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最先端ロボットとそのモーターについて

 ここ数年のドローン、そして4足歩行ロボットの進化に勢いを感じています。4足歩行ロボットはボストンダイナミックスの Spot が有名ですが、中国には DeepRobotics や Unitree といった4足歩行ロボットを扱う専業のメーカーもあり、また携帯電話で国内にも進出している Xiaomi も CyberDog という4足歩行ロボットを去年末発表しました。スイス連邦工科大学で生み出され、後にANYbotics という会社が立ち上がり商用販売を始めた ANYmal という4足歩行ロボットはすでに工業用途での実際の導入がかなり進んでいるようです。これらのロボットを紹介するビデオなどを観ていると、すでに世界のロボティクスは人と同じ環境の中で活動ができ、さらに人間以上の運動能力も発揮できるレベルまで来ているのだと感じさせられます。いくつか気になったビデオを紹介しましょう。

まずは Anymal。Anymal は人の助けなしでのあらかじめ設定したハイキングルートの走行に成功。そのルートには障害物、悪路、滑りやすい場所、急斜面などいくつもの難所がありましたが、それらを自身の持つ走行ポリシーにより自身で判断し乗り越え、一度も失敗することなく、人が移動するのと同程度の時間で走破することに成功しています。ビデオの中ではいくつものルートが出てきますが、車輪のついた車などでは走破は難しいと思われるものばかりです。

DeepRobitcs の Jueying X20 は 85Kg までの重量物の運搬が可能です。稼働時間については 20Kgの荷物の運搬の場合で約2時間ということです。

 多くの4足歩行ロボットを扱う会社が業務向けを主なターゲットにしているのに対し、Unitree はコンスーマー向けにより重きを置いているように見受けられます。その可能性は、業務用途よりさらに未知数ですが、そこにチャレンジするその意気込みにベンチャー精神を感じます。

 4足歩行ロボットといえば MITのMini Cheetah も忘れてはいけません。Mini Cheetah はマサチューセッツ工科大学(MIT)が研究開発した4足歩行ロボットです。ソフトウェアの実装などが公開されているので、今後 Mini Cheetah をベースとしたオリジナルロボットを作る人もたくさん出てくるのかもしれません。

 若干今回伝えたいこととは外れますが Spot とその他ボストンダイナミックスのロボットたちのビデオです。2足歩行のロボット Atlas に至ってはすごすぎて私の理解の域を超えています。

ブラシレスモーター

 これら最先端のロボットに関連して、私は最近「ブラシレスモーター」というものに関心があります。ドローンやこれら最先端のロボットはほとんどのケースにおいて、その動力にブラシレスモーターを採用しています。

 「ブラシレスモーター」は、モーター内のコイルに流れる電流を電子制御によってコントロールすることによってモーターを回転させます。その対極にある「ブラシ付きモーター」はモーター内のコイルに流れる電流をモーター内部のブラシ機構で制御することによってモーターを回転させます。ブラシ付きモーターが内部に制御の機構が備わっているので乾電池などから電流を与えれば、すぐに回転をさせることができるのに対して、ブラシレスモーターはモーターから出ている3本の線に適切なタイミングで電流を流してあげなければ回転をさせることすらできません。

 モーターの一挙一動を電子制御しなければならないわけですからより面倒なのですが、一挙一動を正確に制御したいロボテックスの世界では逆に都合がいいとも言えます。近年 CPUなどの小型化、高性能化が急速に進んだことで、ブラシレスモーターの制御は極めて小さなモジュールで実現できるようになってきています。私が注目しているホビードローンなどの用途において、ブラシレスモーターを駆動する ESC というユニットはほんの数センチの小さなユニットです。

写真)右上に見えるのがホビードローン用 ESC の一つの例、大きさ 3.5cm x 1.1cm

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 ブラシレスモーターがロボットの制御に適している例として、制御しなければ回転しないということは逆に制御して意図的に回転させないこともできるということがあります。例えば同じポジションを維持するためにモーターを回転させないような電子制御をすることができます。ゆっくり力強く、高速でしかし触ると止まってしまうぐらい低いトルクでといった回転制御もブラシレスモーターなら可能です。全てがブラシレスモーターの恩恵であるとは思いませんが、最新のロボットの進化にブラシレスモーターが一役を買っているのは間違いないのではと私は思っています。

ホビー用ブラシレスモーター

 ホビー用のブラシレスモーターは主に中国のメーカーがかなりのバリエーションを出しており、数百円程度の低価格のものから高価なものまでさまざま見つけることができます。

写真)T-Motor 社のホビードローン用 ブラシレスモーター

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 エンコーダーという回転位置を得るためのセンサー、制御回路、そして減速機といったロボット用のアクチュエータに求められる機能を一つの筐体の中に内蔵しているものも出てきており、これらは別のコンピュータからの角度や回転速度などの指令を受けてその通り動かすことができます。まだこういったタイプのモーターでホビーレベルで購入可能な価格レンジのものは少ないのですが、今後増えてくるかもしれません。

写真)減速ギア、エンコーダー、コントローラーを含み CAN プロトロルでコントロールすることができる T-Motor AK シリーズのモーター AK80-6

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最後に

 私が運用しているオンラインストア ROBOT.ICHIBA でもブラシレスモーターの取り扱いを開始しました。まずは T-Motor 社と代理店契約を結び、現在商品の入荷を進めています。今後このカテゴリーも商品ラインナップをどんどん増やしていく予定です。

 ストアを通じて私が訴求していきたいのは、これから主流になっていくのではないかと思う世界的な「モノづくり」の流れです。これからの「モノづくり」ではソフトウェアとハードウェアがますます密接に絡み合っていくのは間違いなさそうです。そしてこういった「モノ」の試作について、コスト、時間、両方の観点から内製化がどんどん増えていくものと思っています。そしてこれら内製の過程において必要な工作機械から、試作品の構成パーツに至るまで、必ずしもすべて業務レベルのハイエンドなものが必要というわけでもないとも思っています。
 個人向けから始まったパーソナルコンピューターが今では様々な業務の中で活用されるにまで至ったのと近しい感じで、多くのシーンでホビー用途のものでも十分性能的にこと足りるものとして、業務用途でのホビー用のパーツや、工作機械などの利用も今後増えてくるのではと思っています。そしてそういう時代をリードするのは趣味でそういったことをまず初めてみた人たちではないかと思っています。

ということで

Let's make!

これからもモノづくりの世界で私ができること、模索していきます!

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