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iPad mini 6に気づかされた、これまでiPadが「ふつうの人」に普及しなかった本当の理由

「仰々しさ」のない初めてのiPad

2017年に購入した10.5インチiPad Proの代替機として、iPad mini 第6世代 256GB WiFi/Cellularモデル スペースグレイを購入しました。Smart FolioとAppleCare for iPad mini含め、112,080円也。

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通算7台のiPad遍歴を経て、私は「ノート級の画面の広さ」確保を優先し、iPad Pro 12.9(2018)をメイン機として利用してきました。

12.9インチのメリットは、noteでも暑苦しく語っています。

ところが…

サブ機(の代替機)のつもりで購入したはずの 8.3インチiPad mini 6は、使用開始1週間にして、私のメイン機12.9インチiPad Proの座を奪い、最も使用頻度の高いiPadとなっています。

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その理由を端的に言えば、このiPad mini 8.3(2021)が

初めての、人前で取り出しても仰々しくならないiPad

だからです。

iPadがオタク向けデバイスから脱皮できなかった10年間

スティーブ・ジョブズがiPadというプロダクトを紹介したのは2010年。

彼は、PCとスマートフォンの間にカテゴリーに位置するデバイスの存在意義・必要性を、約1時間超にわたって説きました。

「スマートフォンでもPCでもない、”iPad”というカテゴリーがなぜ必要なのか?」

スティーブ・ジョブズほどの卓越したプレゼンテーション能力をもってしても、iPadの必要性をふつうの人に理解させるのに、1時間もの時間を要しました。

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しかし、興奮気味にプレゼンしていたジョブズの熱量とは裏腹に、ふつうの人にその魅力が伝わったかと言えば、大きな疑問符が付きます。事実、その後しばらく、タブレット市場はiPhoneが牽引したスマートフォン市場の成長ぶりには遠くおよばない状態が続いたのでした。

それでもAppleの技術開発はしぶとく続けられ、2015年にはプロフェッショナル向けの12.9インチ iPad Proが発売されるに至ります。そして、2018年の第3世代iPad Proが発売された頃には、

・ペイントアプリで絵を描く
・撮影した写真を綺麗に加工する
・映像を編集し配信する

といった、プロ向けクリエイティブツールとしての確かな地位を築くことに成功していたと言って良いでしょう。

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とはいえ、ふつうの人から見れば、iPadはしょせんガジェット好きオタク向けのデバイス。オフィスの会議でPCを持ち込んでメモを取ることは日常になっても、iPadで手書きメモを取ると途端に奇異な目で見られるのが、その証拠です。

「そんなに手書きでメモしたいなら、紙の手帳を使えば?」
「スケジュール管理とかメール程度なら、スマホでも事足りるんじゃない?」
「そういうガジェット、お好きなんですか?」

昔からのiPadユーザーなら、一度ならずそういう視線に晒されてきたはずです。そんなことはない、と強がっても、Apple Pencil第1世代をLightning端子に刺して充電するあの姿だけは、人様から見られないようにしていたことでしょう。

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この10年でiPadは、プロにとっては必要不可欠なツールにはなったかもしれませんが、ふつうの人がふつうに使うにはまだまだ敷居の高い、他人から見れば「仰々しすぎる」デバイスだったと言わざるを得ません。

サイズとデザインという魔法でオタク感を消した8インチがタブレットのスタンダードへ

しかし、今回のiPad miniは、サイズ感を中心としたデザインを変えるだけで、そうしたiPadの仰々しさを消し去りました。

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Proモデルと遜色ない高性能なCPU・GPUを搭載、そして充電や持ち運びが便利なスタイラス(Apple Pencil 第2世代)に対応するといった機能性を端折ることをせず、一方でデザインは大きく変え、ふつうの人が普段使いするバイブル手帳ほどのサイズに“ダウンサイズ“。さらに軽く、女性をターゲットにした上品なカラーバリエーションも提供。

これらによってiPad特有の「仰々しさ」を消し去っただけでなく、女性がハンドバッグに入れていてもおかしくない、「愛らしさ」「かわいらしさ」を備えることにすら成功しています。妻が私のiPadを見て「それいいね」と言ったのは、歴代8代目にしてこのminiが初めてです。

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仕事という意味での日常をこなすにも十分。家や職場で作成しクラウドにアップしておいたパワポ / keynoteファイルを、本番直前まで手元で修正し、USB-Cでスクリーン出力してプレゼン。Notabilityで録音しながらPencil2で手書き議事録メモ。メールやSlackの一覧性も高いとなれば、外出時にPCを持ち出す必要はありません。心配であれば、HDMIやUSB-Aに変換するドングルをポケットに入れておけば十分でしょう。

iPad Proでもこれはできたはずなのですが、なまじPCとサイズや重さに大差がないために「どうせPro持っていくぐらいなら、PCを持っていこう」となりがちでした。しかし、これが小さなminiでできるとなると、途端に「だったらPC要らないな」となるから不思議です。

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iPadが長年かけてエッジィでピーキィなユーザーと共に磨き上げた高い機能性はそのままに、より小さく・より軽くすることで、日常に溶け込む自然なデザインにパッケージする。

たったそれだけのことで、iPadは

「ふつうの人が、ふつうに持ち歩けて、ふつうな毎日の生活の役に立つ」

という、日常に溶け込む文房具的な存在にようやくなることができました。

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きっとiPadオタク達は、「仕事に使うなら12.9インチじゃなきゃ」「入門機としては10インチを買うべき」と譲らないことでしょう。私も実際に購入し、しばらく使ってみるまではそうでした。

12インチ超のモデルがプロ向けとして、そして10インチモデルが学生をはじめとする低コスト志向の入門ユーザー向けとしてそれぞれ生き残る一方で、iPadを中心としたタブレットの「スタンダード」は、この8インチへと変わっていく予感がします。

おまけ:「お値段高すぎィ」と躊躇する方へ

「iPad mini、ふつうの人にとっては値段高すぎでしょ」とおっしゃる方も少なくないのですが、本当にそうでしょうか。

思い返せば、2010年発売の初代iPadは、こんな価格設定でした。

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ジョブズもプレゼンの中で繰り返し述べているとおり、当時のiPhoneの価格と比べても、iPadは初代からかなり思い切った(控えめな)金額であったと思います。

同じように、2021年発売のiPad miniの価格をジョブズテイストにまとめると…

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物価の違いや性能差に鑑みれば、これってむしろ安くないですかね?

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