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自立とは依存先を多く持つこと

対人援助をするにあたって、よく「自立支援」が大事だと言われます。
自立支援とは、援助相手の「自立」に向けた支援を行うということですが、この「自立」という言葉に、どんなイメージを持つでしょうか?

「他人に頼らないで生きること」
「自分の力でできるようになること」

多くの人は、おそらくこのようなイメージを持つと思います。
ですが、他人に頼らないことや自分の力でやっていくことが自立だとしたら、世の中に自立している人って誰ひとり存在しなくなってしまうのではないでしょうか。
なぜなら、人は誰かを頼って他人の助けを借りないと生きていけない生き物だからです。

人はひとりで生きていくことはできません。
持ちつ持たれつで、言わばお互い依存し合って生きているといってもよいでしょう。

たとえば、生まれたばかりの赤ちゃんはお母さんが頼りです。
これは、「お母さんに依存していなければ生きていくことができない状態」だと言えるでしょう。

赤ちゃんはどんどん成長していきます。
成長するにつれて、お父さん、おばあちゃん、おじいちゃん、きょうだい、保育園や幼稚園の先生、ともだち、小学校の先生など、お母さん以外とのつながりをどんどん獲得していきます。
これはつまり、今まではお母さんだけだった依存先が、少しずつ他の人にも依存できるようになってきた、ということです。

おとなになると、そのつながり、つまり依存先はさらに増えていきます。
人だけではなく、趣味や仕事、コミュニティといったものなどにも広がっていくでしょう。

このように、人は成長していくにつれ、たくさんの依存先を獲得して大人になっていきます。
これが自立です。
つまり自立というのは、「依存先を増やしていくこと」だと言えるのではないでしょうか。

アルコール依存や薬物依存など、依存という言葉にはネガティブなイメージがあります。
ですがそれは、何かひとつのものだけに偏って執着してしまった結果として起きるものです。
たくさんの依存先を持っていれば、そのうちのどれかひとつがなくなったとしても、別のものに頼って生きることができます。
依存先が多ければ、人は自立して生きていけるわけです。
つまり本当の自立とは、誰にも依存せずに自分ひとりで生きることではなく、むしろ依存先を多く持ちたくさんの人に支えられて生きることだと言えます。

これから対人援助者として自立支援をしていくうえで、ひとつの考え方として心に留めておきたいですね。

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