方をしている文章の書き方が独特で、他の小説と比べても本当に同じ作家の小説を読んでいるのかと疑ってしまうほどでした。小説を読み慣れていない方にとっては、比喩や表現が解釈しにくい部分も正直あると思います。ですが、それを上回るドラマの展開や結末に食いついて、読み進めるのがすごく楽しかったです。普通の人にとっては普通でいたくない。普通ではない人にとっては、「普通」というのが憧れであるというところを踏まえた上で読んでみると、登場人物の考え方や感情に納得がいく部分がありました。
強い効果には、代償がしっかり存在し、作中のパワーバランスをうまく設定しているところもすごく良かったです。力を振るう時には、必ず責任や代償が伴いますから、所構わず自分勝手な行動をとる人を取り締まる、警察のような仕事をする主人公が、力の使い方を自分の中でしっかり線引きしているように感じたことは好印象です。自分の中の正義というは、誰かに押し付けていい物ではなく、自分が自分を貫くあるためにあると私は思います。誰のために為すのか、何のために為すのか。誰かのために何を為せるか。自分が自分らしくあるために考え続けることで、「普通」としてやっていけるようになるのではないでしょうか。

おわりに

今回はここまでとなります。
怪物中毒は、壮大な世界観の中、小さな社会の、対称的な二つの街を見事に表現していて、作品の完成度やクオリティとしてはすごく高い作品だと思いました。気になった方は、この機会に是非読んでみてください。

お知らせです。
予告通り、次回は「アニメソング」をテーマに書いていこうと思います。作品を、盛り上げる要素として欠かせないパーツである音楽。そんな音楽の一ジャンルを築いている、アニソンについての私の考えや、好きなアニソンを紹介をしていこうと思います。part0で、自身のことについても今後紹介していきたい云々と言っていたのを思い出し、私の「好き」を皆さんと共有できたらいいなと思い、頑張って書きます。

次回も乞うご期待ください。それでは。


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