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言葉のちから 言葉の語源

『ヤナの森の生活』

最近はハワイ関連の本を読んでばかり。というのも無事出国できていたら現在はハワイにおります(旅先で書けない可能性もあるので今回は予約投稿です)。

なかなかハワイに関する日本語の本が少ない中で、この『ヤナの森の生活』もなかなか衝撃的な本です。たしかにハワイは常夏の島のイメージがありますが、屋根も壁もない生活をしている人がいるなんて。屋根がないと言っても雨避けにタープがあり、壁は植物たちがその役目を担ってくれています。でも、よく考えてみると、別にそういう生活だってできるのです。僕たちが現代の家やビルという建物を作り始めたのだってたかが数十年の話ではないでしょうか。もちろん昔から住処はありましたが、今みたいな何だか住処というよりは箱みたいなものに住むようになってからはまだそんなに歴史は長くはないのです。

それにパンデミックが起きてからは、密を避け、アウトドアをする人たちが増えた。今のテントやアウトドアギアはすごく性能がいい。あとは、水や電気のライフラインさえあれば、暮らしていけそうなくらいアウトドアグッズも充実しています。なぜ人は家があるのにわざわざ外で寝泊まりしたりするのでしょうか。もうそれは外での生活が心地よいからですよね。みんな知っているのです。たとえ、薄っぺらいテントだったとしても、家では味わえない心地よさがある。都会では味わえない空気がある。自然がある。休日にわざわざそんなことをしている現代人は、実はそんなにも自分が今住んでいる家が好きではないのかもしれません。都会での生活が好きなのではないのかもしれません。そりゃああんなコンクリートジャングルよりも自然の森の方がいいですし、小さな箱みたいな家よりも、例え小さくても、テントで、自然の中で生活することの方が、のびのびと自由を満喫することができます。生活とは一体何なのでしょうか。僕たちは今の生活を愛しているのでしょうか。

生活するためには、お金を稼がなくてはならない。お金を稼ぐためには、仕事をしなければならない。仕事をするためには都会に住まなければならない。都会に住むためには高い家賃を払わなければならない。高い家賃を払うためには…。僕たちは数多くのねばならないに縛られてしまっていますが、これは本当でしょうか? どうしてそうなってしまっているかを考えたことはあるでしょうか。

考えたことのない人は、ぜひハワイの森に住むヤナの生活をこの本で覗いてみるといいと思います。生活するために必要なものが何なのか、そもそも生活をするということは生きるということです。そして、生きるために必要なものはそんなに多くない。裸で生まれてきて、死ぬ時もまた何も持たずに去っていく僕たちは本来は何も所有する必要はないのです。ちゃんと全部用意されているのです。あるのです。だから、僕たちはこれまでずっと生きてこれたのです。そのことを思い出させてくれます。

今さらこういう生活をしましょうとか、こういう生活に戻りましょうなどと言いたいわけではありません。そうしたい人はそうすればいい。たくさんのゴミを生み出しながら、それを捨て置き森に帰りましょうとは言えません。今いる場所から綺麗にしていく、自然と共生していくことが大切ではないかと思うからです。今の生活を見直していくこと。生きるというのはただ生きるのではなく、善く生きることなのです。ちゃんと自分の真善美に従って生きれば、森であろうと、都会であろうと善く生きることができるし、そこでやるべきことは必ず見つかります。

ヤナの森の生活にも憧れます。やっぱり森や自然に帰ることができたらと思ってしまいます。でも、いまここからできることをやり始めれば、ヤナが自分の美しい住処をつくったように、僕たちも今いる場所に美しい住処をつくることができるのではないでしょうか。それは何十年という時間がかかるかもしれません。でも、今から始めることができるのです。そして、それを目指して生活すること自体が善く生きるということであり、美しい生活と呼べるものなのではないでしょうか。

生活することばかりに忙しくなってしまった時には、ヤナの本を読んで忘れていたものを思い出したいものです。

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