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ホリエモン新党の3連ポスターの意義

6月18日(木)に東京都知事選挙の立候補者が告示され、街中にも22人の立候補者のポスターが張り出され始めた。22人も候補者は過去最多ということで今後どのようにして選挙戦が展開されていくのか楽しみだ。

さて、私も一人の有権者として街に貼られたポスターを見て驚いたことがあったので今日は考察してみたいと思う。
それがホリエモン新党のポスターだ。

細かい事実関係は割愛するが、NHKを国民から守る党(略称:N国党)の党首立花氏はホリエモンこと堀江貴文氏の擁立を画策しホリエモン新党を結成したが結局堀江氏は不出馬。代わりに彼の秘書であるさいとう健一郎氏(届出表記)が立候補した。またN国党からは立花氏本人と服部氏が立候補した。ちなみに堀江氏は特定の政党や候補者との関係を否定している。
都知事選を巡っては立花氏が小池百合子氏と同姓同名の候補を擁立するという表明を行い話題になっていたが、そちらは結局実現しなかったようだ。

さて、選挙戦が始まってポスターをみてみると、
上記の画像の通りで真ん中の立花氏は自分の顔写真を入れているものの、服部氏とさいとう氏のポスターは堀江氏の肖像とホリエモン新党の公約がメインで、当の本人の姿がどこにもない。
候補者パネルの真ん中の行のど真ん中をホリエモン新党のポスターが占領しているという構図になった。しかも左右のポスターで真ん中の立花氏を引き立てている格好だ。

今までもいろんな選挙ポスターはあったが、こんな構図は見たことがない。
左右の服部氏、さいとう氏はあくまで立花氏の引き立て役であり、立花氏が本命だという意図が透けて見える。
選挙ポスターに本人が登場せず、本命候補を引き立たせる。こんな方法が許されるのか。六法を取り出し公職選挙法を見てみたがポスターの内容に関する規定はどこにもない。つまり合法なのだ。

ではこのホリエモン新党のポスター戦略はどのように捉えることができるか。私は3つの視点を挙げてみた。

①パフォーマンス説

 まず一番最初に思いつくのが立花氏、そして堀江氏によるパフォーマンスであるという見方だ。左右の候補者はブラフで真ん中の本命を引き立たせるなんて戦略を既存の政党は取らないし、世間から批判の目に晒されかねない戦略は取れないだろう。しかし果断かつ大胆な戦略を打ち出す新しい政党ならば、批判と表裏一体の戦略も他党に無い挑戦的な試みとして有権者の心を掴む戦略として使えるのだ。そして知名度で劣る新党を話題にすることで世間に知らしめることができる。私のようにブログやネットの話題にしてしまうことが彼らの戦略の思う壺なのである。 まず一番最初に思いつくのが立花氏、そして堀江氏によるパフォーマンスであるという見方だ。左右の候補者はブラフで真ん中の本命を引き立たせるなんて戦略を既存の政党は取らないし、世間から批判の目に晒されかねない戦略は取れないだろう。しかし果断かつ大胆な戦略を打ち出す新しい政党ならば、批判と表裏一体の戦略も他党に無い挑戦的な試みとして有権者の心を掴む戦略として使えるのだ。そして知名度で劣る新党を話題にすることで世間に知らしめることができる。私のようにブログやネットの話題にしてしまうことが彼らの戦略の思う壺なのである。
 また、立花氏は2019年7月の参議院選挙で当選し、3ヶ月後に辞職、同じ参議院の埼玉での補欠選挙に出馬して落選している。またその後も海老名市長選、桜井市長選、小金井市長選などに出馬しいずれも落選している。これは全国での知名度を上げるという目的があるのかもしれない。そして都知事選も同じような形で利用しようとしているのかもしれない。
 ちなみに堀江氏は6月末に都政に対する提案をまとめた新著を発売するらしい。東京都中に彼の肖像が掲載されることの広告効果は計り知れないだろう。その経費は泡沫候補2人分の供託金とポスターの印刷費、そして貼るための人件費など。合計しても広告代理店に大規模な広告を打ってもらうより全然お得だろう。
 今回のポスター戦略は安価に党や候補者の知名度を上げることのできるとても有用なパフォーマンス戦略であると見ることができる。

②社会実験説

 パフォーマンス説に近いが、立花氏や堀江氏が今回のポスター戦略が選挙における知名度の向上や話題性の付与のための方策としてどの程度有用なのかを都知事選を利用して実験しているという考え方もできる。堀江氏は立花氏との関係を否定しているが、もし関係があるとすれば今後の別の選挙に出馬する際に使う戦略の一つとして見定めているのかもしれない。

③問題提起説

 今回のポスター戦略は明らかに公職選挙法の抜け穴を狙ったものだ。また立花氏が目指していた小池百合子氏との同姓同名候補の擁立についても、現行の制度では対処しきれなかった可能性が高い問題だ。
 このような問題については、もちろん議会で議案として提出して審議を経て改正へと至るのが常道ではあるが、今回のように世間の話題になったとなれば選挙後に公職選挙法の見直しが図られる可能性は非常に高い。身動きのしやすい新党を使って現行法律の弱点を突いて世間に名を轟かす。戦略としてはなかなか見事である。

私は今回のポスター戦略について上記のような捉え方をした。これらは単体として存在するものというよりは、どの説も要素として入っているがどの要素に一番の重点が置かれているかということを考えた方が良いだろう。

今回のポスター戦略が良い戦略なのか、私にはわからない。
私自身の感想としては「妙なことをしていてますます胡散臭い」だ。
だが、面白いことをしている、革新的だ、世間に問題意識を知らしめたなどと肯定的に捉える人もいるだろう。実際、現行制度の問題点や抜け穴を指摘できたという意味では意義があることだろう。

実はN国党は過去に更に大胆な戦略を掲げたことがある。2019年7月の参議院選挙では比例代表の東京ブロックで7人の候補者を立て、それぞれの候補者のポスターに「N」「H」「Kを」「ぶ」「っ」「壊」「す!」の文字を配置して横並びで掲示するというものだ。こちらのアイデアは実現されなかった。というのも公職選挙法はポスターの内容については規定していないが、ポスターの大きさを規定している。7枚で一つのメッセージを伝えているととられると全体で1枚のポスターと判断され、大きさを違反してしまうのだ。ちなみに1960年代後半にはこのようなアイデアが流行ったようで、最終的には当選した候補の関係者が起訴されている。
それもあってか2019年7月の参議院選挙ではN国党のポスターは繋がって一つというものではなく、肖像がなくただN国党の公約が書かれているという選挙ポスターが選挙パネルにいくつも貼ってあった。バラバラに貼ってあるからまだそこまで不信感は持たなかったが、今回は3連横並びでかつ候補者とは別人の肖像がメインになっている。

ちなみに2枚ではなく、3枚というところにもちょっとした含意があるように思えた。もし立花氏のポスターとホリエモン新党ポスター(堀江氏の肖像と党の公約のみポスター)の2枚だけだと、まるで堀江氏が立候補するのかと勘違いしてしまう。これは誤解を招くということで堀江氏が2人いれば、これは変だとなり考える余地が生まれて誤解を減らせるという意図だ。そう考えると立花氏は本当にやり手だ。

ただ、真に重要なのは当選した後にその候補が何をするかということだ。
得票数を上げるテクニックだけに熱心で政策を実行する力がないともなれば全く意味がない。今回の都知事選、有権者におかれては見てわかるインパクトだけで決めるのではなく、各候補者の公約や過去の行いや振る舞いから将来性を見据えて判断してもらえればと思う。


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