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【電波争奪戦】日本の周波数割り当て問題点とは?

「電波割り当て」のニュースってよく聞くけれど…

総務省による5Gへの電波割り当て楽天のプラチナバンド獲得など、電波」に関するニュースをよく見聞きする。
しかし、「電波の割り当てが生活にどう影響するか全然分からない」、そう思った人はきっと多いはず。私も調べてみる前はよく分からなかった。

実は電波の割り当てというのは、私たちが想像するよりはるかに生活と密接に関連する重要なトピックである。そして、日本における電波の割り当ての仕組みは、特に政治的な問題が非常に多い。

今回はそれを多くの人に理解してもらえるよう、私なりに電波の割り当てに関して噛み砕いて解説する。これが理解できると、電波が生活にとってどれだけ大事なのか。日本の電波の割り当てに関する仕組みがいかに歪んでいるか。それらがまるっと分かるようになるので、ぜひ最後まで聞いてほしい。


電波の割り当てがなぜ重要なのか?

まずは「電波が生活においてなぜそんなに重要なのか?」という説明から入ろう。ここを理解せずに電波の問題を挙げても何も分からない。

結論から言うと、電波が重要なのは、道路が人や移動や物を運ぶ上で重要なのと同じように、国民に情報を伝達するための基盤となる技術だからである。

今回のテーマについて私なりに調べていく中で、電波の重要性をどう伝えたら良いかいろいろ考えた結果、道路に例えると分かりやすいんじゃないかと思ったので少し話させてもらいたい。

私のイメージだと、電波は道路のようなものだと思っている。
道路は国民が日常的に使うもので税金によって保全される共有財産だろう。ゆえ民間企業の一部が合理的な理由なく道路を占有してはならない。たまに私道という、土地の所有者とその土地の利用を認められた人だけが使える道路もあるが、これはその土地の中を移動する上で必要な道路に限り制限しているだけで、主には住宅の敷地内などプライベートな空間に認められることがほとんど。基本的には道路というのは男女や資産・職種に関係なく誰もが使えるものだ。

電波もこれと同じで、国民全員に共有されるべき財産なので、その利用については、よほど合理的な理由がない限り一部の民間企業が帯域を占有してはならない。だから電波を各事業者へ適切に割り当てることは、国民が情報を得る上で不可欠なことだから重要だし、それに関連するニュースも重要だということだ。

電波の仕組みについて(ざっくり)

さて、電波の割り当ての重要さが分かったところで、次は電波の仕組みについてざっくりと説明しよう。ここも先ほどと同じで事前に説明しておかないと、以降に話す割り当ての問題点が全く頭に入らない。なので、理解を深めるためにも少々お付き合いいただきたい。

そもそも、電波には周波数というものが存在する。30Hzとか100MHzと言ったHz(ヘルツ)と言う単位で表される。これは電波の持つ性質のことで、周波数の違いによって電波の特長が変化する。

VHFやUHFという言葉を聞いたことはあるだろうか?これがまさに電波の周波数のことで帯域のことを指している。要するにエリアのことだ。
VHFは日本語で超短波UHFは極超短波と訳されるのだが、電波はその周波数が大きくなればなるほど、情報の密度が上がり、電波の到達範囲が狭くなるという性質がある。
例えばVHF帯にあたる30MHz〜300MHzの帯域は、それ以上の周波数帯に比べて伝達できる情報が少ない分、遠くの距離まで届く。逆にUHF帯の300MHz〜3GHz帯域は、情報を多く載せられる分、届く距離が短い。これには波長が関係しているのだが、今回はそのあたりの詳しい説明は省く。
とにかく、周波数というのは値が上がれば上がるほど、情報の密度が上がるが到達範囲は狭くなる。これを覚えておいてほしい。

そしてもう一つ、これはルール面での話だが、電波にはチャンネルという区分がある。これは一言で言うと「電波の干渉を避けたり、コンテンツを保護しましょう」というルールだ。
電波の割り当てに関する話題では、どの事業者にどの周波数を割り当てるかを総務省が決めているのだが、割り当てる際、すでに使われている周波数を他の事業者に割り当ててしまうと、元々使っていた事業者が発信する情報と新しく入ってきた事業者が発信する情報がバッティングしてしまう現象が起きる。
そうなってしまうと、電波が干渉して通信不良を起こしたり、ある地域限定で発信してたコンテンツが他の事業者が展開するサービスによって閲覧できてしまうという事態が起こったりして企業の利益を阻害することに繋がってしまう。なので、電波を割り当てる役所側が他の事業者の使っている周波数と被らないよう、帯域ごとに区画を設け、その区画ごとの周波数を事業者を割り当てるようにしているのだ。

日本の割り当ての問題点

ではここから、日本の電波割り当ての問題点について解説していこう。

いままでの説明を整理すると以下のようになる。
・電波は道路と同じく国民の共有財産であり、情報を伝達させるための大事な技術である
・電波には周波数があり、その値が大きくなるほど情報の密度が増えて到達範囲が狭くなる
・電波の周波数はそれを使う事業者同士が干渉を起こしたりコンテンツを保護するために、チャンネルという名で区分されている

それでは、日本が抱える電波割り当ての問題点とは一体何なのか?
これは大きく3つある。
・技術的知識の不足
・ホワイトスペース
・政治の人事権

だ。

問題点その1:技術的知識の不足

まず「技術的知識の不足」について。順を追って説明しよう。

日本の放送や通信に使われている周波数帯は、先ほども登場したVHFやUHFの帯域が使われている。特に通信に関しては、UHFの中でも700〜900MHz(いわゆるプラチナバンド)を使うことが安定した通信を行う上で重要だ。

ところが現在、UHFは大部分をテレビ局が占めており、元々テレビ局が使っていたVHFには大きな空きスペースがある。そして残ったUHFのわずかなチャンネルを今、docomo、au、Softbank、楽天などの携帯事業者に割り当てようとしているのだ。ここにまず問題がある。

1960年代以前、テレビ放送はVHFを使ったアナログ放送を行っていた。ところが'60年以降、UHFが新たに登場し世界の放送事業者がこの帯域移動しようとしていた流れで日本の放送事業者も移行が始まった。
元々VHFを放送以外の別の用途に使おうとしていた目的があったようだが、実は放送用の周波数帯にVを使うことに技術的な問題は特になく、Uへ移行させる行為自体あまり意味がない。

先ほども言った通り、電波の周波数というのは値が大きくなればなるほど情報の密度は上がり、到達範囲は狭くなる。なのでVHFはUHFに比べて情報の密度は小さく、到達範囲が広い。これは放送を行う上で特に障害にならないので、VHFはそもそもの性質上、放送に向いているのだ。

ところが、世界に放送事業者がなぜか技術的に問題のないVHFからUHFにチャンネルを移す流れがあり、日本もなぜかそれに倣ってテレビ局がUHFのチャンネルに移っていった。そして2003年、日本の放送はアナログ放送から地上デジタルに移行する流れが始まり、2011年にテレビ局の地デジ移行が完了する。

では空いたVHFは何に使っているかと言ったら、実はその用途が未だに定まっていない。
「あれ?VHFを何かに使いたいから移行したんじゃないの?」と思うだろう。私も同じく思った。しかし実際はVHFの帯域は空いたまま。

つまり、「 技術的には必要ないが、世界がUHFに移ってるようだから日本のテレビ局も周波数帯をUHFに移すことになった」ということだ。

これが問題点の一つ目。本来必要のないテレビ局のUHFへの移行が、技術的知識の不足によって実現されてしまった。結果として携帯電話事業者は、狭いUHFの帯域をどう割り当てるかで、総務省と事業者同士で揉めているのだ。

(次回、「【開かれた波】 日本の電波割り当て改革への道」へ続く。)


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