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深海魚の町、戸田にふらっと行ってみた #1

海を渇望した朝8時ごろ。

必要最低限未満の荷物をまとめて、そして慌てて電車にのり旅行に行くことに決めた。その時点で行き先は決めておらず、一泊二日で行きたい場所と行ける場所の、理想と現実のトレードオフをしながら東京駅に到着。

ホームに登る階段を行ったり来たりしながら、

「戸田に行こう」

と割と納得する形で思いついた。
「戸田」は「へだ」と読み、静岡県の下田半島にある小さな漁村だ。深海魚漁で有名なその町は、魚食中心の生活を送る私にとってとても興味がある場所である。

そして東京から三島へ向かう新幹線のチケットをとって、一番発車の近い列車に乗り込んだ。

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意外と都内からのアクセスは悪くない

戸田の事前知識

戸田といえば深海魚漁が行われる漁村とだけ知っていて、実際の街並みはまったく知らない。結局、行ってみないとわからない。

なんなら、オンラインショッピングで深海魚を直送してくれるサービスがある。まだ利用したことないけれど、「食べて楽しむセット」と「みて楽しむセット」が選べるのが特徴。気になるよね。そのうち、このサービスを使ってみようと思う。

かつての沼津と古着屋

そもそも必要最低限未満の荷物しか用意していない。
歯ブラシも、コンタクトレンズの代わりの眼鏡も忘れた。
そもそも着替えの服も用意していなかった。

9月も終わりに近づく残暑真っ只中の季節、吹く風は心地よいけど、照りつける太陽光は汗腺を刺激するのに十分。

じんわり汗が滲んだTシャツに再考させられて、「着替えの服を買いに行こう」と思い立つ。

古着派の私は、やっぱり高円寺や下北沢にいる感覚で古着屋を探してしまう。でもここは三島駅。周辺には古着屋なんてものはなく、沼津まで探す範囲を広げると数店舗あるようだ。

戸田に行くには三島駅から伊豆箱根鉄道に乗り換えて、その終点の修善寺駅まで行く必要がある。そこからバスで向かうことができる。

その前に、古着屋目当てに沼津へ向かった。
ちょうど沼津駅から歩いて5分の距離に見つけることができた。
古着屋「RAZZMATAZZ」、沼津という土地で古着屋のイメージは薄かったのだけど、古着屋街で有名な高円寺や下北沢にあってもおかしくないイメージ通りの古着屋だった。

ええ感じのにいちゃんが切り盛りしている。

縦縞のノーカラーシャツ(襟なしシャツ)を一目惚れし購入、翌日の衣服の心配なし。

会計中に世間話程度で話しかけてみる。

「沼津って古着屋さん多いんですか?」

すると

「昔は近辺に20軒くらいあったよ」

と。古着にはブームの波がこれまでにいくつかあって、1つ前のブームの時に沼津でも古着屋が繁盛していたらしい。わざわざ東京から買いに来る人もいたとか。結局、そのブームが萎んだタイミングで減ってしまったようだ。今や沼津駅近辺には約3店舗を残すのみ。

なお現在は古着ブームの真っ只中であると教えてくれた。

「なるほどなぁ」、と思ってインターネットで軽く調べてみるのだけれど、情報が出てこず真偽のほどはどうなんだろう。インターネットで情報がでないだけローカル情報なのだろうか。気になる。

2000年台初期に沼津に住んでいた方のブログには「かつては、仲見世商店街には、いくつものパチンコ屋、お菓子屋、カフェ、古着屋などが並び...」と述べられている。

知っている人は教えて欲しいし、よく行く東京の古着屋の人に聞いてみたいと思う。

街の様相はよっぽどヌルッと移り変わっていくもので、記録として残るより頭の片隅で曖昧に記憶されるものなのかもしれない。

そして口伝えで知り、痕跡はいつの日か消えてしまう。

修善寺駅から戸田に向かったはずが

無事、服を買い終えて三島駅に戻り、伊豆箱根鉄道に乗って、戸田の最寄駅である修善寺駅にたどり着いた。あとはここからバスに45分ほど揺られれば目的地にたどり着く。

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バスチケットは戸田行きを買ったのに...

宿は事前に電車の中で予約した。
目の前が漁港ですぐに海が見えるロケーションで楽しみだ。

修善寺駅は綺麗な駅舎で、その周辺はお土産屋から飲食店まで充実している。乗車予定のバスを確認して、余裕をもってバスに乗り込んだ。

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行き先表示をきっちり確認したはずなのに何故...

ほどなくしてバスは街を抜けて山間部をただただひた走る。
バスは高度を上げてうねる道を、待ち人がいないをバス停を無視して軽快に飛ばしていく。そんな軽快さに揺られて来るは気持ち良い眠気。一眠り。

戸田は終点だから、着いたらわかるだろう。

何分寝ただろうか。目が覚める。

ふとバスの乗車料金がかかれた電光パネルを確認すると、とっくに戸田につくまでにかっかるバス料金を超えているではないか。

「あっ、これはやらかしたな」

Google mapを確認すると完全に行き先が違う。
案の定、見知らぬ土地であろうことかバスに乗り間違えていたのだった。

とりあえず落ち着いて、山間部を抜けたところにある街で下車することにした。

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土肥温泉郷の海岸線も綺麗

そこは戸田から南に7km離れた土肥温泉郷だった。

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驚愕の乗り間違い

地域の乗合タクシーに救われた

間違ってたどり着いた場所から目的地である戸田までバスの路線は直接つながっていない。すなわち、バスで向かうには来た道をもどってバスに乗り直す必要がある。

余計にお金がかかるのは仕方がないとして、時間もかかる。
少なく見積もって2時間は余計にかかりそうだ。

それだったらタクシーで行けないだろうか?
温泉郷と言いつつも都会と違って、簡単にタクシーを拾えるわけではなさそうだ。

どの方法をとっても、ある程度の痛みは覚悟しないと行けなさそうだ。
痛みというのは金銭的にも、時間を無為に消費してしまったという自責の念もだ。とはいってもこの際、そんなこと考えてもどうでも良い。まずはたどり着くことが大切だ。

とりあえず、人に聞いてみよう。
バス停の近くにある高級そうな旅館の前にスタッフが立っていた。

「あの、ここから戸田までいく方法って何かないですかね?」

「直接、バスの路線はつながっていないし、タクシーしかないと思いますが...調べてきます」

別にその旅館に泊まるわけではないのに、申し訳ないくらいの神対応。
スマートフォンでどこかに電話しながら5分くらい経って、

「乗合タクシーがあります!」

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乗合タクシーの路線

乗合タクシーなんてものがあるのか...流石にローカルな乗合タクシーまでGoogle mapの経路検索はカバーしていなかった。初めて訪れる街で、これは流石にわからないし知らない。

そんなこんなで乗合タクシーの発車時刻まで待ったけれど、土肥温泉郷から戸田まで約25分でたどり着くことができた。

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こんな感じの乗合タクシー、1人の高校生と乗り合わせた

夕暮れ時にたどり着いた

回り道したから見れた風景もある。

乗合タクシーの路線は駿河湾を望む海岸線沿いだ。
時刻は太陽が沈む夕暮れ時で、オレンジ色の空と海を、山間の道から垣間みることができた。

そうして夕暮れの景色を楽しむうちに戸田の漁港が見えてくる。

予想よりも小さな漁村で、街の周囲は山々に囲まれていた。
「戸田は陸の孤島」とどこかで聞いていたが、確かにその通り。

そして宿に無事たどり着くことができた。

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穏やかな内湾の小さな町

つづく

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