takumanのなんでも感想文part8

こんにちは、takumanです。

最近、とある自主制作ゲームのシナリオのプロットを作っているのですが、これがなかなかに大変でして。小説の書き方というのは普段からある程度嗜んでいるのでわかっているつもりではいますが、ゲームのシナリオというのはまた違う奥深さがあることに気づかされました。説明が長くなってもいけないし、会話の進行を妨げてもいけないし等考えることが多く、書いては消してを繰り返して何とかメンバーにOKをもらうことが出来ましたが、とても疲れました。しかし良い経験になっていると思います。新しいことに挑戦するのは楽しいことですね。以上、雑談でした。
それでは、そろそろ本題に移りましょう。今回は、久々にライトノベルの紹介をしていきます。

タイトルは、「小説が書けないアイツに書かせる方法」です。今年の夏クールアニメで空前の大ブームを巻き起こした「リコリス・リコイル」の原案者である、アサウラ先生による新作ライトノベルで、1巻で完結する読み切りタイプとなっています。発売からもう2か月ほど経過した今この頃ではありますが、ようやく読み終えることができましたので、感想について語っていきたいと思います。

「小説が書けないアイツに書かせる方法」とは

この小説をおおまかに説明すると、ある文庫が開催した新人賞にリアリティある内容と心理描写の表現の豊かさで見事優秀賞を受賞した作家が、突如自分の身元と正体を知る女性に半ば脅迫された形で女性が書いてほしいという小説を書くことになり、2人の共同執筆が始まるという話です。
作家を主に置いた作品はあるにはありますが、こういったテーマは実情を知る人間が書くとすごく鮮明に伝わってきて、ただ説明しているだけでも文章に説得力や納得感が生まれます。今作は、作中で扱われている小説の内容がだいぶ人を選ぶだろうな、といった内容になっています。正直に言うと卑猥なシーンやギリギリセーフ位な描写がありますが、まあ誤差の範疇でしょう。あなたも最後まで読めばわかるはず。


自身のコンプレックスと向き合って

ペンネーム「月野シズク」として作家活動をしている主人公の月岡零は、思春期の男子高校生にとっては重大で、まさしく致命的な状況にあります。それは、若年性勃起不全という、原因不明にして治療法も明らかでない厄介なものを抱えていたのです。零は、この実体験を隠していたい気持ちがありつつも、人には言えない悩みや気持ちを外に吐き出すことの楽しさにハマり、小説として書き上げます。これがきっかけとなって、「一ノ瀬琥珀」と名乗る零のことを知る女性と出会います。琥珀は、自分の考えた小説を零の名前で小説にすることを望み、零へと自身のアイデアを伝えます。文章としての粗さは目立つものの、感情の表現にはリアリティがあり内容も面白いと感じます。ここで、琥珀のプロットを読んだ零の体に変化が生じました。今までどんなことをしても反応しなかった零の○ん○ん(かわいい)が反応したのです。この謎を解決するため、零は琥珀に協力することにします。
零の受賞した作品が自身の悩みについて書かれていたように、小説を書くためには、零自身が実際にその出来事を体験する必要がありました。そして零と琥珀は小説の人物と同じことを実践していき、その過程を通して零は、初めて性的興奮を覚えることに成功します。
零にとっては中学生時代からの問題で、ずっと解決できないだろうと思っていたことでしたが、案外あっけなく解決してしまうことってありますよね。私もコンプレックスというには優しいですが人には言えないことが過去にありました。しかし、思い切って話してみると意外とすんなり受け入れてもらえて変に思い込むことがなくなりました。こうした悩みや不安というのは、思いのほか自分しか気にしていなかったり、世間からは外れていても身近に受け入れてくれる人は一定数いると思っています。出会って日の浅い人に相談するには気が重いかもしれませんが、大事な友人や気楽に話せそうなひとがいるのならば、打ち明けてみるものなのだと思いました。


内に秘めたる想い

この話の核になる部分なのでネタバレにはなってしまうのですが、「なぜ琥珀は零の身元を知っていたのか」「なぜ琥珀は自身のアイデアを零に書かせるのか」については、ここまで読んでくださった方にはすごく気になる部分だと思います。ですので、状況を濁しつつ簡単に紹介していこうと思います。
琥珀は、零と同じ「隠しておきたいけど、誰かに見せたい気持ちもある」タイプでした。琥珀も零と同じ新人賞に応募していて、その過程で編集社の人から零に関する情報を得ていました。そして、自分の妄想を社会に知られることを嫌ったために、月野シズクの名前で本を出版してもらおうと考えました。ですが、零に琥珀の本当の姿を知られてしまい、逆に零に脅迫される形で琥珀は自分の小説を自らの手で書くことになりました。
この部分を読んだとき、私が高校生の時、部活動で顧問の先生に言われたことを思い出しました。それは、「『内に秘めたる想い』ってかっこいいように見えて、実は自分の気持ちや考えていることを周囲に受け取ってもらえないことを怖がっているだけ。」だということです。確かに、我々も人間ですから何も言わずに自分の思いの全てが相手に伝わると考えるのは、傲慢です。思いや考えは、言葉にすることによって初めて相手に伝わるものですから、頭で思っているだけでは何も意味がないのだと思います。とはいえ、やはり相手に気持ちを伝えることは難しいことです。第一それができれば未だに彼女の一人もできない、なんてことにはなりません(笑)。まずは一歩ずつ、自分を表現していくことが大切なのだと思いましたね。


感想

全体を通した感想は、ただでさえ濃い題材な上、主人公の同級生のゲーム仲間が登場した時には絶対モブキャラだと思っていたのに、終盤ではしっかり見せ場を作っていたり、キャラの個性が最大限生かされていて、考え抜かれた作品だと感じました。どの人物も魅力的なんですがどこかズレていて、そこが話のいわば隠し味の役割を果たしていたのではないかと思います。また、実際に小説の内容を経験するシーンの描写は圧巻で、そのシーンの映像を思い描きながら読むことができました。リアルな描写というのは、作者の想定がしっかり描かれる分、生々しく伝わり過ぎてしまうこともあるので、どこまで擬音を使うか。台詞とモノローグのバランスなど、意外にも書く時に考えてしまう部分だと私は思っています。この作品では、良い意味でそのリアリティさが出ていて、前半と後半で2人の視点を切り替えて展開されているので、描写の見せ方がとても上手だったなと感じています。
一見、CERO指定がありそうなこの作品ですが、個人的には好きな内容でした。オタクでいるとやはり人に言えない外れた思考を持つことは常々あるので、共感を覚えるシーンが多くとても楽しめました。


おわりに

今回はここまでとなります。
初めて冒頭で雑談を挟んだのは、決して内容が薄くなったり、文字数を気にしたわけではありません。決して。至極単純に、文章の構成にもっと深みを持たせたいと思い、物書きとしてのいろんなテクニックや手法を取り入れてみたいと思ったからです。そうすることでスマートに伝えることができるようになったり、自分の成長にもつながると思っています。
今回紹介した「小説が書けないアイツに書かせる方法」はこれで完結ですが、伏線の回収や物語がきれいに1巻にまとまっていて読み応えがあったので、気になった方は、この機会に是非読んでみてください。そして、感想等あれば是非コメントを頂けると嬉しいです。

次回も乞うご期待ください。それでは。


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