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Estoniaに住んでみたい、と思ったら

こんにちは、Takuminです。

最近電子政府あるいはIT先進国として脚光を浴びつつあるエストニアですが、e-Residencyという「仮想電子国民」には誰でもすぐになれるものの、実際に一定期間(1年以上)、自分の事業を起こしつつ住んでみたい、となると話は別です。

とはいうものの、アメリカで働くためのビザとるよりは条件は厳しくないのですが。

なんとか成功したので、そのプロセスについて書いてみました。

なお、申請するにあたっては、事前にe-Residencyを取っておいたほうがスムーズに進む気がします。e-Residencyがあると起業もとても簡単です。その辺は一切合切面倒見てくれるサービスが始まったので、ぜひチェックしてみてください。

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[2019年12月追記] - エストニアでも日本国籍の人対象にワーキングホリデー制度が始まります。まだ時期はアナウンスされていませんが、2020年3月ごろといううわさもあります。18歳から30歳までの方なら無条件に!1年滞在可能ですので、まずワーホリを使って様子を見る、のが一番現実的かもしれません。

申請にあたって

エストニアに限らず、ビザの要件やその内容などは頻繁に変わったりします。できれば、在日エストニア大使館か、エストニアの Police and Border Guard Board のWebサイトで確認してください。この記事は基本的に2019年8月~9月時点での条件を前提にしています。

エストニアは公用語はエストニア語ですが、基本的に申請書類等すべて英語で構いません。また大使館や Police and Border Guard Board ともすべて英語の電子メールでやり取りできます。

なお、Police and Border Guard Board は移住したい人々向けへのコンサルティングサービスを提供しています。予約してオフィスで対面でも受けられますし、Skype や電子メールでの質問と回答のやり取りも可能です。とても親切ですので、疑問点があればコンタクトしてみることをお勧めします。

Migration Consultant

ビザ(D-type visa)と滞在許可の違い

ビザ(D-type)は

・ 最長1年、180日の延長可能
・いくつか種類がある
・ビザなのでパスポートにスタンプを押される。ほかのシュンゲンエリア諸国には180日中90日滞在できる(シュンゲン協定と同じだが、エストニア滞在分はカウントされない)
・在外大使館および上記 Police and Border Guard Board オフィスで申請・取得する(予約が必要)

滞在許可 ( Temporary Residence Permit )は

・最長5年、再延長可能(つまり申請が承認される限り住み続けられる)
・いくつもカテゴリがある(学生、エストニア国民の配偶者、被雇用者)
・承認後は滞在許可カードがもらえる
・タリン市の場合は市内交通がすべて無料になる
・シュンゲンエリア滞在条件はビザと同じ
・個人事業主(FIE)の場合 16,000€ 、法人の場合 65,000€ の投資が必要(法人を設立する場合は資本金を銀行口座に払い込んでその額を登記する)
・直近6か月の収入を証明する銀行口座履歴が必要
・申請および受け取りのどちらも対面で行う必要があり、最寄りの Police and Border Guard Board オフィス(主要都市にあります)に予約して申請する。受け取りは「ドキュメントできたよ」のメールが来てから申請時に指定したオフィスで受け取る(予約は必要ない)

両者で共通して必要とされるのは

自分で起業することを前提にすると、

・エストニアのスタートアップの重鎮(スタートアップ・マフィアと呼ばれています)たちで構成される Startup Committee での事業承認
・法人登録の有無は問われないが、すでに登録しておくとプロファイルなどの説明が少し簡単になる(かも)。筆者は個人事業登録(FIE)していた
・滞在先の確定とアパートの大家さんとの契約書(大家さんの電子署名入りのもの)
・決まった収入または滞在期間に十分なだけの預貯金とその証明
・滞在期間をカバーする健康保険(旅行傷害保険など)とその証明

以上から考慮すると、

・すでに確立した事業プランとそれによる収入があり、それをエストニアにも展開したい → エストニアに渡航し、(ビザフリーの)3か月間滞在する間に滞在許可申請・取得
・これから新しいアイデアをもとにエストニアで起業し、うまくいけばそのまま滞在したい → D-type ビザを日本で取得して渡航し、ビジネスとして確立し収益を得てから、10か月後に滞在許可申請・取得

のいずれかになると思います。いずれにしても「渡航前に」事業プランを Startup Committee に提出し、承認を得ておくのがいいと思います。承認したよというメールには次にどういうステップに進められるか、の詳細な説明が記述されています(親切!)。

滞在許可取得の実際 - 筆者の場合

・2019年8月初旬~中旬 - 申請方法・書類などを調べる。同時にPolice and Border Guard Board (以下PPA)コンサルサービス(上述)にいくつか質問する
・答えが返ってくるのにあわせて書類作成
・8/21 - 申請は予約が必要、と聞いて、予約カレンダーをチェックしていたら、急に8/23に空きが出たので予約
・8/23 - 1時間前についてしまい、時間を持て余したが、フォトブースで写真を撮り(データが直でサーバーに保存される・無料)、整理券もらってだいぶ待ってから書類提出。受理されたという書類をもらう
・8/29 - PPAから「書類が足んないよ」という連絡。実は時間切れで事業計画だけパワポにして提出していたが、やはりコンサルの言ってたとおり、個人事業の際もスタートアップコミッティーにレビューしてもらわなければ難しいと。9/10が締め切り
・9/3 - 急遽 Startup IncluderというWebサービスに事業プロフィールを登録、提出
・9/6 - Startup Includer 経由でスタートアップコミッティーからリジェクトの連絡。アイデアレベルでは不十分ですと
・Adobe XDを使ってプロトタイピングする。基本的にはモックでしかないけれどデータの流れがわかるように。また一方向ではなく分岐も実装してみる
・9/10 - Startup Includer で再提出、同時にPPAにも書類再提出
・9/20 - Startup Includer 経由でスタートアップコミッティーから「スタートアップとして承認します」の連絡
・9/21朝 - PPAから「9/10にもらった Startup Includer の申請ID見たらリジェクトされてるけど、これだと厳しいんだけど」の連絡。確認したら、間違ってリジェクトされたほうの申請IDを送っていたので、承認が来たほうのIDを再提出
・9/21夜7pm - PPAから、滞在許可します!の連絡
・10/4 - PPAから滞在許可証できたので取りに来て、の連絡

やってみて

PPA には申請時とカード受け取り時のみ訪問し、あとは英語のメールだけでやり取りして、なんとかなりました。公式書類はエストニア語でくれますが、こちらから問い合わせも申請も質問も全部英語で対応してくれます。助かりました。またコンサルも申請窓口からの返事もとても親切・丁寧で、一度も嫌な思いをしなかった。

本来であれば、事前に Startup Includer 経由でスタートアップコミッティーの承認を得てからビザや滞在許可証の申請を行うのが正しい手順であろうと思います。ただ、筆者の場合、最初は当面はITコンサル&開発サービスだけで考えていたので要らないだろうと勝手に解釈していました。が、これは「おそらく」だけれど、自営・個人事業ではそれがエストニアに本当に役に立つかどうかの証明がないので、それを何らかの方法で証明できないと厳しいのかもしれない(音楽家・芸術家や寿司職人とかだとまた別かもですが)。働きたいからそこにいさせて、ではダメですよと。スタートアップコミッティーは基本ITサービスやコンサル事業だけでは承認が下りないと聞いていたので、個人的に数年かけて実現しようと考えていたある事業を急遽ドキュメント化し、さらにモックを作ってそれをある程度「見える化」しました。プランを、それを知らない人にも理解できるように具体化しておくことが必要だったのではないかと思います。

参考リンク

公式Webサイト以外に、以下の記事などを参考にさせていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

エストニアの滞在ビザと居住許可(8種類)の特徴や取得方法を解説

Tere!エストニア - エストニアに9ヶ月だけ移住した記録 

Startup Estonia (英語) 

謝辞

- もちろんすべての申請や問い合わせで親切に相談に乗ってくれた・回答をくれた Estonian Police Border Guard Board (PPA) のみなさま
- 稚拙な事業プランをレビューしていただいたエストニア・スタートアップマフィアの方々(たぶんすでにFacebookでつながっている人が多いかもw バレバレやん)
- 上記 SetGo を立ち上げ活躍中の、若きエース Kota Alex Saito
- ヒントをくれた VIVITA Estonia の CEO  / 勇気をくれた VIVITA Japan 元同僚とRobotexを通じて知り合った齋藤 侑里子さん
- いつも自分勝手なダンナにあきれ気味な奥様と家族

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