キャリアの話。好きなことで生きていくために、今僕達ができること。

最近、MAKERSというPODCASTを始めた。
創作活動を仕事にするアーティストやクリエイターをゲストを招いて、キャリアや仕事感を聞いていく番組だ。

これまで4人のゲストを招き話を聞いた。
毎回本当に面白い話を聞けて、進行している僕自身が学ばせてもらっている。中でも一番刺激的なのが、各アーティストのキャリア変遷の話だ。

「好きなことを仕事にする」というのはここ最近のトピックになっているが、色々な人の話を聞いても読んでも、再現性が低くてアクションに結びつけづらかった。

そんな中、誰でもできるアクションとして、一つの解が見つかった気がするので、ここに記してみる。

PODCASTについて

本題に入る前に、簡単に僕のPODCAST、MAKERSについて。

MAKERSは、僕自身がナビゲーターとなり、活躍するアーティスト・クリエイターをゲストに、ものづくりへの想いやプロセス、創作活動で生きていくための方法論を深く追求する番組。

ゲストとの対話を通し、一人ひとりのオリジナルなストーリーを明るみにすることで、「好きなことで生きていく」ために役立つインスピレーションの提供を目指している。

今、僕はレタリングアーティストとして、描くことを仕事にしている。

僕自身がレタリング・ペインティングを仕事にする中で、多くのアーティストに出会って話を聞いてきた。
その中で、いつも刺激を受けていたのは、一人ひとりのキャリアの変遷が実に多様で、100人いたら100通りの方法論があることだ。

描く仕事をする人達の中には、美術系のバックグラウンドがない人が結構多い。
みんな一様に、自分だけのオリジナルなキャリア変遷を持ち、自分の過去を最大活用することで、好きなことを仕事にする道を切り開いていた。

その話を聞くことが、「好きなことを仕事にしたい人」にとっての励みになるはずだと思い始めたのがこのPODCASTだ。

何でも仕事になり得るし、専門的な経験の有無は関係ない

レタリングアーティストやイラストレーター等、描くことを生業としている人達はここ5,6年の間に急激に増えた印象がある。

その増加の背景には間違いなくSNS、特に、instagramの影響が強くある。
ビジネス系だとTwitterだが、ビジュアルで見せるアーティスティックな仕事は、instagramが相性が良い。

昔は、正当なルートやコネクションがないと作品が見られる機会そのものが作れなかったが、世界がコネクトされている今、instagramにアップしておけば、世界中誰にでも作品を見てもらえるチャンスがある。

その観点では、作品そのものが魅力的であることに加え、見せ方の上手さや、適切な人へ届ける力といった、マーケティング面が重要になっている。

ただ、それ以上に大事なことがある。
それは、「今まで自分が取り組んできたこと」と、「好きなこと」をかけ合わせることだ。

それが実感できる事例を2つ紹介したい。

Kentaro Yoshidaとサーフィン

イラストレーター・ペインターとしてシドニーで活躍するKentaro Yoshida
シドニーで引く手あまたの人気アーティストであり、Instagramのフォロワーは7.3万人と、今では世界中にファンを持っている。

スクリーンショット 2020-07-23 17.41.32

Kentaro君を語る上で切っても切り離せないのがサーフィンだ。
生粋のサーファーであるKentaro君は、絵を描くことと同じくらい、サーフィンに没頭している。

そんな彼が初めて体外的な場でペインティングする機会を得たのも、サーフィンがきっかけだった。


Kentaro君は、元々シドニーのサーフショップでインターンをしていた際に、「イラスト書ける?」と頼まれて自分の制作活動を始めたそう。そんな活動を続ける中で、彼が住む街で行われたサーフィン関連のイベントでライブペインティングする機会をもらえたのだそうだ。

彼の作品には、サーフカルチャーが色濃く反映されているから、サーファー達を特に強く惹き付ける。

僕はサーフィンをしていないから、サーファー達が集まる中にいると、みんなずーっと波の話をしていて話題に入れない。
外から見ている印象では、サーフィンはスポーツでありながら、コミュニティだ。彼らは「サーファー」であるだけで一つの同じコミュニティに属している。

Kentaro君の場合は、毎日朝晩サーフィンに行く程没頭しているからこそ、シドニーのサーファー達のコミュニティの中にいることができるし、サーファー達から支持されるアートワークが作れるんだと思う。

「絵を描くこと」と「サーフィン」。

自分の好きなこと2つを掛け合わせて、Kentaro Yoshidaという唯一無二のキャラクターが生まれて、そんな彼が作るクリエイティブにファンがついている。

▼Kentaro君のエピソードはこちら


Maki Shimanoとウェディング

文字を書くカリグラファーとして活動するShimano Makiさんは、元々ウェディング業界でプランナーとして働いていた。

結婚、出産を期に会社を辞め、子育てのさなか、もう一度働くことを考えたときに、元々好きだった「文字を描くこと」を軸足に据えた。
Makiさんは書道をずっとやってきたのものの、書家は既にたくさんいる。そこで始めたのがモダンカリグラフィーだった。

当時、日本には「モダンカリグラフィー」というジャンルが無く、海外のカリグラファーの講座を受けながら独学で練習を重ねていった。

そんなMakiさんの初期の仕事も、やはり彼女のバックグラウンドが大きく関係している。

Makiさんがカリグラフィーを始めたことを聞きつけ、前職の同僚から、ウェディングレターなどウェディング関係の制作物で「手書きでメッセージを書く」仕事が舞い込んできたそうだ。

ウェディングをメインに活躍の場を広げていったMakiさんは、今ではワークショップで描き方を教えたり、描き方の書籍を出版したり、レタリングロゴを作るなど、仕事の幅も広がり、依頼の絶えない人気カリグラファーとして知られている。

数年前までモダンカリグラフィーという言葉自体馴染みがなかったのに、今ではカリグラファーという職業が成り立っているから、「何でも仕事に成り得る」事を体現している事例だと思う。

▼Makiさんのエピソードはこちら


没頭がConnecting the dotsの点を大きくする

Kentaro君のケースもMakiさんのケースも、そして他のアーティストのケースも、共通して言えることは、「自分のバックグラウンドと好きなことの掛け合わせ」が道を開くということだ。

バックグラウンドは、仕事でもいいし、趣味でもいい。
大事なことは、仕事でも趣味でも、本気で打ち込んでいることだと思う。

スティーブ・ジョブズの有名な言葉に、Connecting the dotsというフレーズがある。

Connecting the dotsとは、点と点を繋げること。
過去の経験が繋がった時に、予想もしない道を切り開いていくれる。

今自分が取り組んでいる物事が、将来思いもよらぬ形で繋がってくるから、目の前のことにがむしゃらに取り組もうという話だと僕は理解している。

点と点が繋がった時に、初めて線になる。
僕自身の経験を振り返っても、沢山のアーティスト達の話を聞いても、この話は真理だなと思う。

そして、点の一つ一つが大きければ、その点が繋がった時に、太い線になる

僕らの目に見えて活躍している人達というのは、その線が太い人達ということなんだろう。

だから、僕自身を含め、「将来好きなことで生きていきたい人」が今やるべきことは、目の前にあることに全力で取り組むことに他ならない。
仕事でも趣味でも、時間を忘れて没頭する経験が、「Dot:点」を大きくする。

そんな事を、アーティスト達の話を聞きながら考えていた。

仕事を選ぶ基準は、楽しいと思えるかどうか。

と言っても、今の時代に「時間を忘れるほど没頭する環境」を見つけるのは、結構難しい。

色々な社会問題もあり、会社等の環境を提示する側の組織にとって、「社員を強制的に没頭させる環境を作る」ことはできなくなった。

広告代理店の武勇伝で度々聞くような、「夜通し徹夜でギリギリまで企画を考えて、朝プレゼンに行く」というような働き方を強制すると、今では問題になってしまうのは皆が知るところだろう。

でも、先の話にもある通り、強制的でも自発的でも、将来線になる「点:Dot」を大きくするために、とにかく四六時中何かに没頭する時間を過ごすのは必要なことだ。

そうなると、今の時代は、「自分で没頭する、もっと言うと、没頭してしまう環境を作り出す」ことが大事になってくる。

メンタルが強い人や、体力に自身がある人は、「めちゃ高い営業目標の仕事や、とにかく作業量が多い仕事」を選ぶのもいいだろう。

それよりも何よりも、没頭するための一番シンプルな方法。
それは、楽しいと思える仕事をすることだと思う。

楽しければ没頭する。
仕事と仕事以外で日々を切り分けることが少なくなる。

ただ多くの人が悩むのが、楽しいというのは、「楽」ということではないこと。そして、楽しさと、待遇や条件の良さは比例しないことが多々ある。

好きなことをするためにも、体力的に厳しい局面、プレッシャーがかかる場面、つらい準備期間など、ネガティブな時間はもちろんある。
楽しいけど、給料が悪いということも往々にしてあるだろう。

でも、楽しかったら、なんだかんだやりきれてしまうし、振り返った時に、「〇〇なんだけど、楽しい」と納得できる。

もし、「楽しいけど、〇〇だ」とネガティブなことが結論に来てしまったら、何かを変えた方が良いサインだ。

心から楽しいと思える事を仕事にしよう。

「やりたいことをやりたい。でも経験も無いし、お金も大事だし。」
とかとか、将来のことを考えると、色々と思いを巡らせてしまう。

だけど、とにかく好きなことをやっていたら、それが仕事になる時代だ。
お金や待遇を考えて働くのではなく、楽しいと思えること。自ら没頭してしまうことに、身を投じていこう。

今給料が低くても、安定していなくても、楽しくて没頭していたら、点が大きくなる。
そうして積み重ねた点が将来繋がったら、太くてオリジナルな線になれる。世の中での希少性が高まれば、収入も上がっていくはず。

などと偉そうに書いてしまっているけど、僕自身もまだ点を大きくしている最中だ。

楽しめることを重要視して、自分達がやりたいことだけをやっているけど、実績も乏しいし、経済的に成功しているとは到底言えない。
でも今はまだ点を大きくする時だと思っている。

将来必ず、この大きく育てた点を結びつけて、太い線を作り出す。
そう信じて目の前のことに取り組む。

それが好きなことを仕事にしたい僕達が今できる、唯一の行動だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?